つばさよつばさ
【送料無料】つばさよつばさJAL機内誌に掲載された浅田次郎のエッセイを収録したもの。よって、題材は「旅」に限定されている。先に読んだ『カッシーノ!』と重じ旅について書いたものもあり、同じ旅を切り口を変えて読めばこんな風になるのかと面白い。『カッシーノ!』は賭博をやらない者にも読める書にはなっているけれど、それでも世界のカジノを紹介するという目的をもって書かれている以上、賭け事に興味がない身には分かりづらいところもあったのに対し、同じ旅について書かれていても、この『つばさよつばさ』の方は純粋に面白い。私がイメージする浅田次郎の文章にも近いのだろう、読んでいてとても気持ちが良かった。でも、それ以上に羨ましかった。私は家庭をもって以来、旅らしい旅をしていない。……と言えば、家族から顰蹙を買うだろうが、私の実感としてはそうだ。結婚以来、家族旅行をしなかった年は今年一年限りだし、なんだかんだと近場なりに出かけてはいるのだけれど、それは私の中で「家族旅行」ではあっても「旅」ではない。旅は気ままに、非日常を味わうものだと思う。夫や子どもという「日常」を引っ提げて旅行に出たところで、旅とは言い難い。独身時代、一人で気ままな旅を幾度かしたはずだか、それはもう遠い過去になっていて、本当にあったことなのかどうかも、記憶に危うい。いずれ子どもが大きくなれば、また気ままな旅をする機会も得よう。その頃には、子どもがうるさいくらいに纏わりつく今の生活を懐かしくも感じるだろう。でも、今は気ままな旅をしていた過去の自分も、それを実行できる身分にある浅田次郎も、いつか実行できるかもしれない未来の自分も、遠く、羨ましい存在だ。末子が午睡から起きて来たので、メモを終わる。