<第239話> 優先順位
キャロル先生のレッスンを受けて思い出したのが、「スラビック・クリクリビーのラテンレクチャー」というレッスンビデオです。現在はカップル解消してそれぞれ別のパートナーと組んで活躍されていますが、2004年10月当時は世界選手権のファイナリストで、将来を嘱望されていました。このビデオの後半で、パートナーのカリーナが「ダンスの4原則の優先順位」に関するレクチャーを行っています。ある大学院生からの質問で、次の4つに優先順位をつけて下さいというものだったそうです。・ ルックス(見栄え)・ コリオグラフィ(振り付け)・ テクニックとベーシック・ プレゼンテーション彼女が1位につけたのは「テクニックとベーシック」でした。質のいいダンスは正しいテクニックの上に成り立つということで、これはブライアンのレクチャーでも言っていたことです。世界戦のファイナリストになっても、毎日何度も繰り返し練習して、身体や筋肉に記憶として組み込まなければならない。そして競技会ではもっと他のこと、例えばプレゼンテーションのようなことに集中して、テクニックとベーシックのことは考えてはいけない、と言っていました。2位につけたのは「コリオグラフィ(振り付け)」でした。フロアの上でたくさんの競技選手が一緒に踊りますから、審判が1カップルを見る時間はほんの数秒です。その瞬間に印象づけるためには、他のカップルと何かしら違うことをしてアピールする必要があります。「人類は平等」といいますが、大きい人小さい人、太っている人やせている人、いろいろな人がいるのですから、そのカップルに合った、一番得意なことを生かす振り付けにするべきです。彼女が3位につけたのは「プレゼンテーション」でした。これはフロアに入るときから始まっています。よくバーゲン会場に急ぐような足取りで、スタスタ入場するカップルがいますが、これはいただけません。女性の通る道を確保しないせいで、彼女がぶつかったりよけたりしているのに自分だけ悠々と入場していく男性も「レディファースト」に反します。こういうことも審判は見ていて、経験不足か思いやりのないリーダーという印象を持たれてしまいます。さらに、フロアに一緒に出て行って、あるところで手を放してしまい、女性をかってにポジションにつかせるリーダーもダメだそうです。女性を「ここから始めて下さい」という場所までリードしてから、男性は自分のポジションにつきます。フロアに出て、いい場所が見つからないときは、他のカップルがばらけるのを待って、音楽が始まってからでも慌てずに移動しても大丈夫といっていました。ブライアンとカルメンがカップルを組んで始めて世界チャンピオンになった試合を私たちは見る機会がありました。音楽が始まって、他の選手はもうビュンビュン踊り始めている中、彼らは悠然と入場口から一番遠いお客さんのところまで歩いてきて、炎のように踊りだしました。あんまりかっこよかったので、私たちも何回かそれをまねしたことがあります。1組だけ踊っていないと返って目立つので一種のプレゼンテーションです。ただ、踊り始めがショボイと逆効果だったりしますが…。彼女が4位につけたのは「ルックス(見栄え)」でした。フロアでの第一印象というのはとても大切で、その試合だけでなく別の試合でもその第一印象から逃れることはできません。ですから、化粧、髪型、ラテンの場合は肌の色、ドレス、男性のズボン、くつ、さらには男性のズボンの裾をとめるゴムバンドに至るまで完璧を目指さなければいけません。ここでカリーナはショッピングの話に例えています。「ブランドショップに行ってバッグを買った時に、そのまま渡されたのではお客さんは満足しません。きれいに包装して、にこやかに手渡されて始めて、納得のいく買い物だったと思えるのです。それと同様に、フロアに立つ場合の衣装や髪型すべてはひとつのパッケージなのです。」 このレッスンビデオは、「スタジオひまわり」という所から出版されていますが、大変参考になりますので、興味のある方はご覧になってみて下さい。飛行機で荷物が行方不明となったスラビックが、Gパンのままレクチャーをしています。