クマモト
クマモト今誰に告げたところで この想いはむなしく響くだけもう誰ともわかちあえない あの不思議な夏のこと過ぎ去った日だと言うのか 遠い昔話だと言うのか君の眼は今何を見てるのか 二年ってそんなに長い月日なのかクマモト 電話口で君の声がするクマモト 夕空を鳥がとぶ日々独りでいることの淋しさ 日々独りでいることの嬉しさ清水のバイパス煉瓦造りの喫茶店 モーニングにはいつもグレープフルーツ夜は気ままに夜空を見上げ 星のきらめきに心をはせた気にもせず時にもたれて 手の届かない君を想ってたクマモト 燃える緑の道クマモト 槍(やり)のような雨も降るせいせい高校が朝刊を賑わし 茶店のマスターに声をかけられる適当に相槌をうちながら 一日の行方を頭でさぐる幸せってことを考えたりした その向こうで君の影がちらりと揺れた哀しいかな欲望ってやつは 僕の後ろをいつもついてきたクマモト 忘れ得ぬ夏の日クマモト あの暑い夜の夢海が見たいと思ったよ 君と海へ行きたいと思ったよ縁側に腰かけ草露に ふるさとの海を見つけたよ誰にも言えない言葉や心を 寝床に隠れて並べてみたよ月日の流れや過ぎた人たちを 仲良く並べてみたよクマモト 後にも先にもクマモト あの日は見つからないクマモト 狂おしくせつないクマモト あの夏・・・・・1981・8.9作品コックン解説:1979年の夏、3ヶ月間の短い期間熊本市内を中心に営業の修行をしていた。「セールスマン」という仕事にぶつかっていったものの、熊本の暑い夏は容赦なく僕の軟弱な心を焼き尽くしていた。そんな中で心のささえがビンちゃんだった。ビンちゃんについては「福岡ラブストーリー」を読んでください。