仏の使い~吉田所長~
東電は、あの事故の処理をいまだにいい加減に取り繕っているでしょ。長年にわたって染みついた体質だから、そう簡単には変わらない。 吉田所長は、事故発生直後から、その悪しき慣習に真っ向から対峙していた。上層部が何を言おうが、やるべき事を的確に判断して、冷静に任務を遂行した。 指示に従ったふりをして、実は正反対のことをしていたんだよね。それが福島の為、東北の為、日本の為だから。吉田所長の心には、それしかなかったんだ。だから強かった。己の保身しか頭にない輩とは、雲泥の差があるこの使命感。 事故後に、心あるジャーナリストを現場に招き入れ、内情を公開した。すると、すぐさまそれを嫌う筋から圧力がかかる。しかし、そんなものに屈することもなく、豪快に笑い飛ばしながら仕事を続けた。 そして、帰らぬ人となった… 無念はあったかも知れない。復興と言うには、あまりにもやり残した事がある現状。でも、あの英断と卓越したリーダーシップがなっかたら、日本は取り返しのつかない事態に陥っていたかも知れない。 マスコミには、そういうことをもっともっと報道してほしい。 吉田所長は、救世主。まさに仏の使いだ。 自らの命を賭してまで、他を救済する行為ほど尊いものはない。こういう人を本当に「偉い」というのだ。金・地位・権力・名声があるから偉いのではない。そんなもの、人間の値打ちを測る物差しで見れば、実にチッポケなものだ。しかるに、勘違いのバカどもが、いかに多いことか。 世に多くの偉人はいるが、そのステージにはランクがある。吉田所長のような人物が、それの最も上位に立つ存在。私たちが語り継ぐべき核心は、本当はそこにあるんだ。