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• Clarence White

  Clarence Whiteの命日でした。Googleで見たらやっぱり日本でもとても彼を愛している人がたくさんおられました。素晴らしく詳しいサイトもあった。あの痛ましい事件から早くも35年が経った。。。思い出す年もあったし忘れて過ぎた年もあった。1973にはぼくはまだ子供で彼のことを全く知らなかったが1983のこの日にはなんという取り返しのつかないことだという気がしたのを思い出す。その時はぼくはもうギター少年だった。実家の部屋には学校の音楽室にあるようなJ.S.Bachの肖像と並んでClarenceの大判のポスターが貼ってある。あの事故が無ければまだまだたくさんの録音を残したに違いないのに。。。

  2008.07.15

• 30年ぶりに聴いて感じたこと

  　南丹市のケーブルテレビにはふたつの独自のチャンネルがあり一方は地域の天気予報を一日中流しており、もうひとつは様々な地域情報番組のチャンネルである。夜ふとテレビをつけると永富研二とテネシーファイブのライブ演奏が放映されていた。子供の頃から地元京都のラジオ局で諸口あきらさんの深夜放送を聞いていたので初めて行ったコンサートが諸口さんのたしかDJ10周年記念だったと思うがそのアンコールコンサート。ちなみに初めて買ったLPレコードはやはり諸口さんのファーストアルバムでそのアルバムのバックバンドは高石ともやとナターシャセブンであった。そしてそのコンサートの方のバックバンドが当時から京都のカントリーミュージックでは有名な永富研二とテネシーファイブだった。諸口さんの同じ曲でも演奏が違えば随分違うものになるのだな、ということを知ったのも自分の好みは軽やかなナターシャセブンのサウンドであったこともいまでも鮮やかな記憶であるが、とはいってもこのコンサートは子供心に大いに興奮したことも覚えている。　子供の頃からバンジョーの音色が好きでブルーグラスなど聴いたり演奏したりしてはいたものの、もともとカントリーミュージックはどうも肌が合わないところがあって好きではなかったのでテネシーファイブの演奏はそれ以来聴いたことがないように思う。それが10年ぶりに手に入れた我が家のテレビから30年ほどの時を経て突然現われたのである。メンバーには若い人も居られたのでいくぶん変動はあったようだが何といってもその頃から30年もの長い間活躍されていること自体は簡単ではない立派なことである。　ところが当時は音楽のことは何もわからない子供だったとはいえ随分感心して聴いていた同じような曲もこちらが変ったのか先方が変ったのかはわからないがやるせないほどにお粗末なものに感じた。嫌ならすぐにチャンネルを変えて見なければいいといえばそれまでだが、なつかしいのと永富さんとはその後二十歳前後の頃には多少の縁もあったりしたのでついつい見てしまったのだ。お粗末なだけならばそれでよいがそれがなんとも醜悪なものを見てしまったような気になったのには正直自分でも戸惑った。　世の中にはよい音楽とひどい音楽がある。よい陶器とひどい陶器がある。ものをはっきり言わない時代のなかでこういうことが曖昧なままに容認されているのはあまり幸福なこととは思わない。政治、道徳、倫理、哲学全ては同じような事情のもとにあるのだ。

  2007.06.12

• 来た！

  　顔文字なんてめったに使わないけれど［来た！］なんて書いてみてもたしかにあんまり待ちわびていたものが来てよろこんでいる感じが出にくいのでインターネット風に〔ｷﾀ━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━ｯ!〕とか書いたほうがたしかに感じがありますね。　ともかくこの前のカタログに続いて、今度はまた別の楽器とCDなどを扱うお店からようやく楽しみに待っていたCDと楽譜が届いた。売れ線のものなら街の輸入盤屋さんでいくらでも手に入るし、たいていは日本盤も出ているものだがこういうマンドリン音楽とかマーケットの小さなものは大手は扱わないので小さな専門店に頼るしかない。ぼくなども中学生くらいから僅かなお小遣いを貯めてこういう音楽のLPレコードをこつこつと買ってきたが、やきものに取り組みはじめてからはあまり買うことも無くなっていたらいつの間にか定期的に送られて来ていた情報も届かなくなってしまいますます縁遠くなってしまっていたのである。今ではインターネットの時代なので探せば情報はいくらでもあるが、どうも通販は好きになれないので聴きたいと思いながらそのままになっていたものがいくらもあったのだ。　それで今回マンドチェロ製作を発願したのを切っ掛けに、個人輸入の練習がてらいくつかのものをオーダーしてみたのである。カタログの時と同じで出来るひとには何も特別難しいものである訳はないのだが、今回は金銭のやりとりがあるだけに、楽しみと同時に不安もなくはなかった。送料をたしても日本国内の専門店で買うのと大差ない価格で買えるとかで、何枚か合わせればむしろかなり安く手に入るからCDなどは個人輸入している人も多いそうだ。それでぼくも個人輸入の経験の有る友人や英語に強い友人に教われば簡単だが何とか一人で出来るようになりたかったので取りあえずは日本でも割に評判の良いお店にオーダーしてみたのだ。　先月19日にオーダーしたものが21日に発送されたとのメールがありようやく無事今日届いたのだ。やってみてわかったことは注文画面の最後に「何も指定しなければ遅いけど一番安いので送るよ」という表示が出るのだが、今回は詳しく英語を読むのが面倒だったのと節約のためにそのままにしたけれど数ドル余計に掛かるにしても速い配送を指定すればよかったかなと思った。初めてだったので不安に感じただけかも知れないが、これだと4~5日で届くそうなのでよっぽど精神衛生上よさそうである。何万円ものオーダーならいったいいつ届くんだろうときっとやきもきしそうな気がする。　間違ったものなんかが届いて返品や返金の手続きを英語でしなきゃならないとすればかなり面倒だな、などと悪いことも考えていたがずっと欲しかったものが何の問題もなくきっちり届いたので大変満足。ちゃんと届くのが当たり前といえば当たり前ではあるが、なにぶん初めての経験なので歓んだのだ。オーダーの際に「これが自分が英語でオーダーする初めての経験だし、それに自分は英語が母国語な訳じゃないので何か疑問やメッセージがあるようなら出来るだけ簡単な表現で書かなきゃだめだよ」と付記しておいたのだ。それと値段の件だがCD3枚と楽譜が一冊で送料も7ドルだからCD1枚あたり日本のお店より700円くらいは安いことからすれば代金を合わせてもたしかにかなり節約出来きた。エルダリー楽器店さんどうもありがとう、またお世話になります。安いのでついついまとめ買いしたくなるのは難点ですけどね・・・　　今回買ったものはマンドリンやマンドチェロの素晴らしい演奏家Mike Marshall関係のものばかりで今夜から当分楽しみます。　・J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータをマンドリンにアレンジした楽譜集　・Chris Thileとのデュエットアルバム　INTO THE CAULDRON　・同じくC.Thileとのデュエットアルバム　LIVE DUETS　・Darol Angerとのデュエットアルバム　AT HOME AND ON THE RANGE

  2006.10.11

• 最初の一歩

  　このまえマンドチェロを作りたいという話を書きましたが、手始めにマンドリンなどのパーツや楽器作りに必要な工具類を扱う会社からカタログを取り寄せてみました。こういうものはなかなか日本国内では手に入れにくいものなのです。こういうことに取り組む以上はもう英語は避けて通れないのでいつまでも苦手がっていても仕方がないのですが、それでもいきなり注文するのはいかにも荷が重いのでまずはカタログでも取り寄せて様子を見てみようかなと思ったのです。　ホームページからカタログを送って欲しいというボタンを押して住所などいくつかの項目を入力するだけなので特に何も難しいことはありません。それでも日本まで本当に届けてくれるのかなぁと半信半疑でしたがきっちりKihata Sarayama Studio宛に無事本日届きました。いかにもアメリカ風の粗末な印刷のちょっとした雑誌くらいのカタログです。最初の一歩は成功です。マクダーネルさんどうもありがとう！　それはそうとこの前から訳あってひと月ほど預かることになった小坂さん制作のマンドチェロが自家にあるのでどうにも仕事がはかどらない。緩く張られた太い弦の響きは気持ちが良いものです。

