訃報
今年は、東日本大震災があったからという訳でもないですが、喪中ハガキの枚数が多く来ているような気がします。震災関連での訃報ではないのですが、多いです。東日本大震災の他にも、和歌山や奈良の台風被害、タイの洪水、そして今フィリピンも台風の被害に遭っています。今年、地球はどうしたんでしょう。例年比べて多い喪中ハガキの中に、1枚差出人に心当たりがなかったものがありました。先月帰宅して郵便ポストを覗いて取りだした喪中ハガキ。差出人は知らない女性の名前。「誰だろう?」そう思いつつ、亡くなった人の名前を見て愕然としました。とても尊敬していた人の名前が、そこにありました。昨年倒れ、手術を受けた後、入院中だったことは、風の便りでなんとなく知っていました。状態がよくないらしいということも、知人から伝え聞いていました。でも、でも、こんなに突然いなくなってしまうとは思ってもいませんでした。毅然とした人で、でもにこやかで。いつも冗談を言って、周りを和やかにしていた人。とても博識で、いろんなことを教えてくれた人。たった1度、2人きりで食事をしたことがありました。あれも話そう、これも話そうと思って、いざ会ってみると、何から話せばいいのかわからず、ただじっと彼の言葉に耳を傾けていたっけ。もう2度と会えないとわかっていたら、もっともっと言いたいことがあったのに。郵便局のATMの列に並んでいる時、買い物かごを持って食材を物色している時、そんな日常のふとした瞬間に彼のことを思い出して、彼の体はもうこの世には存在しないと気が付き、愕然としてしまうんです。もっといっぱいいろんなことを聞きたかった。いつも私の作品をほめてくれるのに、私が自信作だと思っていた作品には「失敗作」の烙印を押されたっけ。それが最後…だったかもしれない。どこが悪いのか、どうすればいいのか、もっと質問すればよかった。でももう会えないんですね。お葬式にも行けなかったことが、とても悲しいのです。喪中ハガキが届いた時には、もう終わっていたから。最期のお別れも言えなかったんですね。こんな風に胸が痛くなる別れが、まだ何度私を待っているのだろう。