バイオリン奏者・神尾 真由子
チャイコフスキー国際コンコールのバイオリン部門で優勝「本当にうれしい。このコンクールに自分が来るなんて思っていなかった」若手演奏家の登竜門として知られるコンクール本選を締めくくったのはシベリウスのバイオリン協奏曲でした。「暗くて寒い感じが好き」だという」。口数は少ないが、演奏は雄弁で力強かったそうです。シベリウスに加え、好きな作曲家として名を挙げたのが、まず重くて暗いといわれるショスタコービッチ、次にベートーベン。人間の内面を表現する音楽への志向性が伺える。10歳のときにシャルル・デュトワ氏指揮の交響楽団と共演したデビューは衝撃的でした。「今までに見たこともない才能。夢中になった」そうです小学6年の時に指導を始めたという桐朋学園大の原田幸一郎教授は、飲み込みの早さと抜群の表現力に舌を巻いたそうです。「曲想を指示しても嫌いだと思ったら絶対にやらない。自分のアイデアを子供の頃から持っていた」。その強い個性が、国際評価につながった。数年前からスイスで、若手音楽家育成で名高いザハール・ブロン師に指示しているが、「自分の演奏スタイルは以前と変わらない」と言い切る。このコンクールで審査員も務めた同士の評は「気難しく、思慮深い」。同時に「最高の門下生である」と語られた。モスクは滞在中は、名器ストラディバリを担いで地下鉄を移動していた。「6年も使っていると、高いものを背負っている気がしなくなる」といってのける。大阪府出身の21歳、これからが楽しみである。