  2006.09.29

• マンドチェロのこと　その3

  　最後にいろいろ見付けたマンドチェロリンクを書き留めておきます。　なにぶん自分にとっては不自由な外国語のページのこと、完全なものは出来ませんがあえてサイトのトップではなくなるべくマンドチェロのページを示しました。またメーカーや制作家自身によるページではないところも一部含まれています。　数十人のマンドリン製作者のサイトを探しましたがマンドラを作るひとはあってもマンドチェロをラインナップしているひとは僅かです。あるいはギター制作家の中にマンドチェロを作るひとがいそうな気がしますが探し切れていません。取りあえずはここまでです。日本の作家は二名しか見当たりませんでした。需要を考えれば当然とも言えますが数多くおられる国内のGibsonスタイルのマンドリン製作家もカタログ上はマンドチェロはラインナップされていないようです。　日本語で書かれたマンドチェロのページは非常に少ないので、この文章は本サイトの中に別項目として残します。さらに詳しい情報をどなたかから頂ければ追記してゆきたいと思います。よろしくお願いいたします。　この文章をまとめるに当たっては複数の国内マンドリン製作者や愛好家のサイトを最初の手がかりにリンクをたどリ、また検索させて頂きまとめたものです。ありがとうございます。～～～～～～～～～～マンドチェロ　リンク集～～～～～～～～～～・Capek　近年なかなか評判のチェコの制作家です。・Roza Wood　チェコの制作家で二種類のマンドチェロがラインナップされています。・Ratliff　アメリカのメーカーのようです。・Eastman　アメリカのブランドですが中国で作っているそうで、コストパフォーマンスが高いと最近評判は良いようです。・Nugget　著名なマンドリン制作家のマンドチェロです。・Roger Bacorn　アメリカの製作家です。・Dell' Arte　カリフォルニアの製作家です。サイトでは確認出来ませんがマカフェリギター風のフレンチスタイルのマンドチェロを作っています。・Steve Gilchrist　　近年人気のオーストラリアの製作家。サイトではマンドチェロは確認出来ませんが作っているようです。・Weber　　アメリカのおそらくマンドリン最大手メーカではないかと思われます。これはいちばんビックリしました。沢山のマンドリンラインナップのそれぞれにマンドラとマンドチェロが準備されています。なんと14種類ものマンドチェロ!!!・Monteleone　　David Grismanのマンドリンを作って一躍有名になったMonteleoneもMike Marshallのマンドチェロを作っていたはずですが現在のホームページラインナップにはマンドリンが一本あるだけでギターばかりです。・Randy Wood　　古くから著名な制作家です。・Sant Cruz　　高品質なギターで有名なメーカですがこれはかなり意外でした。・Ovation　　画期的な樹脂で出来たギターを作った大手ギターメーカですがここもやはり樹脂のマンドチェロを作っていました。・Kentucky　　アメリカのブランドですが1983～6年頃マンドリンラインの生産を日本の田原楽器に託していた時代にGibson K-4 スタイルのKK-4とJohn Monteleone デザインのKK-DAWGの二種類を出していました。その後生産は他社に移りマンドチェロは作られていないようです。・Gibson　　言わずと知れたGibsonです。19世紀末から1920年代までのマンドリン音楽ブームの時代に沢山のマンドチェロを作ったと思われます。K-1 K-2 K-3 K-4 k-5の5種類がありました。・Epiphone　　これもよいギターを作っていたメーカーですがやはりマンドチェロも作っていました。・米丸手工マンドリン工房　　ヨーロピアンタイプのマンドリンを手がけておられるようですがマンドチェロはギター風のアメリカンスタイル。・小坂弦楽器工房　　いつもお世話になっている小坂さんのマンドチェロはGibsonを意識していないという点でもここで挙げた中でも異色の作です。・「マンドチェロのこと　その1」はこちらです・「マンドチェロのこと　その2」はこちらです

  2006.09.10

• マンドチェロのこと　その2

  　現在の楽器の値段のことに少し触れますと、業界の外にいる自分には詳しい事情はよくは判りませんが、現在F5スタイルのマンドリンの価格はプロの演奏家たちにも非常に評価の高い限られた数人の制作家のもので数百万、本家Gibson社の往時を復元したモデルが100万内外、その他の普通の制作家が作るもので4～50万くらいが多いようです。工場出来の安いギターならせいぜい数万円で売られていることからすれば高いようにも思えますが、そういうものはコストダウンを第一義に音響面で好ましくない合板や塗料や接着剤なども使い、また流れ作業で量産された製品ですから同じような姿はしていても丁寧に音を調整しながら選び抜いた木を削った手工品とはまったくの別物です。　またマンドリンの材料となる木材などは国内では扱うところも少なく、よいものを探して海外の楽器専門の材木屋さんから買う場合には、他に必要となる金属パーツなども合わせておおよそ先に述べた楽器の価格の一割程度です。したがって実際にこつこつと手仕事で仕上げる楽器の数はせいぜい月に2～3本といいますから楽器屋さんの販売マージンを差し引いて考えれば必ずしも高くない納得のゆく価格だと思います。　ともかく専門家でもない自分がマンドリンの用材などといういかにも専門分野のものをしかも不自由な英語で買い付けるというのはなかなか敷居の高いことではありますが、これさえクリア出来れば数万円で充分な質の材料が揃う訳です。後は手間さえかければ、と簡単にゆくはずは無いのですが、しかし大変な歓びと楽しみも多いであろう作業をしっかり進めれば非常によいとはゆかないでしょうがそれなりのマンドリンが完成するのではないかという気がします。それに自分で作れば少しづつ工夫しながら、また様子を見て音を聞きながら満足ゆくまで調整出来るというのも魅力のような気がします。　何事も夢中になっている間は楽しいもので陶器のことを忘れてこういうことにのめり込みそうなのは用心ですが、想いはさらに膨らんであれこれと調べ事を進めています。　マンドリンのことはひとまずこのくらいにして話はマンドチェロに戻りますが、アメリカの楽器屋さんでいくつかは古いGibsonの売り物を見付けましたし、さらに驚いたことに実はいろいろ探すうちに海外ではいろいろとマンドチェロが作られていることも判りました。果たしてこの楽器がどれくらい弾かれているだろうかということを考えても、またネットであちこちのお店の在庫情報を探してみても実際に小売りの楽器屋さんでマンドチェロを置いている店がほとんど見当たらないことからしても、それぞれの生産量はそれほど多いとは思えないのですが、それでもともかく各メーカーや制作家などのカタログ上には案外多くのマンドチェロがラインナップされていることが判りました。　しかしこれらをさて現実問題として買うかといえば、その価格はやはり40万ほど以上で満足のゆく質のものはさらに高くなるようですし、とても手が出せないのと共に、弾いてみたことも無いメーカーの楽器を現物を触り音も聞かないで取り寄せてみようかという気にはなれません。日本国内でこれらのマンドチェロのある楽器屋さんを探すというのはまず不可能であるように思われます。やはりこれは自分で作ってみるよりないんじゃないかという気になってきます。このためにはまずは半製品のマンドリンキットを作りながらこれをお手本にして、同時に板からもう一台のマンドリンを作りあげ、この経験を応用して図面を引いて大きな材を手配してマンドチェロに掛かる必要があります。この膨大な労力も3台の楽器が手に入ることも大いに心がときめく楽しみなのですが、しかしこれだけの材を揃えてまた必要な最小限の道具類も買えばけっきょく20万くらいはゆうに掛かるんじゃないかという気がするのでなかなか気軽に踏み切ることが出来ません。・「マンドチェロのこと　その3」は最終回として近日中にまとめてマンドチェロのリンク集を添える予定です。・「マンドチェロのこと　その1」はこちらです。

