光紡ぐ肌のルノワール展
初夏の京都、ルノワールの絵を観に行ってきました。ほんとうは、5月8日まで開催していたモネ展と両方見たかったのですが、どうしても日程が合わず、モネ展は断念。残念。モネの絵はどれも好きなのですが、特に「睡蓮」が大好きで、これまでなんども見てきました。京都に来てくれていたのに、ほんとうに残念。もちろんルノワールの絵も好きなのですが、今まではあの肉感的な女性を描いた「浴女」シリーズが少々苦手でした。これでもかと目の前に迫ってくる女性の肉体が、どうしても性的なモノに見えてしまって。映画「ルノワール 陽だまりの裸婦」で見たミューズたちを描くルノワールは、ただ美しい光を絵筆で表現しただけだと思いつつ、実際にルノワールの絵を観た自分がどう感じるのか、少々不安でした。それが、ほんとうに目からうろこが落ちた状態でした。これはひとえにキュレーターの方の努力の結果ですね。美術館に展示しているルノワールについての解説も、個々の絵画についている解説文も、かなりストーリー性を持たせていたと思います。美術史におけるルノワールの立ち位置やほかの画家との関係などではなく、人間ルノワールと彼を取り巻くミューズたち、そして息子ジャンとの関係がよくわかるように書かれています。それにより一枚一枚の絵が、ルノワールを取り巻く人々との相関図のように見えてきました。それぞれの絵にストーリーが感じられたのです。それにより、絵の中にいる女性がただのモデルではなく、実在した人間として存在すると実感しました。絵を描いた後にルノワールと交わしている会話だとか、笑い声、風になびくスカートの動きまで感じられました。「草原の女、リーズ・トレオ」を観たとき、そのことを強く感じました。なにより以前は苦手だった浴女の絵が、とても生き生きと美しく感じられたのです。まさに「光紡ぐ肌」という表現がぴったりです。光を受けて輝く人の肌。薄い皮膚の下には深紅の血液が流れていて、触れると温かい。そういった触覚にも訴えてくるようなルノワールの浴女の絵に、初めて魅力を感じました。これもひとえにキュレーターさんの努力の賜物ではないでしょうか。「風景の中の座る浴女 またはエウリディケ」が素晴らしかったです。(こちらでご覧になれます)他にも、「おもちゃで遊ぶ子ども、ガブリエルと画家の息子ジャン」も、表情がやわらかく素晴らしかったです。今回の展覧会で一番気に入った作品は、「桟敷席」です。これはボール紙にパステルで描かれた作品です。少しうつむきかけた少女の髪の輝きが美しく、その唇の艶やかさも魅惑的でした。ルノワールが描いたパステル画というのも、なかなか見ごたえがありました。絵葉書が欲しかったのですが、全体的に絵葉書の種類が少なく、「桟敷席」はありませんでした。残念。そのかわりというか、面白い絵本を買ってきました。おばあちゃんと一緒に美術館に行ったケイティが、絵の中に入ってしまうというお話です。さてどんな絵に入っていくのでしょうか?