化粧槍とんぼ切り (森雅裕)
「とんぼ切り」とはとんぼが槍に止まったら切れてしまうほどに切れ味の鋭い槍、という意味だそうだ。本多平八郎(家康の家臣。勇猛果敢。徳川四天王の一人)が家康から拝領した家宝。本多平八郎の娘、お稲とその夫となる真田信幸を、妖刀と刀鍛冶話をからめうまく料理している。小松殿の描き方が実に好みで、こういう時代だけにいきいきした女性が出てくるとそれだけでうれしいものだ。また、真田家といえば幸村方ばかり描かれることが多く家康側についた信幸はなんか悪く描かれるような気がするので、信幸側視点の物語はいいなぁ。森氏なのでもうちょっとひねった話になるかと思ったが素直な時代物で読みやすい。こういう系統の話、また書いていただけないものだろうか…