  2006.09.07

• マンドチェロのこと　その1

  　この前はマンドチェロのことを少し書きましたがその後も夜毎あれこれと検索しては調べていて大いに認識違いをしていることが判ったのです。ほんとうはただ自分のための覚書で充分なのですが、マンドチェロについてのまとまった日本語の資料はいまのところあまり見当たらないようなのでいつかどなたかの役に立つかも知れないとも思いここにまとめておきます。　　まず最初に、20年以上も執着してきたマンドチェロのことを今さらどうして騒ぎ立てているのかということから書きます。実は最近マンドチェロを手に入れることが出来そうな機会が相次いで二度もあったのです。しかし一方は取引交渉の面で、もう一方は価格の面で折り合いが付かず見送ることになったのです。まあそれでも楽器自体が非の打ち所も無いようなものであったとしたら相当なところまで目をつむったような気はしますが、楽器のコンディションや作りにも少し引っ掛かる点もあったのであえて見送ったというのが本当です。これほど思い入れている以上はこの際とことん満足のゆくものが欲しいというのが人情です。　先日書いたとおりに自分はマンドチェロなど現在ではほとんど使われもしないし作るひとも少ないのではないかと思っていました。制作家の方に特別に注文して作ってもらうことも考えましたがそれだってまとまったお金が必要です。それでどうせなら自分で作ってしまおうかという気になって、マンドチェロ自体の情報はほとんど見当たらないのでギターやマンドリンの製作関係のことをこつこつと調べていたのです。　今ではインターネットでそれなりの情報を見付けることも出来ますし、アメリカではビデオや本なども手に入るようです。実際に資料も充実しているマンドリンなどを手始めに試してみて経験を積めば、マンドチェロは極論すればギターサイズの大きなマンドリンそのものですから不器用な自分でも簡単なことではないとしてもそれでもなんとか作ることも出来ない訳ではないという気がします。　それで最初は日本語で書かれた楽器製作などに関するページを探して読んでいたのですが、やはりその先の資料に当たるとなると海外のサイトを見なくてはなりません。出来ない英語のサイトを沢山探して苦労して読んでみれば、さすがにマンドチェロは無理ですがマンドリンやギターならば本や工程を説明するビデオなどさえ手に入ることが判りました。楽器のための用材はもちろんのこと、アメリカはDIYの盛んな国だけあって半製品を集めた制作キットさえあるのでこれから手を付ければ複雑な曲線の多いマンドリンの構造も理解出来ます。最初は手持ちの国産マンドリンをばらして勉強しようかと思いましたが、しっかり学ぶにはどこか誤魔化し事の多そうなこれよりはこの本格的なキットのほうがさらに有用のような気がしますし、マンドリンが一本手に入るというのもこれはこれで魅力的です。　マンドチェロにしてもマンドリンにしても基本的なかたちは1920年代にGibson社によって作られたいかにもアールヌーボー調のものが今日の基準となっています。しばらくは話をマンドリンに絞りますがGibson自体も少しづつモデルチェンジをしていますし、多くのメーカーや作者もいろいろと作る中でヴァリエーションが産まれてはいます。マンドリンが主に使われるブルーグラス関係の音楽家がその始祖であるビル・モンロー氏の使っていたGibsonの1923製のモデルF5のサウンドを標準として受け入れたためにこのような現状がある訳です。　先に述べた自分のマンドリンはおそらく1970年代の国産で、本物の良い時代のGibsonをよく知らないままで写真かなにかから想像して作り上げたようなものす。安物のギターなどはベニア合板を張り合わせたようなものも少なくないので、それらからすると楽器の呈をなさないというような粗悪なものではありませんが厳しく言うならば様々な品物にもよくあるアジア製のちゃちなコピーものというようなものでもあり、作りも音も満足のゆくものではありません。　しかしこのようなおおまかにいえば同じかたちをしたF5スタイルのマンドリンがどうしてそれぞれ違う音色がするかといえば、それは用材の質と作りの正しさ以外には無いのです。　最初に材について言いますと例えば同じ大きさの、あるいは同じ重さでもいいのですが鉄の板と木の板を指先でこつこつと叩けば違う音がします。これは欅の板と杉の板で試してもやはり同じことで、材料にはそれぞれ固有の音があるということです。その振動数が音程を決めて、音色は素材固有の倍音成分の違いです。一枚板と合板や、生の木とよく乾いた木、あるいは正目と板目などそれぞれの条件によって響く音は違ってきます。マンドリンの音は弾いた弦の振動で木全体が共鳴し増幅されて出てくるものですから適切な素材が適切なマンドリンの音の条件である訳です。　次に構造です。一例をあげれば空のガラスコップを爪先で弾いて響く音は、その中に少しづつ水を入れてその容積を変えてやることによって音が変ってきます。このようにマンドリンの音域をより正しく響かすにはやはり適切な楽器の容積が決まってきます。また容積だけではなく楽器の部分それぞれによる板の使い分けなども大切なのは言うまでもありません。弦の響きはブリッジという部品によってボディーに伝わります。ここはいちばん堅い木である黒檀が使われており、ブリッジがまずは前面の柔らかい針葉樹系の板を響かせ、そしてこの振動を受けてこちらはやや堅い楓の木などが使われた裏板が音を跳ね返して前に音を出す訳です。板自体の厚みのバランスも肝心で、8本の強く張られた弦の張力に耐えるだけの充分な強度と同時に弦の振動を大きく増幅する響きのよさが大切なのです。いい楽器とそうでない楽器の違いは材がそれなりのものである以上は後はその適切な処理であって、相応の材料を手に入れるのは無理ではなさそうですから自分が楽器を作るとすれば正しい工作こそが肝になる訳です。

  2006.09.02

• マンドリンとマンドチェロのこと

  　ネットでＳさんという方のマンドリンを偶然見付けた。マンドリンを探していた訳ではなく、本当はマンドチェロのことを調べていたのである。Ｓさんはなんとも美しいヴァイオリンやマンドリンを作っておられる制作家で、いろいろ情報を探していたら大阪の楽器屋さんに一本あるのを知って気になって仕方がない。自分は氏のことを全く知らなかったのだが一枚の写真を見て二日程このことが心の中をいっぱいにして何度も何度も写真を見て、あんまり気になるので時間を作って出掛けてみたのだ。かくも美しい楽器が果たしてどういう音を聞かせてくれるのか。　バスや電車を乗り継いで訪ねたそのお店のいちばん奥にその楽器は置かれていた。写真で見たとおりの美しい楽器をお店の方に声を掛けて弾かせて頂く。優美な姿から予想した以上に強くてはっきりした音がするのに驚いた。それは軽く弾いても強く弾いてもしっかりと反応してくれる素晴らしいマンドリンであった。　実は自分は長いこと弦も切れてしまって弾かないままで壁に掛かっているが学生の頃に中古品を買ったあまりよくないマンドリンを持っているのだ。それに乗り換えの駅のそばにある別の楽器屋さんも訪ねて比較のために最近のメーカーもののマンドリンも弾かせてもらってからこのお店に来たのである。ここには他にも二人の個人制作家の手工マンドリンがあったが、その一方はＳさんのものとはまた違った性質のより太くて深い音がするこれも大変魅力的なもので、どちらを選ぶかというのはなかなか難しい好みの問題だと思った。日本の手工品マンドリンもメーカーものとは一線を画した素晴らしいものが出来ていることを知る。取っ換え引っ換え小一時間マンドリンを触らせて頂いて非常に満足。マンドリンは欲しくてもとても買えないがギターの弦を2セット買ってお店を後にする。考えてみれば自分はマンドリン弾きでもないのに、いつかＳさんにマンドリンをオーダー出来る日が来るのを想像して心が躍る。　ところで肝心のマンドチェロだが、これがなかなか見つかるものではない。８０年代のはじめ頃Mike Marshallの演奏を聴いて以来ずっとマンドチェロのことが気になり続けている。クラシック系のマンドリンオーケストラで使われるものは何処ででも手に入るのだが自分の探しているのはアメリカンタイプのマンドチェロである。クラシック用のものとはかたちも音の性質も違う。マンドチェロと言っても多くの方には馴染みが無いことと思うがヴァイオリンの仲間にビオラとチェロがあるようにマンドリンの仲間にもマンドラとマンドチェロがあるのである。１９２０年代頃まではアメリカでもマンドリン音楽が人気があり沢山のマンドリン系の楽器が作られていた。その後はDavid Grismanが提唱した新しいマンドリン音楽であるDAWGミュージックで７０年代から使われるようになるまでマンドチェロの存在はほとんど表に出ることはなかったのではないだろうか。　そういう訳でマンドチェロという楽器自体も２０年代頃のGibson、８０年代になって作られたKentuckyあるいはJohn Monteleoneなどの個人制作家の手によるものの他は無いのではないだろうか。古いGibsonはともかくKentuckyにしてもMonteleoneにしてもそれぞれそれほどの数が作られているはずはなく売り物として市場に出るものはまれである。（戦前のGibsonやMonteleoneがとても自分などに買える値段で出ないだろうとは思うけれどもそれはさておき・・・）まれであるという以上にほとんど見たことが無い。８３年頃にKentuckyからマンドチェロが発売された時はかなり色めき立ったものだが、当時買ったギターの支払いに四苦八苦していた自分にはどうにもならなかった。今から思えばあの頃買っておけば、という気がするがそんなことを言ってもどうにもなるものじゃない。あの低音のＣの音までドーンと響くマンドチェロの音はあまりに魅力的だ。　いつかマンドチェロを手放してもよいという方が検索していてこのページを見付け連絡を下さることを祈りつつ。。。以下検索のためのキーワードマンドチェロ　Mandocello 　ケンタッキー　Kentucky　ギブソン　Gibson　グリスマン　Grisman　マーシャル　Marshall　ドーグ　DAWG　KK-4 KK-DAWG K-1 K-2 K-3 K-4 K-5 ついでと言っては何ですがこちらを手放してもよいという方も御座いましたらどうぞよろしく、お待ちしております。スリップウェア　slipware

