[やきもの仕事] カテゴリの記事

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• 今日も木を切る

  　今日も山で木を切る。本当は木が水を上げていない冬に切りたいところだが、冬に切るようでは須恵器の窯に間に合わないので仕方なく今切っているのだ。　頃合いの赤松を一本切リ倒して薪にするために50センチづつに切りながら軽トラックに積むとだいたい軽くいっぱいになる。これを運んで下ろして積み直して、という作業をひとりで順調にやって一日3回程か。これはそれほど重労働でも無いのだが沢山だと薪割りが大変だ。まあそれでも大変な程の大量の薪が準備出来るというのはありがたい事だ。　ちっとも焼かないで薪や土ばかり集めていると冷やかされているがそれも事実なので反論出来ない。想いを込めていっぱいに引き絞った弓で強い矢を射るのだ。

  2005.05.21

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  京都市考古資料館へ行く

  　須恵器の窯の勉強に京都市考古資料館ヘ行ってきました。実家からも近いのに今まで気にはなりながらなかなか伺う機会のなかった場所です。それで初めて行った感想は、むちゃくちゃ面白い！！！　初めに入ると左側に文献などのコーナーがあって考古関係の図録が並んでおり、Panasonicの大きなテレビモニターの横には今更こんなもの何に使うのかと思うようなすごく昔のMacが一台。これはMacマニアが見たら大喜びしそうな「Macintosh Plus」で小さくて可愛い。ウーンさすがは考古資料館、って気分になります。　さらには来館者がマウスをクリックしながらいろいろ情報を見ることが出来るコーナーにはこれも古いiMacが3台並んでいました。Macがいろいろカラー展開していたG3時代のiMacで、その中でもいちばんぶっ飛んでいたフラワーパワーとブルーダルメシアンにこんなところで出会えるとは、とちょっと感慨深いです。嬉しそうにいじってみると中のソフトはすごくシンプル、というか素朴なもので最先端とはゆきませんね。でも楽しい。　カウンターの中で職員さんが作業されていたのもpowerbookやiMacG4でここは全面的にMacのようです。お昼になれば出前が来て職員さんがうどんかなにかをズルズルって音も聞こえてきたりして、古い小さな施設でちょうど田舎の役場のような感じといえば分かって頂けるでしょうか。洗練されてはいないがなんとも親切です。　　思いがけない珍しいMacとの出合いについ嬉しくなって余談が過ぎましたが、展示は今「桃山文化の陶磁器」を特集していて志野や織部、唐津、信楽、備前などのやきものが京都の街から発掘された茶道具の類を中心に沢山展示されていました。　この風変わりな光景はあの宝物のように扱われている桃山茶陶に親しむ人にはいささか奇異に思われるのではないでしょうか。志野でも信楽でもこの調子で、普通の美術館ならば一点一点間隔をあけて照明を当ててびしっと展示しても十分に間の持つ名品がなんとも盛りだくさんに並べられています。大変うつくしいものもありますが全体としてはこのあたりのものは自分の好みではないとはいえ、それでもこれだけのものが並んでいるのは壮観です。　同じやきものに向き合うとしても鑑賞界の求美の立場と学問としての考古の立場とはまるで別のもので、考古学の方からすればそれが何であれ世俗的な価値判断とは関係なく出土遺物としての考古資料だということでしょうか。　二階の方も日本の歴史をなぞりながら出土遺物を見ることが出来るように工夫された展示ですがやはり名品がこともなげに（不適切な表現かも知れませんがぼくなどからすると）雑然と並んでいるところはなんとも面白いものです。　職員さんと話していて展示の名称で信楽とされているものが自分にはどうしても常滑とより見えなかった点、またこれは手に取ってよく見なければはっきりとは言えませんが自然降灰釉であろうと思われるものが人工施釉であるとおっしゃった点などいくつかの疑問も感じました。　とにもかくにも大変見ごたえの在る展示が入館料無料で公開されているのですから考古の側の方はもちろんですが、やきもの好きの方にも是非とも足を運ばれるようにお薦めします。　それで肝心の須恵器の件ですが展示品で多くのものを実見出来たばかりでなく、考古関係の窯跡の調査資料など多くの自分の求めていた資料を出して来て下さり、また素人の質問にも大変丁寧にお答え戴き、なにかとご教示戴けたことも本当にありがたいことでした。午前中に行って夕方近くまで大変有意義な機会を得ることが出来ました。　そうそう、展示品は全て写真撮影も問題なしというのも太っ腹～な感じがして嬉しですね。

