『真田丸』 最終回 感想(3)~真田の名を挙げた一隻の船は黄泉の国に、そして真田の家を残した一隻は新しい時代に、それぞれの『出航(たびだち)』
NHK大河ドラマ 『真田丸』 。最終回感想の最後で、前回の日記の続きになります。戦場の真田左衛門佐幸村(堺雅人さん)たちが劣勢の中で必死に戦っていたとき、豊臣秀頼(中川大志さん)はまだ城の中にいました。それが秀頼は豊臣方の負けを覚悟して、最期は武士らしく戦場で死にたいと、ようやく討って出る決意をしました。しかし秀頼が部屋を出ようとしたときに母の御上様(茶々:竹内結子さん)が立ちはだかり、「母に生き延びるための策がある」と秀頼を引き留めます。「望みを捨てなかった者のみ、道は開けるのです。」この言葉を茶々に伝えた幸村は、皆にとって良い望みのために、秀頼に早く戦場に出て欲しかったのです。なのに、どこまでも秀頼の安全と安泰しか考えない母とその乳母の大蔵卿局に、さんざん邪魔されました。まあ同時に、父が不在で権力者の女二人に守られて育ち、美しい世界しか知らない秀頼も、口では出馬すると言いながらも戦場に出ることの恐れがあったのでしょうが。第二次上田合戦で真田昌幸に手痛い目に遭い、父の家康に厳しくされてきた秀忠とは違って。そのころきり(長澤まさみさん)は秀頼の妻の千姫(永野芽郁さん)を徳川陣に送り届けるべく、火の手があがった大阪城から外に連れ出していました。そしていよいよ大阪城内に徳川方の兵が侵入してきました。武装して城内に残った高梨内記(中原丈雄さん)は、槍で徳川方の兵を次々と突き伏せていきます。しかしどうにも多勢に無勢。自分が傳役として育てた若(真田大助:浦上晟周さん)を逃がした後は、敵の手にかかって討ち死にでした。最期の薄れゆく意識の中で昌幸の位牌を手に持ち、「殿・・、きり・・」とつぶやいて。(内記の戦いっぷりがカッコ良くて、感動で泣けました)そして戦場で幸村の盾となって銃弾を受けた堀田作兵衛(藤本隆宏さん)が、瀕死の状態で城に戻ってきました。中庭に作った我が畑までたどり着き、昔と変わらず大事な作物を奪う者、荒らす者を許さず、気迫で敵を倒しながら最期は畑の上で絶命しました。自分が育てたすえと、妹の梅の名をつぶやいて。そのころきりは千姫を連れて徳川の陣に急いでいました。抜け道からふと戦場を見たとき、戦っている兵士たちの間をぬって馬で一騎だけ駆け抜けていく幸村(源次郎)の姿がありました。「源次郎さま・・」戦が始まったらもう会えないと思った幸村の姿を、きりは遠くからただ見送りました。徳川家康(内野聖陽さん)を探して戦場を駆け廻る幸村は、ようやく家康の姿をとらえました。床几に腰かけて一休みしている家康に近づいた幸村は十字槍を地面に突き刺し、1挺の銃でまず威嚇射撃をしました。幸村はそれからさらに家康に近づき、馬上からもう1挺の銃を構え、銃口を家康に向けます。しかし家康は自分を護る家臣たちを下がらせ、立ち上がって幸村と対峙します。「わしを殺したところで、何も変わらん。 徳川の世は、すでに盤石! 戦で雌雄を決する世は、終わった。 おぬしのような、戦でしか己の生きた証しを示せぬような 手合いは、生きていくところなど、どこにもないわぁ!」家康の言葉に対して幸村は迷いもなく返します。「そのようなことは百も承知ぃ! されど、私はお前を討ち果たさねばならぬのだ。 我が父のため、我が友のため、 先に死んでいった、愛する者たちのために!」幸村が銃を構えた次の瞬間、銃声が戦場に響きます。銃を地面に落とす幸村。撃ったのは父・家康を救援にきた秀忠の隊で、幸村は背後から腕を撃たれていたのでした。周りを秀忠勢に取り囲まれて多勢を相手にしながら、佐助(藤井隆さん)とともにただ戦う幸村です。その様子を遠くから「見事な戦いぶりよ。」と、伊達政宗(長谷川朝晴さん)と上杉景勝(遠藤憲一さん)と重臣二人が見届けていました。しかしこれで幸村は終わりだと、誰もが悟ります。「源次郎、さらばじゃ。」名残惜しそうにいつまでも幸村の姿を追った景勝は、涙とともに届かぬ言葉を送りました。(BGMと御屋形さま(景勝)の涙で、感動のもらい泣きでした)徳川勢の猛攻をかろうじて抜けた幸村と佐助は、人けのない神社で力尽きて座り込んでいました。そこへやってきた徳川方の兵2人を、父・昌幸より伝授の戦法で最後の力をふりしぼって倒します。でも、もうこれ以上戦えないと悟った幸村は刀を佐助に渡し、自分の介錯を頼みます。夕暮れの空を見上げたときに、残った者たちがそれぞれに自分らしく生きている姿が目に浮かんだのでしょうか。幸村は佐助に「長い間、よく仕えてくれた」と礼を言い、邪魔が入らぬうちに自刃して果てました。(享年49)さてそのころ真田伊豆守信之(大泉洋さん)は、大坂よりの帰路で思いがけず一緒になった本多正信(近藤正臣さん)とともに江戸に向かっていました。正信の領地の玉縄(相模)に入ったとき、領民から慕われている正信の姿を目にします。そんな正信は信之にさりげなく伝えます。「戦と同じ。人の心を読むのが肝要で。 領民には無理をさせず、というて、楽もさせず、 年貢だけはきっちりと取る。 その上で、領主たるものは決して贅沢をしてはならん。」「国造りの根本を教わりました。」信之は素直に礼を言います。しかしそのとき、大坂から早馬で火急の知らせが。正信が「御免」と場を外したとき、信之の巾着がチャリンと鳴りました。巾着から出した六文銭を見たときに、信之は弟・源次郎があの世に旅立ったことを、静かに悟ったのでした。 『真田丸』 ・ 完最終回はさぞや感動で涙腺決壊かと思ったら、ちょっと物足りないぐらいの意外に軽い感じでした。きりや佐助のように、あの人はどうなったのか?と思う人もいて。でも必要以上にお涙頂戴にならず、感動の涙の中に笑いがあったのが三谷さんの『真田丸』の魅力だったと思います。この画像は、大阪市の玉造の心眼寺にある幸村の碑です。