シリアナ
中東の資源をめぐる利権争いは今も続いています。この映画は元CIAの工作員ロバート・ベアが書いた告発本『CIAは何をしていた?』(原題See no evil)をもとに製作されました。シリアナというのは架空の国名ですが、そこに二人の王子がいたんですね。兄のナシール王子はアメリカ依存からの脱却を試み、天然ガスの掘削権を中国の企業に移行することを考えていました。頭の切れる人格者で、王位継承者と目されています。アメリカと対立するイランを経由して輸出することを王子に進言したのは、スイスの企業アナリストのウッドマン(マット・デイモン)でした。一方、いままで利権を独り占めしていたアメリカのコネックス社は弟のメシャール王子に取り入り、CIAもこれに加担します。工作員であるバーンズ(ジョージ・クルーニー)は中東の最前線での最後の仕事としてこの作戦をまかされていました。兄に比べて弟のメシャール王子は信念がないというか周りの言いなりなんですけど、国王はちょっとアホな弟の方がかわいいらしく弟に王位を譲ってしまうんです。企業や国家間で画策が進む中、現場で働く労働者たちは大きな影響を受けます。近隣の中東諸国から出稼ぎにきていたワシームたちが大量に解雇されるんです。他に職も見つからずウロウロしている若者たちは、イスラム教の過激な思想を持つリーダーに次第に洗脳され『神のために何でもする』軍団へとなっていきました。いかにも現実にありそうなドロドロした世界ですね。画面から血と葉巻と石油の匂いが漂ってきそうでした。スパイってトム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』みたいなカッコいいイメージだったんですけど、この映画でイメージ変わります。CIA工作員て使い捨てって感じです。そう言う意味では大名にいいようにこき使われる忍者に似てるかも。『シリアナって何だろうね?』『尻穴?』最初はこんな冗談を言ってたんですが、見終わったあとは重ーい空気が部屋に流れましたよ。『シリアナ』(原題:Syriana)は、2005年のアメリカ映画。スティーブ・ギャガン監督作品です。製作総指揮も務めたジョージ・クルーニーがアカデミー助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しました。公式サイトはこちら。シリアナ