「乗る旅、読む旅」(宮脇俊三、JTB)
この本の中で、鉄道の父「井上勝」について紹介したものがある。郵便の父、前島密は有名だが、なぜか、井上勝なんてこれまで聞いたこともなかった。東京駅の丸の内口に銅像がたっていたなんて。 伊藤博文らと、イギリスへ密航したとのこと。血気盛んな伊藤は、ほとんど勉強する間もなく、半年ほどで舞い戻ったが、井上は勉強を続け、土木などについて勉強した。 その後、鉄道の父と呼ばれるような存在になったということだが、伊藤博文と比べると、なんと知名度の低いことか。別に、伊藤を貶めるつもりもないが、この国は、常に法学部系の人間が牛耳ってきた。いわゆる文系が。そして、技術畑が(それで食っているのに)なぜか冷遇されてきた。現在の国の省庁を見ても、建設省などの次官は常に法学部系。技官はその下に甘んじる構図が続いている。などと、いう感を強くしてしまった。 本の内容からは外れてしまったが、やはりここに収録されている「近くにも旅はある」というエッセー、いつでもいける場所に、探せばいくらでも面白いものがあるのに、なかなかそれを発見できない。視点の違いなのか。教養の問題なのか。残念ながら。