マリー・ローランサン
オリーブ 日本でも人気の高いマリー・ローランサンの絵は、柔らかい色調の女性ばかりが描かれていて、男性は登場しない。この作風は、彼女自身の恋愛体験が反映されているのではないかと言われている。ローランサンの最初の恋人は、詩人のギョーム・アポリネールで、彼はピカソから紹介された。ところが、急に彼と別れたローランサンは、ドイツ人の画家ヴェッツェン男爵と電撃的に結婚した。しかし男爵との結婚生活もうまくいかず、8年後に離婚した。男爵はアル中で、財産を失った上、一族は没落した。もう結婚はこりごりという心境で、女友達のニコル・グルーを愛の対象にした。グルーとは結婚前からの知り合いで、時々喧嘩をしながらも、最も親しい友人であり、友情は生涯続いた。シュザンヌ・モローという元々女中だった女性を養女にし、死ぬまで生活をともにした。男性に懲りて、女性との友情を温めて暮らしたローランサンであれば、女性ばかりで男性不在の絵を描くのも不思議ではない。彼女の自伝的エッセイである「夜の手帳」には、男性を牛になぞらえて、「牛はもうたくさん、私は気の合う女性たちと暮らします」という一文がある。