  2005.05.17

• 須恵器の窯

  　自分にとっては長い間の夢だった地下式の須恵器の窯を復活させてみようかという話しに興味を持って下さる方もあり、土地と薪材との提供を受けることで急速に動き始めそうな気がしている。おおよその図面を引きながらあれこれ考えている。ひとりでやるにはあまりに仕事が大掛かりなのだが人が集ればこれも不可能ではない気がしている。古代の人がやったようにそういう大きさでそういう様式の窯を試したいのである。　しかし当時は国家がその国力を背景に先端事業として力を注いだ須惠の仕事も、自分たちにとってはまるで違う事情の仕事であるので木を切るにはチェンソーも使うし薪や土を動かすのにはトラックも使うことになる。かつての須恵器は多くはそのかたちが今の生活の道具足り得ないものになったが、一方やきものとしての質は特にそのうつくしさの面から見直されてよいはずのものに思う。

  2005.05.16

• 忙しくなってきました

  　一昨日昨日と続けて薪を切っている。山主さんから薪材提供の嬉しいご好意を頂戴して、木は本当は水を下ろしている冬のうちに切るほうがよいのだが、秋の台風や冬の大雪で倒れたり折れたりした木のうちからやきものには最適の赤松だけをとりあえずは切って運んでいるのである。まだまだ切って良いという木が沢山あるのだがこれらは必要に応じて少しづつの冬の仕事にしようと思う。　今までも原木を買ってチェンソーで切り割ってはいたのだが、山に生えている木を切った経験はそれほど無かったので大きな松の木を切るのは怖いような感じもしたが教わってやってみれば案外思っているほうに倒れるものだ。　薪のことばかりではなく珍しくいろんなことに追われて忙しいのだ。　ちょっとした個人的なこともあり、またそのうち丁寧に書くつもりだがひょんなことから新しく念願の穴窯を築く計画が持ち上がりこれも嬉しく楽しみなことであれこれ考えていればこころが躍る。　こういうことをやっていると疲れて早く眠くなる。早寝早起き、自分には珍しくそういう暮らしのリズムが出来てきて嬉しい。

  2005.05.12

• 春の草花　番外編その１　備前のシャガ

  　このシャガはいつもの生畑の草花をマクロで撮ったものではなく備前の窯跡に咲いていたもの。むかしのやきもののかけらの間に生えているのが見えますか？　シャガ、好きなんです。うちにも毎年沢山咲くのですがもうしばらく先のようです。そういえば丹波の師匠の窯の裏山にも沢山のシャガが咲きました。この薄暗い薮に咲く華やかな花に大変魅かれています。またしばらくしてうちのシャガが咲いたらしっかり撮ってみたいと思います。　実は昨日は友人達と備前の窯を見学に行ってきたのです。自分にとってはどこかしっくりこない備前焼でしたが、今回初めて行ってみて窯跡や資料館を見ればやはりさすがに名高い備前の土だけあってその焼肌の風合いはなかなかに魅力的な気がしました。備前で会った人たちもみな親切でした。　それになによりうつくしいのは閑谷学校です。見るものすべてたいへん感激して歓びました。ここは屋根瓦が備前焼で出来ているということで名前だけは知ってはいましたが、その山裾の地形に沿った石垣も建築もみな大変なもの。沢山の写真を撮ってはきましたがなにぶんやきもの中心の今回の旅の中では充分なことは出来ません。いつかしっかり写真を撮りに行きたいと思います。

