『サッカーと独裁者 アフリカ13カ国の「紛争地帯」を行く』
大型連休開始。今年は旅行などの予定はなし。カレンダー通りゆっくり休む。 今日はアフリカのサッカーについての新刊書 『サッカーと独裁者 アフリカ13カ国の「紛争地帯」を行く』を紹介したい。 著者のスティーブ・ブルームフィールドは英「インディペンデント」紙 の元ケニア特派員。現在もナイロビに拠点を置いて取材活動をしている。アフリカのサッカー本と云って、欧州リーグで活躍するスター選手の話はほとんどない。多くはサッカーを行うことが政治的、社会的に困難な状況を抱える国におけるサッカーの話だ。むしろ、サッカーを通じてみた紛争国・破綻国のルポと言った方が正確である。 アフリカの13ヶ国の「紛争国」を並べると壮観だ。エジプト、スーダン、チャド、ソマリア、ケニア、ルワンダ、コンゴ民、ナイジェリア、コートジボワール、シェラレオーネ、リベリア、ジンバブエ、南アフリカ。エジプトやジンバブエではタイトルのとおり、独裁者がサッカーを政治的に利用する様子が描かれ、ソマリアではサッカーの練習をすることそのものがテロの対象となり、身の危険との引き換えである厳しい状況が淡々と説明されている。 一方でコートジボワールの章では南北分断の状況の中でナショナルチームの活躍が国の再統一に大きく寄与したことに元気づけられ、また、シェラレオーネでは内戦によって障害を受けた若者がサッカーに希望を見出して行く様子には喝采を送りたくなる。 原題は"Africa United: How Football Explains Africa"。『アフリカ連合、サッカーで読み解くアフリカ』。訳の日本語も読みやすい。あえて難点を云えば、タイトルの訳。本書は紛争国や破綻国をサッカーの視点で見たルポであり、独裁者の話だけではない。、「サッカーと独裁者」は意訳のしすぎ。それでも、アフリカの一断面をとらえた優れたルポであり、一読をお勧めする。