  2006.08.18

• BENNIE K

  　テレビは無いし（他所で時々見るけれど）ラジオは入らないし（車でたまに聞くけれど）古くから持っていたCDを聴くくらいでほとんど新しい音楽を知らないのですけれどたまたまテレビを見ていてBENNIE Kという全く名前すら聞いたことも無いような若い女の子の二人組のライブを聴いてかなりビックリした。テレビ初ライブなのだそうで年齢も若そうなことからしてもまだこれから出てくる人なのだと思うが、これが二人ともヴォーカリストとして大変な力量でリズムもハーモニーも素晴らしく、またものすごくニュアンスが細かくて豊かな表現力であることにも驚いた。宇多田ヒカルとか椎名林檎とか元ちとせとかそういう才能のある人が出て来た時には無名の若い歌手（本当はそれ相応のキャリアもあって有名なのかもしれないが）にもこれほどの人が出て来たかと驚かされるし嬉しいものだが、今回も彼女らを初めて聴いた時に勝るとも劣らず感激した。シンプルな演奏に乗せて唄われるしっかり計算されているのであろう歌とラップが計算を越えて自由自在に絡まりあう醍醐味を十分に楽しむことが出来た。全く興味もなかったジャンルのもので、テレビを付けた時の最初の曲は牛若丸と弁慶の物語を歌っているようだったがその内容は半分もわからない。ところがわからないままで感じたことはこれは確実に現代の素晴らしい音楽だということで、自分などがここで紹介するにはいかにも変な感じがする内容ではあるが、こんなページを見てくださるような方にとってはやはり自分と同じようにBENNIE Kとは縁遠い方が多いのではないかという気がするのであえて自分一人の感激に留めないでここに紹介してみる気になったのです。 　などと書いてからちょっと調べて見たらヒットチャートの1位なども獲得している人気デュオのようで知らなかったのは自分だけ？？？って感じですね。（笑）

  2006.05.04

• 同志社へ

  　今日も3人のちいさなめいげつやは同志社に行って45分の演奏。同志社といえば馴染みのある今出川の方ではなく田辺のキャンパスのイベントである。前回の出来が最悪だったのを嫌って少しアレンジを見直してきっちり練習したのでまぁまぁまぁの55点くらいか。なかなか素晴らしい会場で音響も丁寧に音作りをしてもらって心地よかった。しかしなんとはなしにリズムがしっくり来なかった。上手くいっている時は自覚的に合わせなくてもリズムに巻き込まれるような心地よい感覚があるものだが、めいげつやでそういう場合はそんなには多くない。　やきものならば窯出しして駄目なのはみんな投げ割ればすむのだが録音ならともかくライブはそうはゆかない。充分に練習して自分が心地よいものが出来ないならばあんまり人前に出たくないと思った。　この前ある家で3人でお茶を頂戴した時の茶碗がいずれも現代物でひとつは絵唐津、ひとつは白丹波、それにもうひとつがだいぶん前の自分のものが出てきた。約束事を守った茶陶の作家物と並べればなんとも乱暴で投げやりな仕事かと思わず笑ってしまった。嫌みなものではなかったが、かといって良いとはとても思えなかった。過ぎたことは自分のことではありながらも半分は他人事のような気もしないでもない。今ならこんなのは出さない気がした。　話はあちこち飛ぶようだが、今日の帰りの電車の中で衣裳を着せた大きなクマのぬいぐるみを抱いたおばさんがいた。少し離れた席にいたのだが顔を近づけて何か話しかけている様子で、あるいは孫にクマの着ぐるみを着せているのかなとも思ったがそうではなくやはりぬいぐるみである。頭のおかしいひとなのだと決めつければ一番納得もゆくのだが、大きなあくびを何度もするのが気になったものの変な感じはあまりしなかった。「ぬいぐるみには何か訳が？」と話しかければ普通に話が出来そうな気がしたが、なんとなく気の毒な事情でもありそうな気がしてとうとう声を掛けなかった。いろんな人生があるよなぁと思った。

  2005.11.06

• ぼくの古いギター

  Martin HD-28custum 1978　もう少しこの前の続きでギターの話です。制作家の小坂さんに早くも手がけて頂いて修理完了の電話を昨夜戴き、さっそく引き取りに伺ったのです。　楽器に興味を持ったきっかけは、ぼくが小学校の4年生の頃に、まあ今から思えばずいぶんませているなという気がしますがラジオの深夜放送を聴いていたのです。その頃京都の放送局では諸口あきらさんやきたむらけんさんなどカントリーやフォークの歌手などがDJを務めていて、当然その手のレコードが掛けられ、またスタジオに楽器が持ち込まれて彼らの生演奏などもありました。聴いている内にだんだん興味を持つようになったのは必然のことだったという気がします。諸口さんやきたむらさんは他の公開録音の番組も持っておられたし、そういう録音にもずいぶん出掛けもしたなかなか熱心なリスナーだったのです。そこに出て来るジャンクやナターシャーセブンなどのグループもお気に入りでした。普通のカントリーミュージックはあまり好きにはなりませんでしたが、それでも諸口さんともかかわりの深かったドン佐野さんや永富研二さんというカントリー畑の方々の番組も少しは聴いていたように思います。　そんな頃にラジオで聴いたバンジョーの音色になんともこころ魅かれたのです。夢中になるとそればかり、という性分はどうも生来のもののようでこれがしてみたいと、たぶんそんなことばかりを家でも言っていたのでしょう。詳しい経緯は忘れてしまいましたが従兄からバンジョーをあげるよ、という話があったのです。彼がギターを弾いていたのは知っていたように思いますが、バンジョーを持っていたというのは知らなかったのではないかなという気がします。ともかく大喜びでいただきに行って、何曲か弾いて見せてもらったのを覚えています。すでにこのころは5年生になっていたかも知れません。　それからは学校から帰ると近所迷惑だから夜は何時までと決められた時間までずいぶん熱心に練習しました。ナターシャセブンの城田じゅんじさんによる教則レコードをテープにしてもらったのを従兄からもらってこれを最初の手引きに、後には何冊かのアメリカのミュージシャンの書いた教則本や繰り返しレコードを聴いて真似て練習したりと。　後に中学生になってアマチュアの演奏家から何回かのバンジョーのレッスンを受けましたが、ちゃんとした音楽教育を受けていないのは今になってはいろいろと自分の足かせとなっているように思います。しかしその頃までに関心のあったブルーグラスや、フォークやカントリーなどはアメリカの田舎で親から子へ孫へと伝わったリズムも和音もそういう音楽の構造からすると極めて素朴なものからの延長のようなものだったのでこんなやり方でも何となくこなせてしまったのだろうと思います。　ブルーグラスというのはアメリカの民謡の新しい演奏スタイルのことで、ここにはバンジョーと共にマンドリンやギター、バイオリン、コントラバスなどがでてきます。バンジョーの話が長くなりましたが、そんなことでギターが欲しいと思ったのは余程遅く中学の1年生の時、ブルーグラスのギタリストであるTonyRiceというひとの演奏を聴いてからです。　最初のギターですが、これはある朝新聞広告にデパートの特価品で限定10本だったかな「ギター3000円」という文字を見付けました。これはなんといっても画期的な値段で、学校帰りによく見ていた質屋のウィンドウにもこんな値段ではなかったのです。当時でもちゃんとしたメーカーのものなら合板で出来た安物でも子供にとっては高価な2万円近くはしたのですから3000円というのはどう考えてもいいものであるはずはないのはわかってはいたのですが多分お年玉だか、貯めたお小遣いだかで手の届く範囲だったのですね。これをどうしても欲しくなり、学校があるから母に頼み込んで朝一番に買いに行ってもらったのです。これは当然のようにひどいもので合板であるのは言うまでもなく、材はおおよそ楽器用とは言えないようなもの、ねじと接着剤で組み立てたようなもので、どう見てもギター型の箱でしたがそれでも嬉しくて毎日弾いていました。　次に手に入れたのがその数年後、友人のお父さんがどこかからもらってこられた物が回ってきたのです。これももちろん合板で最低級の大安物でしたがそれでも3流ながらも一応は楽器メーカーが作ったという感じの物で最初の物よりは余程ましでした。これを内側の木を削ったりサウンドホールを大きくしたりネックを削ったりと自分好みに改造してそれなりに気に入って長いこと弾いていました。ずいぶんと手を入れて改良したつもりだったのですが友達や先輩の持っている2万円のギターにもとてもかなわなかったですね。　そして高校生になってようやく楽器らしい楽器をと望むようになり、楽器屋さんでいろいろ弾かせてもらったり、カタログを眺めたりとそういう期間を経てあるメーカーのものを買おうと決めました。たしか一番大事な表板が単板なのは５万位、裏や横も単板の物は10万とかそれくらい以上だったのです。バイトだお年玉だと寄せ集めてもなかなか大変な金額です。どうせならと（こういうところが今も変っていないのですが）少し気に入らない部分をオーダーしてなどと考えればさらにそれなりの見積もりが来ます。　しかしこれを無理してでもなんとかと思った時に、楽器屋さんに勧められたのが今のギターです。国産のそれにそれだけ払うなら絶対こちらがいいと。それはマーティンの特別生産的なモデルで、たしかに自分が買うつもりになったものとは少し弾いてみただけでも桁違いの素晴らしいギターです。誰かが買ったけれどもすぐに手放したとかで、新品同様の中古品だったのですがそれでも相当無理して都合した予算をさらにはるかに超えています。普通は中学生なんて出入りするようなお店ではなかったのでこのお店のオーナーさんにはずいぶんかわいがって頂いていたのですが、支払いはいつでもいいからとか、相当好意的な条件を出してもらい、両親にも借財したりして思い切って決めたのがこのギター。　よい楽器というのは弾いていても気持ちがいいものでおのずと熱心に練習もするし、また音楽的にも表現力のキャパシティーがあるのです。ギターというのはちゃんと使っていれば年数が経てば木も枯れてよい音になる物ですが、これは新品の楽器としてはちょっと例がないほどに良く鳴る物でした。他のマーティンと比べてもブラジリアンローズウッドを使った古い物（～1969までのモデルで、これは買おうとしてもプレミアが付いて自分の物のさらに倍ほどもするのです）は別として、インディアンローズウッドの時代のものには負けたことが無いほどによいギターで、これは買うのは大変でしたがまったく後悔しない買い物でした。　今回の修理はブリッジという弦を留める部分がはがれてしまったのですがこれはずいぶいん前から少し浮き気味だったのです。今回ここをきっちり再接着してもらい、またついでにブリッジ自体の構造をより音程が確かになるように改良してもらいました。今まではブリッジが少し浮くことで弦の振動がボディーに伝わるのにいくらかロスがあったのか、修理後はさらに音も大きく反応も良くなったように思います。　弾けない状態で預けに行った時もその材のよさをたいそう誉めて頂きましたが、直ったものも、やっぱりものすごく鳴りますね、こういうのは新しいギターではどうしてもでない音です、などと誉めて頂けばなんだか自分のことのように面映ゆい気がします。　修理完了までと先輩のH氏からお借りしているブラジリアンローズウッドの1966モデルと自分の1978モデルが今手元にあるのですが比べてみれば（こんなよい機会はまたと無いでしょうし、何と贅沢なことかという気がします）、ボディー内側の力木構造が少し違うのと材の違いもあるのかも知れませんが少しその高音低音のバランスに違いがあるもののその響き方はすでに古い楽器特有の軽く明るい同質のものになっています。　自分がいろんな方に沢山のマーティンを触らせて頂いていた頃は当時まだ出来てから10年そこそこの自分のギターは明らかに古い楽器にはさすがにかなわないという部分を感じていましたが、すでに27年目の今となっては新品同様だったギターも枯れてきたようです。いつかは古い楽器を、と思っていましたが今はこれでいいという気になっています。　リンクの紹介を少し。・マーティンギター・マーティンD28についてのものすごく詳しいページを見付けました・今回お世話になった小坂さんの工房