  2005.04.25

• ギャラリーＳＡＶＯＮの展示替え

  　本日すでにお知らせしているかねてより展示中のギャラリーSAVONの自分のスペースを大幅に入れ替えました。展示台などはそのままで今回はスリップウェアを大幅に減らして藁灰釉系統のものや呉洲刷毛目などの小さな器類と各種蓋物などを並べてみました。写真は花器の底に入れて剣山のかわりにするための花留。いろいろなかたちを楽しんでみました。すべて無釉の焼締のものです。　この企画はあんまりハッキリ申し上げるのも少々はばかられますが、自分は数週間ぶりに会場に行ったのですが予想どおりだんだん雑然としてきています。予想していたこととはいえひどいなぁ～と思ったのは事実です。　企画者のほうには何かと苦言は伝えてはいるのですが先方も商売ゆえに仕方がないとも思います。契約どおりに５月いっぱいまで展示を続けていますが、自分の預かるスペース以外の内容と展示に付いては口出しはしても実行力はありません。向こうは向こうでその興味も注がれる努力も持ち合わせた能力も「うつくしい展示」というのとは違うところにあるのだと想います。いかに汚い空間につまらないものが並んでいてもどうしようもない自分の立場です。　この企画についてはぼく自身が個人的にぜひ御覧下さいというかたちの案内はしていませんが、このページでこの企画の案内をしている以上はこのページ内にこういったことも書かない訳にはゆきません。実際にここを見て訪ねて下さった方もあるようでそれはたいへんありがたいことで感謝しているのですが、それ以上に申し訳ないような気持ちになるのも事実です。会場全体と企画内容が自分の予想以上のことになりつつあります。今後は企画や展覧会の受諾には今少し気をつけたいと思っています。　一生懸命取り組んだところでこれは難しいことですがギャラリーでの展覧会形式のものである以上はわざわざ来ていただくお客さまにはその空間も接客も含めて心地よく過ごしていただきたいという気持ちがあるのでこの一文を記したい気持ちになりました。　会場の詳しい場所や休日や時間についてはギャラリーSAVONのホームページを御覧ください。

  2005.04.11

• 荒川豊蔵と加藤唐九郎展を見る

  　写真は田舎の農家の朽ちた土塀に枯れ草という極めて侘びた風情ですが、これは最近京都のオフィス街の裏道に出来たカフェなのです。だからこの雑草も注意深く植え込まれたものであるに違いなく、夜にはライトアップするのでしょうかスポットライトも仕込まれていました。お店の内外共にこういう感じで統一されていて、正直なところ演出過多という感じはしましたが、それでもこのお店が表現しようとしたこういう風情の美しさはよくわかる気がします。　なにも演出がいけないと言うのではないのです。こういう整理された侘びは茶室にも通じる美意識で好ましいものだとは思いますが、演出が深みを欠いたり、本物でないという点が鼻に付いたりするようでは困ると思うのです。　　今日は荒川豊蔵と加藤唐九郎の展覧会を観て来ました。ちょうどチケットも頂いたのはありがたいことでした。彼等の仕事はまるで自分好みではないのですが、個人作家としては頂点とも位置づけられている彼等の展覧会ですから一度見ておくのもよいという気にはなっていました。評価され尽くした仕事に接するということは自分の立ち位置を再確認することが出来るいい機会だと思うのです。　彼等は言わずと知れた近代日本を代表する二人の陶芸家です。彼等の時代は技術偏重の明治以来の美術工芸へのアンチテーゼとして桃山茶陶の美を追い求めた作家を排出しましたが、その中でも際立った力量を見せた二人でした。彼等を先駆者とするこういうスタイルは現代でも陶芸界にひとつのスクールを形成しています。　研究も進まないあの頃にこういう仕事に手探りで体当たりした彼等の姿勢には頭が下がります。志野、瀬戸黒、黄瀬戸と美濃の茶等を範とした彼等の仕事はそれぞれに風格ある作品を残しました。　ところがいかにも茶陶という風情の彼等のやきものはそれなりの存在感を示している反面、やはり演出を感じさせられるものなのです。日本陶磁の絶頂とも言われている桃山茶陶自体があざとい造作の目立つ本来の意味で禅的でない存在である以上は（茶碗以外の志野と黄瀬戸はちょっと違うと思いますが）ここにお手本を求めた陶芸家の作品が難しい位置に立たねばならないことは必然のように思われます。

