指揮者の
指揮者のオーケストラが始まった途端、ん?ちょっとテンポが遅い?と思った。私の頭の中を流れるその曲の速さよりも、ほんの僅かなのだけど遅く感じ、でも気のせいかもしれない。が、やっぱり少々遅い。ハープのソロはこれまた野暮ったく、くどく、ねちっこいとでも言おうか、ハープはサラリと演奏する方がハープの良さが出るのではないだろうか。と、なんとなく追いかける金魚の糞のような感を感じつつ、そこでパッと指揮者の顔が画面に映った。…。ほほぅ、なるほど…。でっぷりと肥えて脂乗りと血色の良いおじいちゃんだった。そう、すべては指揮者の「棒加減」なのである。ハープ奏者云々とかそういう問題ではなく、これは指揮者がそう演奏したいからそう指示する訳であって、つまりはこの指揮者はそういうモッサリとした演奏が好みなのだな、と一人納得する。(また違う日には、重厚さが欲しい曲が妙に軽やかだった。なるほど、指揮者は地に足付かず陽気だった。)私自身こね回したような音楽はタイプではない。だが、この日は、こういう曲の創り方もあるものだと大いに勉強になった。