ルオーの版画を観に行く-東京国際版画美術館
「ルオーとシャガール-めくるめく挿絵本の世界へ-」と銘打った企画展が町田駅前に近い東京国際版画美術館にて開催中とのことで行ってみることにしました。二人の境遇は全く異なりますが、共に心象風景を表現していると言う企画だった様です。ファンタジックなシャガールにはそれ程の共感を覚えませんが、黒い太線を駆使して強烈なキリスト像で知られるルオーには何か心を揺さぶるものがあり、観賞したい思いが常々ありました。「ミセレーレ(哀れみ給え)」からモノクロ2点、「流れる星のサーカス」から多少刷り10点、展示されていました。「黒いピエロ(Black Pierrot)」「眠れ、良い子よ(Sleep, My Love)」多色とは言え、3~4色で抑えていますが、太い黒線と相俟って、却って強烈な色彩感覚が出ているのは不思議です!グロテスクな色使いで荒々しいタッチが特徴で、またキリスト教を主題とした作風が多い。信仰心が篤かったルオーは、絵画の中でよく売春婦やピエロや道化者たちをネガティブに表現し、一方でキリストの肖像画やその他の精神的象徴を崇拝するように描いた。ルオーの激しい色のコントラストと感情的な色の使い方はゴッホからの影響が強い。過激でグロテスクな作風はのちに表現主義の作家に多大な影響を与えた。1947年には、ルオーは300点以上の未完成作を画商ヴォラールのもとから取り戻し、ボイラーの火に燃やしたと言う逸話もあり、彼の芸術家としての良心の表明だった。敬虔なキリスト教カトリック教徒であったルオーは1958年、パリで86年の生涯を終え、国葬を賜った。