  2005.03.05

• SAVONギャラリーでの3ヶ月

  　今日から約3ヶ月の長期間京都の北山通りと北白川通りの交差点にある美容室SAVONに併設されているSAVONギャラリーのイベントに参加している。　ここは割合広い空間で、この期間は順次地元のアマチュア作家などの手作りのものなども展示するそうだからたぶんクラフトもアートもスーベニアも分別なく並ぶのだろうと予想しているので企画全体についてはその質も内容もぼくの方では把握し切れないし、そういう意味では手放しにお薦めすることも出来ないが、この企画の一角を預からせて頂いて食器を中心に数十点好きなふうに展示をする事になったので近くの方はお立ち寄り下さい。　いつものことながらこういう突き放したような言い方でこれは冷たく響くだろうということもわかっているし、企画の主催者や会場の方にも申し訳ないが、自分がよいとかうつくしいとか書く以上は仕事柄よいとかうつくしいとか書いたものがもしもつまらないものであったりするならばそれは自分の目が悪いということだ、というそれ相応の責任感を持って自信を持ってお薦めしたいものだけを誉めたいので、そうでないものについてはついつい慎重にならざるを得ないのである。　言うまでもなく自分の作がよくありたいとはいつも願っているが、残念ながら非常によいとは思っていない。向かう方向が間違いのない道だとは信じているが未だ至らない点も多いに感じているのが事実だ。こんなことはほんとうにうつくしいものを観れば正直に告白するよりない現実なのだから仕方がない。　話がいささか弁解じみて変なふうにずれたが、「素敵な展覧会をするので、あるいは楽しい催しをするので是非ともおいで下さい」とは無邪気に書けない性分なのだ。　ぼく自身は時々顔を出して展示を直したりするくらいですが、期間も長いのでともかくこの預かっているギャラリーの一角を使って時々ものを入れ換えながら、あるいは展示方法も変えながら楽しみたいと思っているので誰か御覧になる方もこれを楽しんで下されば嬉しく存じます。　　　一緒にヘアカットというのもよいでしょうが、もちろんギャラリーだけでもお気兼ねなく御覧になれます。詳しい場所や休日や時間についてはSAVONのホームページを御覧下さい。

  2005.02.24

• 

  花瓶の水

  近年は温暖化も進みそれほどでもありませんが、子供の頃は生れ育った京都市内でも時々は水道の蛇口や管が破裂したりしましたし、玄関の間に花をいけていた母のお気に入りの南蛮の壺が割れてしまったこともありました。その頃は自分はやきものの良し悪しもわからない子供だったのですが、ひびの入ったこの壺を今見るとなるほど惜しいことをしたという気になります。タイの方か何処かそういう南方の暖かい国で作られたこの壺は凍りつくようなところで使われることなど考えもしなかったのでしょうか軽く薄手に作られています。こんなことで壺が割れるものだなあ、と子供心に印象に残りました。先日梅の枝を手折って持ち帰り、丹波の大徳利に指してみたのですが余った分を手近にあった瓶に指してついうっかりと朝まで表の水道のところに置いたままにしてしまったのです。割れたのは古丹波ではなくて自作のものだったというのは正直ほっとしました。それはしっかり焼けた厚手の瓶でしたがたっぷり入った水が中で凍りついて膨張し、内側から押し広げたのではひとたまりもありません。寒い処に住む人はきっとこういうこともお忘れにはならないこととは思いますが、京都くらいの時々氷が張るという土地の人は案外油断しそうな気がします。やきものは壊れてしまってもかけらになってさえもそれなりに花をいけることも出来ますし、修理して使うことも出来ますが、少しの注意で壊さないまま何百年でも楽しむことが出来るものです。どうかお気に入りの花瓶の水の凍結には御注意下さい。

