どんな喜びでも天界である限り、五衰を受くといい、その満足は必ず滅びます。
身売り交渉をしているとうわさがあった、 アメリカ大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが自主再建を断念し、 連邦破産法の適用を裁判所に申請し、経営破たんしました。 米証券3位のメリルリンチもバンク・オブ・アメリカに救済合併されると。これらの初めの頃のうわさを聞いた時に思い浮かんでいたのは、 『旺ずる極みは衰』(オウズルキワミハスイ)という運命学の言葉です。平家物語の『盛者必衰』の意味と通じるところはありますが、 栄える者は必ず滅びる、という盛と衰の2元的対立論ではなく、 運命学の『 盛 』と『 衰 』の間には、12の段階があります。その劇的なダイナミズムは、 旺じる極みに到達して天界の満足を得たその刹那に衰への転落です。もっと恐ろしい東洋の洞察力は、 具体的な転落の現象をこの世で意識できる(見える)ようになるまでの、 そのずっと前から、 旺じる後は衰亡するしかないと、 栄える姿のなかに、滅びのリズムがすでに始まっているという タイムラグを捉えていることです。 経済通でもない私が、このニュースに心を止めたのは、 此処10年ほどの間の二つの経験があります。 その経験の一つが心に焼き付いています。近くの不動産屋の店先で見た広告のオーナーチェンジ物件を都内に 買った時、それは、過去の不動産取引きの経験からは想像もできな い、ちょっとおかしな商習慣が初めから見え隠れしていました。現地で、仲介業者 が、 『決済時にS銀行本店に行ってもらわないとだめです。』 えっ?申込金を急がされ、決済日も月末までにと急がされたにもかかわらず、 決済は3ヶ月も売主のA社から連絡もなく延期されて、(ほったらかし) 此方からの問い合わせに理由は3か月分の賃料を売り上げに計上 する為に、決算まで待て!と。( えっ??) 命令に近い対応でした。 3ヶ月後 『 AはBへ売り、BはCへ売り、Cからそちらへの移転登記をす るので3件全部の移転登記を同日にこちらの司法書士が行う。 そちらの書類を送れ 』 と、 又命令調の連絡が仲介業者からありました。( えっ???) これって日本の不動産取引???? もうこの時には、すべてが腑に落ちていました。 A,B,Cの会社は自前のお金を使わないで、こちらの決済資金を使っ て同日に資金をスルーさせて、あたかもAからBへ、BからCへ代金 の支払いががあったようにして、売り上げの為だけに即日転売の 登記をしようという魂胆なのだと。すばらしい寝技! と言おうか、自己資金を一円も使わないで、 親会社の本社に少しでも大きい売り上げを報告したかったのか、 その根性にはあきれてしまいます。 此方も自前の司法書士を立てて、Cへの所有権の移転登記が確認 できた後でないと決済はできない、と突っぱねて、無事すべてを終え る事ができました。こちらで相談した業界関係者は皆、口を揃えて 『こういう決済の仕方はありえ ない。』 又、『 三者の同時決済が業界内で問題になっている。』 とおっしゃ っていました。実はA社もB社もC社も、破綻した日本の銀行を競争入札で買い取った アメリカの投資資本の系列の子会社、孫会社だったのです。商道徳もなにもない、 メイクマネーだけのために此の地の業界の常識を無視 し、 人間の心を一切気に掛けないやり方、 恥を忘れた? 異国の恥は かき捨て? ファンドのビジネスをする本性を見た思いがしました。こんなやり方でビジネスをやれば、必ずこの会社は滅びる。 リーマンやメリルではないですが、物質としての価値だけしか通財に みようとしない企業が実業の宝を積み重ねるはずがないと、 いずれ内部から壊れると直感した私の心の中の " しこり " が溶けた のが このニュースだったのです。 キリスト教文明は、天界までの教えです。天界が"あがり"の双六です。 彼らが目指すは、天国です。 東洋の仏教の天界は複数あり、第一、第二とあって、第六番目、 第六欲天(ダイロクヨクテン)には他化自在天(タケジザイテン)という 所があり、そこには第六天の魔王という周りを思うがまま支配し、 自在に動かして喜ぶという魔王がいます。 支配欲、権力欲の満足です。しかし、どんな喜びでも、天界である限りは五衰を受く、といい、 五種類の衰えでその満足は必ず滅びます。 つかの間の喜び、むなしい無常の喜びです。 東洋における仏教の教えにおいて,天界の位置付けは、 " あがり " をめざす双六の途中の通過点の一つにしか過ぎません。