仕事人としての 分岐点
企業組織の中で、サラリーマンとして 仕事をする者には、大きく分けて、三つの 分岐点が あるように思う。---一つめの分岐点は、新社会人となった日に 始まり、それなりの 専門性を身につけた時までが、猶予期間だ。どんな分野でも、数年は 取り組んでみないと、専門性は、身に付かないと思う。だから、それよりも前に 辞めたり、方針変更をする人は、新しい道の中に、よほど 強い思い・決意 が 無ければ、その後 ずっと、何かから 逃げることになりかねない。話を 戻すと、一つめの分岐点では、初歩の専門性を身につけた後で、その先を 選ぶことになる。例えば、専門性を さらに 伸ばす 可能性を 選ぶこともできる。または、専門性の 幹を複数にする方法を 選択することも、あるいは、専門性を 乗り換えることも、ひとつの方向だろう。このような、専門性としての 初めの 分岐点では、能力、スキルが、選択の制約とは ならないこともあり、やりがいや、好き嫌いの方が、大きく影響することもある。---二つめの分岐点は、専門性を 活かして 仕事をして、仕事の幅が 拡がってきた頃に、 訪れる。その頃には、さらに 仕事の幅を 拡げるために、自分だけではなく、周囲を巻き込む力が、求められることが多い。そして、そのような力を 発揮してゆくことで、否応無しに、マネジメント力を 期待されたり、それを、自分自身から、発揮してゆく機会も、増えてくる。しかし、そのようなステージに到達しても、気付いてか、あるいは、全く 興味がないのか、一つの専門分野 / 一人で こなせる範囲 だけに こだわり、仕事の幅を 拡大しない 人も、少なからず 見受けられる。そういった人の中には、専門性に 高い 希少性があったり、会社・業界の中でもトップレベルの 専門性を持っていることで、専門分野から出ることなく、高い評価を得て、立場を伸ばす人もいる。逆に、そのレベルにまで 専門性を昇華されられない人 の中には、その時点をピークに、人材として、埋もれてゆく人も少なくない。一時、高い専門性を 有することが、人材としての価値を生むという、専門性についての 一つの 考え方が、世間に 広がった。たしかに、それは それで 真実だと 思うけれど、絶大な 価値を生む レベルにまで、専門性を 高められる人は 希だ。ムダが多く、専門性が 細分化された組織 においては、一人一人の、狭い専門性が 価値となりやすいだろうが、組織のスリム化 がトレンドとなった今では、必ずしも、当てはまらない。反対に、専門知識を深めた上で、高いマネジメント力を身につけた者は、自分の専門フィールド上で、周囲の仲間を 動かすまでに成長し、ますます、専門の幅と、その成果を、拡大してゆくことになる。「プレイング・マネージャー」という言葉が あったが、ライン組織が 崩れ、組織のフラット化が進むことで、複数プロジェクトに属するメンバーを、自分のプロジェクトの中で 動かすような、「マネジング・プレイヤー」が、近い将来には、主流と なるように思う。---さて、最後の 三つめの分岐点では、マネジメント力を 得た者が、経営観点で 仕事ができるかどうかとの視点で、試されるように思う。ここまで ステージが 進んでくると、企業人として、その人の人生が、結晶化されたような味が、それぞれの 人材の中に 見えることが、少なくないように 思う。普通に優秀であるだけでなく、人間として 深みや 味がある人、マネジメントだけでなく、専門家としても、希少な技術を持つ人、自社を見るだけでも、経営層の言動や 行動は、一言では 語れないほどだ。---これらの 三つの分岐点を、何十年もかけて、ゆっくり乗り越えてゆくことは、人によっては、とても面倒なことだろう。そうした 制約が、起業しようという、新しい 動機付けに つながることもあり、ごく一部の者は、それを新たなに組織へと発展させる。