チョコレートの行方
チョコレートの行方昨日久々に大学時代の友人と食事をした。彼女の旦那様が商社マンで、今度はNYにトップとして転勤になるのだ。しばらく会えないので、食事をした。彼女は大学一の美人で、大学3年間一緒に住んでいた。その間、今思い出しても赤面するような恋や、大学の思い出、話し出したらきりがない。ひとつだけ今思い出しても忘れられない事件がある。シナリオ調で書いてみる○北烏山ホワイトハウス2階玄関前(2月14日夕方) アスタカ(19)と佐藤一郎(20)がドアの前で立ち尽くしいる佐藤「鍵ないの」アスタカ「だって、美香が家にいるって」佐藤「で、どうするの?」アスタカ「どうしよう」 道路側の窓が開いているのを見つける。アスタカ「ねぇ、一郎君。あそこの窓が開いてるから、窓から入って玄関の鍵開け てくれる?」佐藤「えっ!」アスタカ「この屋根つたって、窓まで行けばいいじゃん」佐藤「分かったよ」 佐藤が屋根に飛び乗ってかわらの上を歩く。アスタカ「ねぇ、大丈夫?」佐藤「落ちて死んだらみんなによろしく」 佐藤がまさに窓に足をかけようとした瞬間、怒鳴り声が聞こえる。声「おい!何やってるんだ」 佐藤の足が止まる。美香(19)と久保隆(20)が立っている。久保「おい、お前、何やってるんだ。降りて来い!」佐藤「上等じゃねぇーか。今行くから待ってろ」 アスタカ、あわてて階段を下りる。アスタカ「違う、違うんです」 美香と目が合うアスタカ。4人で笑い転げる。○甲州街道(夜) 佐藤の一歩後ろを歩くアスタカ、後ろ手にチョコレートを隠している。佐藤「面白かったね」アスタカ「佐藤さん、迫力あったよ。あんな一面もあったんだね」佐藤「へっへ」 駅が近づいてくる。アスタカ「佐藤さん。。。」佐藤「何?」アスタカ「。。。」 アスタカ、チョコレートを後ろ手で握り締める。佐藤「何だよ」アスタカ「気をつけて帰ってね」佐藤「。。。」 アスタカ、ホームに消える佐藤を見送る。○ホワイトハウス中(夜) アスタカと美香がコーヒーを飲んでいる。美香「それでチョコレート渡さなかったの?」アスタカ「うん」美香「佐藤さん、期待してたと思うよ。どうして?」アスタカ「もしかしたら気の迷いかもしれないし」美香「はぁ。。。」アスタカ「だってどうしても顔が駄目」美香「顔なんて、成功すればそれなりの顔になってくるんだよ」アスタカ「でもねぇ」 殻のマグカップを覗くアスタカ。昔の私は馬鹿だった。(今でもそうだが)佐藤(仮名)くんは今考えるととってもいい男だったあれから佐藤くんは誰でも知っている大手企業に就職して病院やマンションをいくつも持っているという女性と逆玉結婚した。あの時チョコレート渡していたらどうなったんだろう。ふとそう思うことがある。今だったら分かる。佐藤クンはいい男だった。人生なんてそんなものだと思う。きっと佐藤クンは今はっとってもいい顔をしていると思う。