  2005.10.20

• ギターのこと

  　ギターが壊れた。20数年も使い続けているギターだが磨り減ったフレットを打ち変えてもらったりはしていたが壊れたのはこれが初めてだった。弦をボディー側で固定しているブリッジが浮き上がったのだ。　今日ギターの制作家を訪ねて修理の相談をする。ケースを開けるなり「非常によい材が使ってある、これは良く鳴るでしょう」とおっしゃる。確かに同メーカー同機種の中でもちょっと特別生産的なモデルなので同じ時代のものを何台も弾いてみた中でも自分のは図抜けて良く音が出る楽器なのだ。材のよさというのは専門家は見ればわかるらしい。　古くなるとこういうところが外れるのは仕方がないことですよ、などと言われてたしかにそういうものだろうという気がする。ついでに気になっていた点などいくつか相談して預けてきた。楽器にもやはり主治医が必要でこういうときに普通の楽器屋さんに預けるのとは違って専門家の意見を直に聞けることは心強い。　氏の作られたいくつかの楽器を見せていただく。材により、かたちにより音の性格が違うのだ。自分は今ではそれほど楽器を触る訳ではないが、うつくしい手工のギターを触らせて頂けばああこういうのも欲しいなどという気になる。

  2005.10.11

• 野宮神社

  　世阿弥の作と伝えられているお能の「野宮」というのは『源氏物語』の「賢木の巻」を元にしたものだそうで、六条御息所が籠もっていたのが今の京都嵯峨野にある野宮神社なのだそうです。ここは今では縁結びの神様ということで大変な数の観光客でそれほど広くもない境内も賑わっていますが、それでも御所などのある京都の中心からはずいぶん離れた場所です。当時はどれ程寂しいところだったかと想像します。　野宮神社はもちろんのこと黒木の鳥居は近年樹脂で固めた防腐処理されたものに変わり果ててしまいましたがなんとか、クロモジの小柴垣もそのままに残されています。もちろん御息所が葵の上に車争いで敗れた葵祭も続いています。平安時代の物語りの舞台がまがりなりにも今なお残されている京都という街はなんとも凄いなという気がしました。　京都ではいま嵐山音楽祭という音楽イベントが嵐山一帯の複数の会場で行われており、この会場のうちのひとつが野宮神社でした。ここで今日ぼくたちのバンド、めいげつやで50分程演奏してきました。由緒正しいこの場所で竹林や木立に囲まれて演奏するのは気持ちの良いものでした。野外イベントなので通り過ぎる観光客相手になるのかなという気がしていたのですが、スペースいっぱいの沢山の人がじっと座って熱心に最後まで聴いて下さったのも印象的でありがたいことでした。

  2005.09.24

• VASSAR CLEMENTS 1928 - 2005

  　ヴァッサー クレメンツが入院して相当状態が悪いということは１週間ほど前に聞いていたが、16日にとうとう亡くなったというニュースが報じられた。　日本ではあまり知るひとも無いかも知れないが、アメリカのブルーグラスやロックが好きなひとはあまり知らないひとが無いのではないかという気がする。彼は二十歳そこそこでビル モンローのバンドへの参加以来何枚ものアルバムと数々のセッションミュージシャンとしての仕事を残した。　彼のフィドルは誰かのアルバムに少し参加しているというような場合でもその独特の音色とフレージングではっきりとヴァッサーの演奏だということがわかるというほどに独創的なものだった。彼の世代のブルーグラスミュージシャンでは例外的といえるほどに幅の広いさまざまな音楽に興味を持ちジャズやロックも演奏したことも若い世代からの支持を得る理由であったような気がする。　　自分にとっては「オールド＆イン ザ ウェイ」のライブ盤やジョン ハートフォードの「エアロプレーン」、デイヴィッド グリスマンの「ラウンダー　アルバム」など夢中になってすり切れるほどに繰り返し聞いたレコードでの演奏が忘れられない。「ガルシア／グリスマン」のDVDでオールド＆イン ザ ウェイ時代のことを懐かしそうに笑ながら話していたのも大変印象的だった。　この手の演奏家の訃報が日本のニュースになる場合は多くないが今回は日本のメディアでもあちこちで取り上げているようである。それだけヴァッサーの存在がファンの自分などが思っている以上に現代的なものだったということだろうか。　自分と共に数々の自分のアイドルも歳をとり、こういう記事を書かねばならないことも多くなるのだという気がする。寂しいことだ。　南無阿弥陀佛・CNN・毎日新聞　