  2005.02.22

• 銀とやきもの

  　陶器に銀彩がしてみたかった。イメージは銀彩といっても華やかなものではなく、瓦のような黒く焼けた土肌に銀をべったりと塗り付けたようなものだったのだが、予想以上にコストがかかる事がわかってそのままになっていた。　それが先日銀工芸の方と知りあう機会を得て、なにか違うかたちでやきものに銀を合わせられないかと、先方の立場からすると銀にやきものを合わせられないかとお互いに興味を持って少し話し合う。金属のことを知らなさ過ぎるのでいろんなことを教わり、アイデアを出し、技術的な面を解決してなにか作ってみたい。　今日ようやく短い時間だったが銀の話をお聞きしてこの計画も動き出す、嬉しい。

  2005.02.20

• 窯小屋の修理

  　正月の大雪で壊れた窯小屋を直している。壊れた部分の撤去が終わり、近くの間伐材を頂く手配が出来て、ようやく少し雪が融けて山にトラックが入るようになった一昨日チェンソーを持って山に入る。チェンソー自体は少しは慣れているが立ち木を倒した経験は余りないので友人に頼んで手伝いに来てもらう。倒した木の枝を払いトラックに積み込むのだが、雪も残って足場も悪い中を林道に出すのは一人では無理なのだ。　これを昨日トラックから降ろして窯の脇まで運び上げた。木も樹種によって同じ太さでもずいぶん重さが違うのだが、軽い杉とはいえ余裕を持って6，7メートルに切ったので生木の重さにヘトヘトになる。　疲れたためか久々に早く寝た。そして今朝は早く目覚めた。午前中の用事を済ませ午後は窯小屋に掛かるつもりが肩や腰が張っているのと寒いのとで昼食後少し布団に入って寝そべるつもりがそのまま夕方近くに電話が掛かるまで眠りこんでしまう。　明日は大丈夫頑張れるだろうと思っているのだが、いま外を見たらまた雪。なかなかはかどらない。　　しばらくぶりに「日記」らしい日記を書いた気がする。やっぱり楽天日記はこういうのがいいな。（笑）

  2005.01.19

• 金城次郎さん(1911-2004)

  　ぼくの憧れ金城次郎さんが去る24日とうとう亡くなってしまった。　病気で何度か倒れられ、その度に復活されたとのことだったがそれでも数年前にとうとう身体も動かなくなって作陶生活から引退されたとは聞いてはいた。　次郎さんを知ったのはやきものをはじめる前のことで、そのおおらかな作風に大いに心ひかれた。明治以後日本のやきものから生きた紋様がなくなってしまったあともどういう訳かただ沖縄ばかりはいきいきと紋様する力を持ち続けていた。明治末の生れの次郎さんもやはり生涯にわたって数えきれないほどのやきものを紋様された。　次郎さんといえば魚や海老を線彫した上に鮮かな色を差したものばかりが有名になってしまって人間国宝に指定されて以後は工房をあげてそういうものを量産されたようだが、実際のところはそれ以外の装飾紋様にも大いに素敵なものが有って自分などは魚紋なども大変立派だとは思うがむしろ人間国宝などではなく、また「次」のサインも未だ入ってない時代の琉球伝統の陶工の一人としての仕事により共感を覚える。　本土から遠く離れたあの島国には琉球時代からいくつかの窯があり、1682年にそれらが那覇の壺屋に統合されて以来、日本から中国からまた南方諸島からの影響を受けながら非常に独自性のある琉球のやきものが発展してきた。ある意味で次郎さんはそういう長い伝統の最後の一人のようにも見えるし、失われそして再評価されて復興しようとする最初の世代のようにも思える。次郎さんの長い作陶生活の上にそういうはっきりした転機や断絶があるとは思わないが、氏が仕事を続けている間に沖縄に壊滅的な被害をもたらしたあの戦争があり、その後のアメリカ統治と本土復帰があり、壺屋焼の器自体も沖縄民衆の常用の器から本土の一部の数寄者からの評価と共にだんだんと沖縄土産へと堕していったのは事実だと思う。その中でその実力と共に本土との強いパイプを持っていた金城さんが沖縄を代表して無形文化財に指定され、結果氏のやきものを取り巻く状況はより商業的なものになっていったと、そういう中ではたとえ次郎さん個人は振れなかったとしてもなにかが変らないではおれなかったのだろうことは想像に難くない。　　やきものの学生時分のこと、そんな状況の中で京都でも相次いで二ヶ所で個展が開かれてことごとく全てのものを手に取らせて頂き内側や底までじっくりと見せてもらえたのは嬉しい事だった。その時に一冊の図録を手に入れてぼろぼろになるほど繰り返し見た。　そしてこれも昔の話だが弟子入りしたいと友人が氏のもとを訪ねたが断られ、話をしているうちに昼になり、いったん辞し午後にまたお願いに行ったところ「そういえば午前中にもそんな人が来ていた」などと言われたそうで、これを聞いて彼はあきらめたのだそうだ。その時すでに次郎さんは年をとり過ぎていたのだ。　さらに後年、別の友人が訪ねたときには犬を散歩させておられたので一緒に歩きながらお話ししたとも聞いた。　いつか師匠に聞いたこんな話もこころに残った。師がまだその師のもとで修業時分のある時次郎さんが何日間か窯に滞在して沢山の作品を作られたのだという。それを窯詰の折り何点か壊してしまったと。やぁしまった、と思った瞬間「気にしなくってもいいよ」と言ってもらったのだそうだ。これを聞いたのはやはり自分が窯詰の折り同じように壊してしまったときだったろうか。　　縁あって次郎さんのものがいくつか手元に集ってきた。湯呑茶碗のほうはとある方からいただいたもので、これは読谷に窯を移される前の昭和40年代の壺屋時代のもの。沖縄でマカイと呼ばれている碗は露店で二客組で求めたものだが両方ともひびや染みが入って相当使い込まれている。これもおそらく壺屋時代の次郎さんのものと思う。ひとはしばしば名前でものを買うのでこれもただ傷物茶碗として売られていた。こんなになるまで使い込まれれば使われるためのものを作りたいと生涯陶工を貫いた次郎さんも本望だろうという気がする。　　　琉球陶工　金城次郎さん(1911-2004)を偲んで思いつくままに書いてみた。　とうとう会うことは出来なかったが沢山のいただきものをしたような気がする。　どうもありがとうございました。　合掌。　・沖縄タイムス　・琉球新報　・朝日新聞沖縄版　・朝日新聞　

