レット・イット・ビーを聴きながら…
せめてあと5年…活動を続けていてくれたら、どれほどの名曲が世に送り出されていただろうか… 運命というのものは、時に非情である。偉大な革命史は悲しいほどに短く、音楽性の完成と呼ぶには、四人はあまりにも若過ぎた。 でも…もうその先には歩むべき道はなかったのかも知れない。四つの個性がこの時、行き着く所まで来ていたとしたら、切り立った断崖の向こうには、もはや彼等を飲み込んでしまう深い暗闇しかなかったのだろうか… ここまで来れば、もう消滅するしかない… レット・イット・ビーを聴いていると、そう思えてならない。ポールの歌声、歌詞、バックコーラス、サウンドアレンジ…そのすべてから連想されるものは、まさに物語のラストシーン。「フィナーレ」という表現がピタリとくるエンディング・テーマ。 至上のクオリティを極めた事実上のラストアルバム「アビイロード」よりも後に発表された「レット・イット・ビー」 タイトルチューンのレット・イット・ビーは、ビートルズという奇跡のバンドの終焉を象徴するかのように、彼等自身による挽歌となった。 どこか虚ろで、悲しげな表情で唄うポールの胸中に去来するものは、いったい何だったのか…後に起こる解散劇を悟っていたかのような、ポールの哀愁を帯びた歌声と共に、ビートルズの歴史は終わりを告げた。 8年という年月を矢のように駆け抜けた四人。メンバー全員が、まだ20代の青年だった。しかし、彼等はすでに人々の何倍も生きたかのように、どこか老境を匂わすほどの顔貌になっていた。それは、人生を達観した哲人のようにも映る。 にじみ出るような大人の色気…円熟し、枯れた歌声とサウンド…他の追随をまったく許さない秀でた才能の結集は、神がもたらした芸術の至宝といえるだろう。 地球の片隅にいる…ちっぽけな私の人生ですら、こんなにも変えてしまったビートルズ。彼等が世界の人々に与えた影響は、いったいどれほどのものだったのか… ジョン・レノンポール・マッカートニージョージ・ハリスンリンゴ・スター ビートルズ結成50周年を迎え、今一度、彼等の歩んだ偉大な足跡を辿ってみたくなった。 この地球がある限り、ビートルズは私たちの心にいつまでもいつまでも生き続けることだろう。 ありがとう、ビートルズ。ビートルズよ、いつまでも…