  2005.08.17

• iTunes Music Store

  　今日も再び京都までとんぼ返り。結局はもうひとつアダプタを買うことになったのだ。先日修理に出しに行った時に出来上がってくるまで約二週間とのことだったのでなんとか残りのバッテリーで節約しながらのりきろうと思って居たのだがなんのなんのどうしても必要なメールのやりとりなどもあり早くもバッテリ残量が無くなってしまったのである。残り数パーセントというところで強制的にスリープにはいってしまったのだ。　修理に出した時に、どうせあれば便利なのでもうひとつアダプタを買おうかとも思ったが5000円程というのに躊躇いもあり、それならいっそのことこの際だから思い切ってMac miniでも買ってしまおうかなどとも考えもしたが、冷静に自分の経済を思い返せばそんなことはやはりどうしたって贅沢過ぎるので止しにしてそのまま帰ったのである。　それなら中古のアダプタをなどという気を起こしてネットで探したりしたものでなおさらバッテリーを消費してしまい結局はまた出掛けなければならなくなってしまったのは優柔不断が招いたばかばかしいことだった。　ところで昨日からいよいよ日本でもiTunes Music Storeが始まった。アップルジャパンに力が無かったのかそれとも日本ではソニーや東芝というような音響機器を扱うメーカーが音楽ソフトを販売しているために手間取ったのか知らないが思いがけず時間が掛かってようやくのスタートである。　これはインターネットでの音楽ファイルのダウンロードということだがすでに他社から同様のサービスが提供されてはいたものの事実上の世界標準はやはりiTMSなのでこれでいよいよダウンロード販売も今後急速に普及するだろう。すでにアメリカをはじめ各国で始まっていたサービスで今までは自分好みの曲を探して30秒づつだがサンプルを聴いてCDを買うのの参考にしたりしていたものの日本からは実際に曲を買うことは出来なかったのだがこれからはもうCDを買う時代ではなくなるのだろうと思う。　自分などは10代の頃からアメリカの伝統的な音楽に関心を持ち熱心にアメリカのマイナーレーベルのLP盤を輸入盤屋さんで買い集めていたがやがて時代はCDとなった。LPはそのジャケットが魅力だからという意見もありまた音質の点でCDヘの移行に抵抗したひともあったがやはり便利さにはかえられずあっという間に大勢はCDに取って代わられた。今度は便利さではCDの比ではない音楽ファイルのダウンロード販売の時代が本格的に進むに違いない。　今回もきっと目に見え、手に触れ得るケースや盤のような実感が無いファイルだけを買ってというのでは寂しいなどという人があるかとは思うが、本来音楽とはそういうものだという気もする。今までの経験上1時間内外のアルバムという音楽パッケージの形態に慣れてはいるが、大勢がファイル販売に移ればこれだっていつまでも同じでは有り得ない。制作側にしてもどんどんと新しい単位での作品（商品）を作り出すことと想う。　いまの自分はたいして音楽にお金を使う暮らしではないがそれでも時々は欲しいものもありこういうものを一曲単位で買えるというのは喜ばしいことだと想っている。自分好みの音楽を何処へでも持ち出せるというソニーのウォークマンが出来た時もやはりそういう感じがしたのを想い出すが人々の暮らしのなかで音楽のありようそのものががらりと変る瞬間である。新しい時代の幕開けだということは事実なのでこういう何か希望に満ちた感じというのはいいなと想う。

  2005.08.05

• 色彩と音楽の付いた夢

  今朝の夢にははっきりと色彩と音楽が付いていた。ちょっとした映像作品のような夢だった。♭ミドミドミソソーーミミミドーー♪なんだこれ？（笑）聴いたこともないような音色の楽器だ。あることへの反発がこの夢の背景のひとつには違いないとおもうのですが、現実と幻想が交錯したようななんとも印象的なものだったのでここにメモ。子供の頃から「気違いになったら色の付いた夢を見る」とか聞いていました。まあそんなものではないと想いますが・・・なったのかも知れないなぁ？

  2005.07.16

• アチェ・リリーフ

  　明日は京都の法然院にてアチェ・リリーフのコンサート。　楽器を弾いたりやきものを焼いたり、そんな好きでしていることがなにも直接役に立つ訳ではないが、それでも茶碗や演奏を誰かが使うことで役立てて下さるとすればありがたい事だと思っています。　音楽を聴きに、あるいはお茶を飲みに来て下さればそのことが確実にささやかなアチェへの支援になる訳ですから、時間的に空間的にそれが可能で、またそういうことを歓びに感じることが出来る方は是非どうぞ御出で下さい。http://www.mex74.com/index.htmlhttp://www.mex74.com/acehrelief_jp/00top_jp.htmlhttp://www.mex74.com/acehrelief_jp/02event_jp.html

  2005.02.10

• 柳兼子 1892-1984

  　柳兼子の名前を知る人も今ではそう多くないことと想います。だから今日の青鷲さんの日記に兼子さんの名前をみたのは思い掛けないことでした。　北朝鮮による拉致被害者の曽我さんと彼女の夫君、戦争の（戦争というものの内容に傷つき、その結果母国から国家に対する犯罪者であるとされているという意味で）痛ましい犠牲者であるジェンキンスさんとの再開がようやく昨日はたされました。　今でこそ朝鮮というときには不幸なことにふたつに別れなければならなかったその片側だけを指すようですが、本来明治政府が日朝併合などという蛮行を行わなかったとすればこの国の現在はまるで違うものとなっていたでしょう。それ以前は当然独立したひとつの国、朝鮮だったわけです。　日本が朝鮮を植民地としていた時代に彼の国の独立国家であることを果敢にも唱えたひと、支配下民であるその国の人々を蔑む日本の空気の中で公然とその民族に親愛の情を示し得た希有な文化人に柳宗悦が居ます。　彼は朝鮮にいくらかの友人達とその民族の生み出したものものを讚えるべく朝鮮民族美術館を建立するのですが、柳夫妻はこのために何度も日本と朝鮮で講演会や展覧会、また兼子夫人の演奏会を開催してようやく実現に漕ぎ着けます。兼子さんはただ宗悦夫人というだけではなく、当時の日本を代表するアルト歌手であり、その伝記などを読む限り非常に魅力的なひとだと想うのです。　今手元の資料を詳しく調べなおすことが出来ませんので簡単な紹介ですがいい機会だと想い少し書いて見ました。自蔵の参考資料を列記します。　本・『柳兼子音楽活動年譜』　　　　松橋桂子編　1987　日本民藝協会・『柳兼子の生涯　歌に生きて』　小池静子著　1989　勁草書房　ＣＤ・『柳兼子リサイタル　うたごころ』　　1990　アート・ユニオン　インタビュー・筑摩書房の『柳宗悦全集』月報に、また『暮らしの創造』4号にどちらも水尾比呂志氏によるインタビューがあります。後者は1979八潮書房刊の『回想の柳宗悦』に再録されています。　　また、以下のものは持っていないのですが他にもこれらの資料があります。ＬＰレコードも出ていたはずですしさらに他にも自分の知らない資料はいろいろあるはずです。・『楷書の絶唱　柳兼子伝』　　松橋桂子著　1999　水曜社・『 柳兼子　永遠のアルト』　 ３枚組みＣＤ　2001　グリーンドア音楽出版・『兼子　Kaneko』　 ドキュメンタリービデオ　2004?　兼子制作委員会

  2004.07.10

• 唐突ですが・・・（音楽の好み）

  諸口あきら（歌手）RCサクセション（バンド）城田じゅんじ（バンジョー奏者）ビル・モンロー（シンガーソングライター・マンドリン奏者）リチャード・グリーン（ヴァイオリン奏者）クラーレンス・ホワイト（ギター奏者）ディヴィッド・グリスマン（マンドリン奏者）マイク・マーシャル（マンドリン奏者・ギター奏者）ジョン・ハートフォード（シンガーソングライター・バンジョー奏者・ヴァイオリン奏者）ステファン・グラッペリ（ヴァイオリン奏者）バーズ（バンド）ロジャー・マッグィン（シンガーソングライター）ボブ・ディラン（シンガーソングライター）ヨハン・セバスチャン・バッハ（作曲家）ユーディー・メニューイン（ヴァイオリン奏者）ベラ・バルトーク（作曲家）ギドン・クレーメル（ヴァイオリン奏者）アルフレッド・シュニトケ（作曲家）ロベルト・シューマン（作曲家）ジーン・シベリウス（作曲家）チョン・キョン・ファ（ヴァイオリン奏者）アルボ・ペルト（作曲家）マルタ・アルゲリッチ（ピアノ奏者）ラビ・シャンカール（シタール奏者）チック・コリア（ピアノ奏者）トニー・トリシュカ（バンジョー奏者）ジョン・海山・ネプチューン（尺八奏者）スザンヌ・ヴェガ（シンガーソングライター）ジョン・マクラフリン（ギター奏者）おおたか静流（歌手）Chara（歌手）椎名林檎（シンガーソングライター）元 ち と せ（歌手）アメリカの白人民謡雅楽沖繩の民謡と宮廷音楽インドの音楽仏教の声明お能覚えてなかったりはっきりとは言い切れなかったりするのですが初めに個人を、後に個人で括れないジャンルをずらっとなんとなく年代順ふうに並べて見ました。間違いそうなのでみんな日本語表記です。（苦笑）その筋では著名なひとではあっても、たいていのひとには余り知られていない名前が多いことと想います。それにしても案外好みの音楽の幅って狭いものですね。。。（笑）もちろんずらっとLPもCDも並べて３メートル程づつもあるのでもっといろいろ聴いているはずなのですが特に熱心に聴いたものを上げて見ました。近年は年に数枚のCDを買うかどうかというくらいなので新しい音楽についてはほとんど知りません。（テレビ持ってないし、ラジオははいらないし・・・）重要なひとが案外ぽろっと抜けているかも知れませんが。。。こうやって書き出してみると工芸の好みと筋がとおっているのかなぁ？　と、自分でもちょっと疑問だったりしますね。（苦笑）好きなやきものとかも書き出して見れば面白いかも知れませんね。＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿唐突に好きな音楽を書き上げたのはアコースティックバンド「めい げつや」の（他のメンバーはめいげつ屋と書いていますが・・・）上田（ひでまん）さんがメンバー紹介をブログでされていて、ぼくのところでトラックバックで好きなミュージシャンを、と書かれていたのに応えてみたという訳です。