  2004.12.28

• 泥三彩指描蓋物

  泥三彩指描　蓋物　h:12.6cm d:12.6cm　三彩といえば普通は有名な唐三彩のように黄色や緑の華やかな色釉を用いたものを指しますが、自分はかたちした地土の上に他の色の泥で紋様を付けて焼締めたものを泥三彩と呼んでいます。これは特に色を目当てに調合したものではなく、ただ天然の泥そのままの色なので多少紋様が賑やかになっても全体の調子は渋くおさまるというのが気にいっているのです。　この場合紋様は筆ではなく指で描いています。この指描の方法を見つけたのはふとしたきっかけです。それは自分がまだ丹波立杭の師のもとで修行させていただいていた頃のことです。いくつも並んだたくさんの器に化粧掛けをしていました。指に泥が付いたままでは滑って作業ははかどりません。そこで雑巾などで手を拭えばいいのですが、あるとき指に付いた泥を次に掛ける器の横腹になすりつけながら作業をしていたのです。指の跡がついてもすぐにたっぷりと化粧で覆われて消えてしまう訳ですから問題ありません。　未だ乾かない土の上を濡れた指が心地よく滑ります。そこには何とも伸びやかな指の跡が残されます。案外このへんに模様の発生の起源があるやもしれません。そういうやきものの仕事の工程から捕まえたやり方は土や泥の生理からしても無理がないものです。　東京駒場の日本民藝館に自分の大好きな江戸末期くらいの丹波のものでやはり二色の泥を使った火消し壺があります。土肌に違う色の土で装飾するということは丹波でも古くから行われていたのです。それはおそらく指ではなく筆を使っているという気がしますが、その壺からヒントを得てこの紋様を用いています。自分の場合は二本の指に色の違う泥を付けてあまり考えないで一気に仕上げています。＿＿＿＿＿＿昨日は「プレゼント」などというタイトルを付けてしまったためか妙に沢山のアクセスがありました。げんきんなものだなあとも思いますが、まぎらわしいことで申し訳ないなあと反省です。で、今日はたまには自作のやきものを紹介してみようと思いました。文章は右のメニューの中のやはり泥三彩指描のビア杯に添えたものに手直ししたものです。ちなみにこれもプレゼントではありません。（汗）胴に焼いたときの窯傷が入ったため自家用の味噌壺になっています。。。家の中もさむいさむい。そろそろ雪が降るんでしょうか。。。

