<第71話>秘密の彼女
バンドのミレニアムライブ第2弾を一週間後に控え、Zinc Sulfide(硫酸亜鉛)は最後の練習スタジオに入りました。2000年7月2日のことです。この日は、電車が止まるんじゃないかと思うほどの集中豪雨で、なんとかスタジオにたどり着いた私を待ち受けていたのは衝撃の出来事でした。「どうしたの、その指!」なんと、ギターのタイチョウが右手親指にグルグル包帯で、指が3倍くらいにでっかくなています。「ゴッメーン。なんとか弾けるからさ」今回のライブは知り合いのバンドと2組でライブハウスを借り切って行う、いわば「独演会」です。絶対に穴を開けるわけにはいかないのです。そしてタイチョウにはもう一つ、頑張らなければならない理由がありました。彼女が見に来るらしいのです。話には何度も聞いているのですが、1度も見たことのない秘密の彼女は、「ロックなんて大嫌い」なピアノの先生とのことでした。その確かな耳を持った彼女に、何とか好印象を与えたいものだとバンドメンバー全員が思っていました。ライブ当日は、台風3号の影響で午前中はとんでもない天気でしたが、午後からは東京のど真ん中でさえ深呼吸ができるほど空気が洗われて、素晴らしい快晴になりました。前回のライブでは青のスケスケダンスウエアーで出た私は、今回、赤のラメラメでいくことにしました。ほかのメンバーにも、もう一度ダンスウエアを勧めましたが、結局また、私だけダンスウエアにダンスシューズ。しかし今回はちょっと失敗でした。「お腹減ってたら、いい声でないでしょー。」と、リハーサルが終わってからコンビニのオニギリを3個食べたんですが、ダンスウエアは身体にピッタリしたものが多いのです。見に来てくれた友達から「お腹出てるよ」と指摘されてしまいました。ショックです!ライブではオリジナル曲のほかに、懐かしのヒットメドレーを演奏しました。5曲全部分かった人には、バンド特製オリジナルTシャツプレゼントのクイズをしましたが、惜しくも全問正解者はいませんでした。このブログを読んでおられる方の中には、きっと全部分かる方が何人もいらっしゃると思います。ちなみに答えは、Twenty Centry Boy (T-Rex), Owner of a lonely heart (YES), A Ferewell to Kings (RUSH), Neon Knight (Black Sabbath), Burn (Deep Purple) でした。さて、ライブが終わって、みんなで打ち上げに行くと、当然来ると思っていたタイチョウの彼女は、もういませんでした。やっぱり、ヘビメタ&プログレでは、好印象は無理だったのでしょうか。結局、彼女が来ていたことを知っていたのはタイチョウだけで、ほかのメンバーはどの人だか分かりませんでした。「あの一番前でノリノリだった女の子でしょう?」ベースのBちゃんがいうと、タイチョウは、「後ろの方の席にいた」「じゃ、あのすごいヘッドバッキングしてたの誰?」それ、私の友達です。