ヤルコフスキー効果
ここのところ火球目撃のニュースをよく目にします。街の至る所に防犯カメラが設置されるようになったことや、スマホの普及で映像記録が残りやすくなったせいもあるかもしれません。小さい隕石なら大した問題にはなりませんが、恐竜が滅亡するほどの巨大隕石が降ってきたら、映画ディープインパクトのような大パニックになることでしょう。そうならないためにNASAでは高度に自動化された衝突監視システムSentryが、小惑星を継続的にスキャンして今後起こりうる地球への影響を計算しています。今のところリスク評価トップは、小惑星29075(1950 DA)で、2880年に0.012%の確率で地球と衝突する可能性あるとされています。二番目は小惑星ベンヌで、2175年から2199年の間に地球に衝突する確率0.037%となっています。はっきり言って随分先の話だし、ぶつかる可能性も低いので私たちが生きている間には巨大隕石衝突の危険はなさそうです。ご興味ある方はこちらからご覧ください。ところで今日のテーマのヤルコフスキー効果ですが、重力だけでなく、熱輻射も天体の軌道に影響を及ぼすという理論です。イワン・ヤルコフスキーは19世紀後半に生きたポーランド人で、学者ではないんですが、ロシアの鉄道会社に勤務しながら仕事の合間に小天体の軌道を研究していました。小天体はみんなジャガイモのようにいびつな格好をしていますので、太陽から受ける熱にむらがあって、これが影響して軌道をほんの少しですが変えてしまうんですね。直径10キロ以下の小天体でしか問題にならないほどの小さな変化ですが、この微弱なヤルコフスキー効果がじわじわと小天体の軌道をずらし、予想していたよりも早く地球に落ちてくる可能性があるそうです。もちろんNASAのシステムもこの効果を組み込んで計算しているんだろうとは思いますが、小天体の数は莫大で形もまちまちですから全てを完璧に計算し尽くすのは世界最速のスーパーコンピュータでも無理じゃないかという気がします。屋根を直撃して穴を開けた程度の火球に関しては、多分計算対象になってないでしょうね。子供の頃読んだルパンの話の中に隕石に当たって死んだ男が出てきて、子供ながらにそんなことあるんだろうかと不安になったことがあります。一説によると、人が一生の間に局地的な隕石などの衝突で死亡する確率は「160万分の1」だそうで、サメに襲われる確率よりは高いようですね。Meteorites, Impacts, & Mass Extinction - Tulane University