  2004.12.21

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  とある窯場のこと

  　昨日とある窯場を訪ねた。この窯のことを知って以来ずっと気になってはいたのだ。この窯は江戸も早い時期に興り、往時は十六軒もあったという窯元も今ではたった一軒を残すのみでそれさえも時代の波に押し流されるように絶えようとしている。品物は良く古格を保っているのだが、それだけに現代の需要に結ばれないでいるようだ。　このような半農半陶の窯は時代の流れの中で、今では当主は勤めに出ながら受注があればやきものも作るのだろう。しかし実際には仕事場は荒れていて、ほとんど土の仕事は止まっているふうに見えた。　自分たちが訪ねた時はかつてこの窯を守ったのであろう老人が一人留守番をしていたのだが、その陶工は年を取り過ぎていてすでにいろんなことを聞くことは出来なかった。　このような窯を訪ね、話を聞き出し有形無形の受け取るものを受け取り、さらに伝えることも後を歩くものの大切な務めだという気がする。　写真はこの古い工房の土壁下地の竹組を残した窓からの眺め。

  2004.10.05

• 動き出す

  　日記も怠けはじめるとすぐに日が経つものだ。「自由になれる訳です」と書いてから早一週間。このあいだあまり家に落ち着くことなく、沢山の人に会いまた沢山のものを見て過ごした。　これは何度もここに繰り返し書いていることだが、収入を得るとかいうこととは別の意味での事に仕えるという字義通りの本来的な意味での「仕事」、そういう新しい仕事にようやく取り組みはじめる。ある共同の仕事なのでこれは詳細はまだ明らかに出来ないが自分たちの想いは深く、あまりにささやかながらも非常に意味深い事だと自負している。

  2004.10.04

• blog

  　ここ楽天の画像の倉庫がいっぱいになったことからいくつかの方法を考えてExciteブログに「はなかり」ブログを預かって頂くことにした。ところがこの「はなかり」のテーマを「うつくしいものさがします」ということにしてしまったのでどうにも自作のものを紹介するのは気乗りがしない。別に控えめだとか遠慮しているとか謙遜するとかそういうことではないのだが、自作のものはまるで美しくないとは想わないまでもここで紹介したいと想っているものものに比べてはどうにも分が悪いというのが正直な実感なのである。こういう引け目を感じながらここに自作のものを載せる訳にはゆかない。　それで再び困り果てて新たな場を考えてみた。説明やヘルプを読んでいても今一つ要領が得られないのでメールアドレスや名前などの個人情報が出て行くのはもう仕事柄どうにもならないのでいろいろ調べて目処を立てAuto page,Doblog,seesaaなどなどいくつものblogサービスをどんどん登録して試してみたのだが、大きなサイズの画像が表示出来る点と、トータルの容量の大きさ、準備されたblogデザインのシンプルさなどなどでいかにExciteブログが図抜けているかということを改めて知ることとなった。ここで自分として不満があるとすれば日本語表記の名前が使えない点と、naomもnao-mもすでに誰かが使っていて取れないというくらいのことだった。　ふたつのアカウントを取ってふたつのブログを作ることは認められているので結局はさらに「やきものを作ろう」もここに預けることにする。あんまり増やしても管理がたいへんだというのは目に見えているし、これでさらにほっぽり出しているinfoseekとgeocitiesのホームページ作りが遅れるというのも気にはなるのだが自作のものの紹介ページとしてこれを開設したのである。　別におべっかを言う訳ではないがここ楽天はblogとしてはたいへん自由度も高く広がりを持ちながらも洗練された使いやすいシステムだとは想うがいかんせん画像の容量が少ないのが惜しい気がする。・「はなかり」・「やきものを作ろう」

