旧怪談(京極夏彦)
京極夏彦の「旧怪談 耳袋より」(2007)を読んだ。根岸鎮衛というとどうしても,隼新八の主人というイメージが先に立ってしまうが,事実,彼は佐渡奉行→勘定奉行のあと南町奉行を18年間つとめている。その彼が,佐渡奉行であった天明年間から文化12年に南町奉行在職中に死去するまでに同僚や知人などから聞き取って書き記したのが「耳?」である。併録してある「耳?」と読み比べてみると,京極の「旧怪談」が「耳?」の単なる現代語訳でないことは明らだ。もともとはなかった状況説明や解釈が微妙につけ加えられて,ある意味では無理やり「怪談」になってもいる(笑)かといって,当然ながら全くのオリジナルではなく,なんとも独特の雰囲気をもった文章だ。人名をアルファベット1字で表していることと,「高齢者認知症」や「ミーティング」などように文章の中で使われている現代的言葉が時代臭を消しているくせに,書かれているのが江戸時代の話であることを隠しているわけでもない。おそらく,「『新耳袋』ふうに書き改めてみようという試み」のなせるわざかもしれないが,「新耳袋」のほうを読んでいないので確かではない。ここらへんから,また新たな「京極節」が始まるとしたら,それはそれで楽しみだ。京極夏彦の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ → 京極夏彦の世界 (↑関連トラバの集積場所)こちらもクリックをよろしく! → このブログのRSSのURL → RSS ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━著者ホームページ:大極宮楽天ブックス旧怪談 京極夏彦記事関連のオススメ日記日々のあぶく(kiyu25さん) ゆかいなおっちゃんのついてる日記(拝大五郎さん)氷雫の隠れ家(氷雫さん)