  2004.07.06

• 城田じゅんじさんのこと

  　子供の頃の自分がラジオではじめてバンジョーを聴いて、この楽器をやりたいと思ってからほどなくして城田さんの名前を知った。その頃京都では諸口あきら、きたむらけん、高石ともやらのカントリー、フォーク、ブルーグラスなどに関わりの深い人たちがラジオ番組のパーソナリティーを勤めていて、高石ともやのグループ「ザ・ナターシャーセブン」でバンジョーを弾いていた城田さんは10歳から15歳くらいまでの自分にとってのアイドルとなった。城田さんの教則レコードでバンジョーを練習しはじめたこともあり、音楽の出発点で大いに影響を受けた。ラジオの公開録音や円山音楽堂のコンサートにも何度も行き、音楽だけではなくそのステージから感じられる人柄にもひかれていたと想う。　高校生になる頃からより音楽的なものへと興味は移って彼らの演奏を聴くこともだんだんと無くなった。友人達が縁あって京都の城田さんの家を訪ねたという話を聞いたときも、少しは羨ましい気がしたものの連れて行って欲しいとも思わなかった。それでもナターシャーセブンを脱退してアメリカに行かれるという直前のコンサートには聴き納めという気もして出掛けたものだ。その時に彼のすごさをあらためて感じた事を思い出す。この手の音楽の演奏家としてすでに図抜けた存在であると想った。　それから何年か後テレビ番組の「徹子の部屋」に出て、京都でひどい腹痛で困っていたアメリカ人に親切にしたところ、彼がバンジョー弾きであるということにも感激したそのアメリカ人に是非にと招かれて訪ねてみたらものすごい大富豪であったとか、そんなほんとうかなぁと言うふうな話をしていたのを一度見た事がある。アメリカでの活躍の様子や、ときどきは日本にも帰ってきて演奏活動をしているということなども情報としては伝わっていたが、ほとんど聴くことは無かったものの心の内では変らず尊敬していた。　　あたらしいアルバムが出たとかで名前を聞くたびに元気で活躍されているな、と思っていたがすでに音楽よりも工芸のことに夢中になっていた自分はやはり積極的にそれを聴くこともなかった。その後、城田さんの音楽活動は不幸な出来事による何年かの中断の後にまた復帰して再開されていることを聞き知って、すでにすっかりネットの時代となっていたのでいくつかの動画は簡単に見つかって演奏を聴いてみた。今では熱心なファンとも言えない自分もやはりずっと気にかかっていたのだ。　工芸家としての自分は遡れば音楽を志した少年時代に始まるわけで、そういう意味では城田さんはやはり自分にとっては恩人であり、音楽家としての活動を再開されたことをひそかに応援しているのです。（この文章は2004年6月3日に書いたものですが後日大きく書き換えました）

  2004.06.03

• Bob Dylan MTV Unplugged

  　ディランのことは前にも書いたが今度はアンプラグドのライブDVDを買った。このライブが名演だという話は聞いてはいたのだが何しろ94年のことなので自分としてはたいした期待はしていなかったのだ。ところがこれがうわさどおりのたいした演奏で驚いた。声の表情も、以前より余程ニュアンスの豊かなものになっている気がした。　ディランの場合しばしばディランとバックバンドという感じがする。それはザ・バンドの時もハートブレーカーズの時も、グレートフル　デッドの時もそういう感じがしたのだが、このライブではなにより彼自身の弾くＤ28マーチンギターがバンドの音の重要な要素となっていて、珍しいくらいにバンドとディランが一体となっている感じがする。自作かトラッドなのか知らないがそういう曲を演奏しているのはまるでビル・モンローとブルーグラスボーイズみたいでさえあった。　前の時にローリング・サンダー・レビューの頃を全盛期と書いたが、これはそう簡単ではないぞという気がした。ディランはもう40年も唄い続けている唄にさえ何時も新しい表情を加えてくる。リズムやメロディーのアレンジがしばしば大胆に改変されるばかりでなく、その音の中をたゆたうようにあるいは切り裂くように、例えばジャズやブルーグラスの演奏みたいにそのときどきに感じたままにアドリブで唄っているのかも知れない。そういう表現は繰り返しが繰り返しではなくなってくる。何時も新しい今なのである。なんだこれっていうようなこともままあるが、だからこそ長期的にも短期的にも非常に波のある演奏家なのかも知れない。事実アルバム毎の出来不出来の差は相当ある様に思うが、これを断言出来るほど系統立てて時間軸を追っては聴いていないのだ。　ともかくこのunpulggedの演奏は素晴らしいものだった。今までＣＤを何度も買おうと思いながら買わなかったのは残念な気がするが、DVDのほうは素晴らしい4曲ものボーナストラックが入っているのでこれはこれでよかったという気もする。DVDを買ったのはまだ2枚目なのだが、部屋の灯を落として12inchのiBookをステレオに繋いで大きな音で聴いているともっと大きな画面で観たいという欲が出てきて困る。http://www.bobdylan.com/index.html

  2004.05.08

• 音楽を書く

  　例えばひとつの器の美しさを紹介しようと写真を撮る場合、背景はどういう台にのせればよいか、何かを盛りつけたほうがよいかどうか、またスプーンやお箸を合わせたほうがよいのかどうか、どちらからどういう色の光をあてればいいか、そしてどういう角度で器のどの部分を写すかなどなどその美しさがちゃんと見えてこそそういう判断がつくのだと想うのです。美しさは見た瞬間に捕らえられるものですが、それを味わうことによって見方がはっきりとしていれば見せ方もおのずとわかるということです。これは写真でなくても文章であらわす時でも同じことなのだと想います。　この間からGRATEFUL DAWG・一青窈・J.Hartfordなどの音楽の話を書きながら感じているのですが、なんだか曖昧模糊として核心に迫れずにそのまわりをうろうろとしているような気がしてひどくじれったいのです。これは非常に感動して激しく揺さぶられながらもきちんとそのよさをほんとうには掴みきれていないのだろうという気がするのです。眼で見るものであれ耳で聴くものであれもう少し手の中に確かにあるというふうな感じがするだけの確かさで捕まえることが出来たならもっと的確に書けるのだろうと想います。そう言えば自分の音感が音楽家がそうであるようには融けあう和音の積み重なりを目で見るようには捕らえきれないことと似ている気がします。