  2004.09.17

• 瓦屋

  　古い家を壊すという情報が入り隣町に見に行った。行って見るとそれは瓦屋さんの住居で、半分は粗塗りの土壁で煙に黒く煤けた美しい工房だった。仕事はいつまで続いていたのか知らないが、庭の土には赤く焼けた跡がある。驚いたことにこんなところで昔やきものを焼いていたのだ。　工房跡の荷物のなかには瓦の木型や、土仕事に使う竹や木で作られたヘラなどの道具がそのまま残されていた。自分たちが使うような器作りの道具とはかたちが違うのだが、それでも捨て去られるのは忍びない気がしていくつかを持ち帰ることにした。　今回は薪にするための柱や梁は十分間に合っているので残念ながら見送る。なかなか太くていい材があったのでもったいないのだが置く場所も無いのではどうにもならない。天井や床などの板材にいいのがあるかと期待して見に行ったのだがこれも特別に素敵なものは無かったので止しにする。なかなかいい、と思うくらいのはいくらもあったのだが今日の状況の中で抜き取るのは難しかったのだ。　嬉しかったのは用途はわからないが瓦で作った筒状のもので、これは庭に半分埋まっていたのを引っ張り出したのだ。　それにしてもいつも思うのは何とももったいないほどのものがどんどん捨て去られているということだ。とんでもなくいいもの、という訳ではないが布団と一緒に捨てられようとしていた藍の古布、昔のガラスの電気笠など頂戴する。ああ、いったい自分は何屋なのだ。。。（苦笑）　何と言っても一番惜しいと思ったのはあの土壁であるが、そんなものは持ち帰れる訳が無い。

  2004.09.14

• 直後の感想

  夏の間中掛かり切りになった一仕事が今日でようやく終了。とあるデパートの手仕事の職人を全国各地から大勢集めた企画に今一つ状況も分からないままに参加していたのです。様々なもの作りの人々との出合いも楽しくいい機会だったと想います。近年の不況に加えて会期中に大きな地震がありさらにまた大型台風も来たりしての出控えもあり、個人的には経済的にはたいした結果を出せずにいたのですが、まぁ売れている人は売れているようなので逆に売れないものには売れないだけの理由があるのだと想います。こういうふうにしてこういうものを作れば売れるのだ、ということは多分的を外すことなく掴めている気がしますが売るためにものを作るという訳ではないということは妥協することなく守らねばならない大切なことだと想っています。やはりお金がない、というのはなかなか辛いことなので誰でもついついここは妥協しがちなところなのです。この道に人生を賭ける覚悟を決めた専門家はあるべき姿を提示して啓蒙的に開拓的な仕事をしなければならない。売れるものこそよいのだ、と心底思うのでなければ買い手の求めに無批判に応じるようなことはあってはならないことだと想います。

  2004.09.07

• 非日常？

  今日一日エアコンの効いたビルの中で過ごしました。一週間朝夕電車に乗って一日ビルの中です。普通のビジネスマンにとってはあたりまえのことかも知れませんが、生畑から出掛けてはあまりの環境の違いになんとなくしんどいなぁ、という感じもしたりしています。やきもの売りの寅さんみたいなもんです。（笑）せっかくだから普段と違う日常を楽しみましょう。

  2004.09.01

• 

  皿立て

  　今までは皿立ては木で出来たものを使っていたのですが、しばらく前にあるところでこういう鉄製のものを見、また別のところで自分で作ったというひとの話を聞いて試してみる気になりました。今までの木のものとは皿を支える構造が違います。西洋の皿立てはこういうのが多いのだとも聞きました。　針金をハンマーで叩いて角にし、それを曲げて作りました。なんでもない針金も叩いて鍛えるとなかなか美しい風合いを見せてくれるのはちょっとびっくりです。　かたちはうろ覚えなので少しづつ探ってみたのですが上手に皿を支え、かつ美しいカーブというのを見付けるのは簡単ではありません。こういうものは必ず機能と美の一致するところがあるかと想うので落ち着くところに落ち着くまでそのうちじっくりと取り組んでみたいものです。

  2004.07.30

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