  2004.04.11

• ジョン・ハートフォードを聴く

  　配達を兼ねて京都へ。桜はかなり葉っぱの緑が目立ちそろそろお終いのようです。ぼくはこういうの好きですけれど。いい季節、この観光都市には車が溢れ街中がのろのろ渋滞です。　夜は数年前に亡くなったJohn Hartfordさんの『AEREO-PLAIN』と『Mark Twang』のLP盤を聴く。ハートフォードさんの経歴もよくは知らないがグレン・キャンベルの「ジェントル　オン　マイ　マインド」の作者として知られている、などとよく紹介されているので知っているひとには「ああなる程」ということになるのでしょうがグレン・キャンベルも彼のその唄も知らない自分にはどうもピンとこないのです。ただしこの唄のハートフォードさん自演のものは持っているアルバムに入っていたので聴いているのですが。　ハートフォードさんは６０年代の終わりにThe Byrdsのアルバムにも参加しているので、名うてのスタジオミュージシャンだったのではないでしょうか。キャンベルはポップカントリーの歌手で彼のバンドに居たとのことですからそういう経歴のなかで本来アメリカのブルーグラスやもっと古いスタイルの音楽畑出身のハートフォードさんがロックやポップスを身に付けたのではないでしょうか。　ハートフォードさんは古い音楽を愛し演奏しながらも当時最も先鋭的なロックとブルーグラスの融合を少しも無理なく成し遂げました。これが名盤の誉れ高い『AEREO-PLAIN』です。このアルバム録音当時の１９７１の地点でロックはすでにBob DylanやByrdsがカントリーに接近しカントリーロックと呼ばれる音楽を完成させていましたし、ブルーグラスとカントリーも古くは共通の基盤を持った音楽であることからロックとブルーグラスも近付く機縁はあったのでしょうがこれほど無理なくブルーグラスがロックしている演奏というのは他になかったのではないでしょうか。本来ブルーグラスというのはかなりきっちりとした様式を持つ音楽なのですが、こういう中でハートフォードさんの存在はいかにも異色の感じがします。　先日書いたDavid Grisman達も６０年代の終わりにはやはりブルーグラスミュージシャンでありながらもロックに片足を突っ込んでいましたし、New Grass Revivalが１９７３のデビューアルバムでロックとブルーグラスをひとつにしたかのように一般的には言われていますが、自分はむしろ『AEREO-PLAIN』がその先駆けであると思っています。これは大いに重要なことでブルーグラスという古い音楽が（そこに普遍性があるというのは一面真実だと思いますが）「今」の音楽になりえたということで、この点で音楽史的にも大切なアルバムだと想っています。そういう面を抜きにしても素敵な音楽だというそのことで高校生くらいの自分を夢中にさせたアルバムなのです。バンジョーのリズムの取り方や、音色、装飾音の省き方などもいかにも独創的で大いに刺激を受けました。今でもぼくのバンジョーはかなり太い弦を緩く張って普通よりも５度低く調弦されているのですが（そういうことをしているひとはほとんどいないと思うのです）これもハートフォードさんを聴かなければ思い付かなかった気がします。　『Mark Twang』のほうはさらに数年後のひとりでタップを踏み、バンジョーやフィドルを弾きながら唄っているアルバムでエンターテーナーとしてのハートフォードさんの暖かさが伝わってくるこれも素敵なアルバムなのです。こちらのほうがより純粋に彼の音楽の本質が現われているような気もします。　ハートフォードさんのアルバムは他にもいろいろと持っているのですがこの二枚が今でも一番好きなアルバムです。彼が亡くなったということを知ってからこの二枚を聴くのは初めてでした。ここを読んでくれるひとに限らなくても日本ではほとんど大多数のひとはジョン・ハートフォードの名前を御存知ないんじゃないかと想います。彼のアルバムも専門的な店で輸入盤を探さなければ見つからないことでしょうが、なんとなくこの名前をこころの隅に留めておいて機会があればお聴き下さい。http://www.johnhartford.com/

  2004.04.10

• ハナミズキ

  　一青窈の名前と歌声を初めて聴いたのはほとんどのひとと同じで去年の「もらい泣き」です。テレビも持ってないしラジオもめったに聴かない自分にとってはヒット曲であってもあまり新しい音楽との出会いの機会は多くないのですが、この歌手の聞き慣れない名前と共に印象的なメロディーと声がこころに残ったのです。しかしこういういかにも情感たっぷりなものは好きな反面ちょっと苦手で敬遠したいというような気持ちもありそのままにしていたのです。　ところが今年になって偶然聴いた「ハナミズキ」が同じような気配の曲ではありながら、サビの部分が思い切って狭い音域に押し込められたフリジアンスケールみたいな細く長く唄い伸ばされる不思議なメロディーが心地よく、耳に付いて折々に思い出し、それでとうとうこの曲を収録した新しいアルバム『一青想』を買ってみました。　自分が１０歳くらいの頃、当時アメリカのマイナーレーベルの輸入盤が２０００円くらいだったと思いますがこの頃から２０歳過ぎ頃に音楽から工芸に興味が移ってきた頃までは使えるお金の大部分はＬＰレコードや後になってからはＣＤを買っていました。今でも実家にはＬＰレコードが、そして生畑にはＣＤがずらっと並べてそれぞれ２メートル以上あります。中学生くらいまでは買っていたのは主にブルーグラスで、だんだんとギター音楽、ヴァイオリン音楽に関心がひろがりある種のジャズ、クラシック、ロックなども増えました。アメリカの民謡を沢山聴いていたので日本の音楽も民謡などはおおいに関心があり、沖縄音楽もブームよりも余程早くまだあまり手に入らなかった頃から注目していたのですがポップス系はRCサクセションなどごく一部を除いてほとんど聴かないままに過ごしました。今では年間にCD１０枚ほども買うだろうかどうかというくらいなのですがこの手のものを熱心に聴くようになったのは椎名林檎、元ちとせくらいからなのでまだ近年のことなのです。これまでとことんマイナーなジャンルを聴き続け、また工芸のほうでもお茶道具やいわゆる作家的な美術工芸には背を向けてすり鉢や水甕などごく庶民的な普通の暮らしの中にあった道具にもっぱら向きあってきたのですから、こういう売れ線の音楽を聴いている自分というのはちょっと思い掛けないことです。ル・クルーゼやケメックスなどのロングセラーをよろこんでいる自分がこういう自分に対応しているのでしょうか。　話がずいぶんそれてしまいました。一青窈についてはこの２曲しか知らず、またそれさえもちゃんと通して聴いたことがなかったくらいでどういうひとであるかなどは知らないのですが、アルバム一枚を聴いてみればその唄い回しはよほど洋楽に馴染んだひとなのだという気がして、これは意外なことでした。もっと東洋の音を出してくるのかと想っていたのですが、楽曲はそういう感じがあるものの唄自体はかなりストレートなポップスです。　たとえば元ちとせの二枚目のアルバム『ノマド・ソウル』などはプロデューサーがこの魅力的な素材の可能性を試したかったのではないかという気がするくらいいろんなジャンルに挑戦していますが、ある意味意外なほどに不器用で何処までも妙な違和感が付いてまわり彼女がジャズやロックにすっと入ることが決してないのが聴いて取れます。これは二人の優劣の問題ではなく音楽的な背景の問題なのだと想うのです

  2004.04.09

• GRATEFUL DAWG

  　60年代にサイケデリックロックの中心人物だったグレートフル　デッドのリーダーであるジェリー　ガルシア。アメリカのその世代にとっては大変なカリスマだということだが、若い頃の彼がブルーグラスに夢中だったというのはよく知られている。しかし彼のことはぼくは余り知らない。　ブルーグラスという田舎の人たちによる田舎の聴衆のための音楽がやがてフォークブームによる再評価を得て都会の若い聴衆を獲得してゆく過程において当然のように他の都会的な音楽との接触が在り刺激的な新しいブルーグラスが生まれてくる訳だが、こういう都市の新しいブルーグラスの演奏家の中にジェリー　ガルシアも居り、またリチャード　グリーンやクラレンス　ホワイトなどの大変な才能が生まれてきたが一歩引いたように見えながらも実のところ彼らの中での中心人物でその時代のブルーグラスとロックの掛け橋でもあり75年頃にデイヴィッド　グリスマン　クインテットを結成して独自のDAWGミュージックと呼ばれるアコースティックフュージョンを創造したマンドリン奏者のデイヴィッド　グリスマン。ぼく自身はグリスマンの音楽を1981年頃から過去の録音に遡って熱心に聴いている。　ガルシアとグリスマンの学生時分からの交友は有名な事実だが、ある時期からそれぞれ別の道を歩みはじめた二人が今は亡きガルシアの晩年に再び再会を果たし沢山の録音を残した。この二人の貴重な映像記録がソニー・ピクチャーズ　エンタテイメントから発売されたDVD(TSDD-32945)「グレイトフル・ドーグ」である。これは二人の男の感動的な友情の記録であり、またベテランミュージシャンがお互いにインスパイアされながら音楽を作り上げてゆく過程のドキュメンタリーでもある。稀代の音楽プロデューサーでも在るグリスマンがガルシアの可能性を引き出して見せた一連のコラボレーションではあるが、結果としてはグリスマンもガルシアを得て強い緊張感をしばしば伴いがちだった彼自身の音楽をよりリラックスしたかたちで完成させることに成功しているように見える。　この素敵なDVDを借りて観ながら人と人との出会いというものを不思議な気持ちで想う。ぼく自身にも自分を自分にしたいくつもの出会いがある訳だ。想えば浮かぶいくつもの顔。ありがたい財産だ。さてこの先自分がどうなるのか分からないが、人は誰も過去の上に咲いている花。どういう花を咲かせるのか、あるいは咲かせないのか。楽しみなことだ。さあ皆さま自分の生を楽しみましょう。

  2004.03.30

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