これぞまさに御伽話!
私が日頃読む本はすべて図書館で借りてくるものである。年間一冊も買うことはない。理由は、小説なら昭和の頃に出版されたものが読みたいことと、自分の物として家に保管しておきたいという欲が皆無だから。強がりを言っているが、本に費やせる金銭的な余裕なぞあるはずもないこともちゃんと添えておこう。で、小説は複数所蔵があれば必ず出版の一番古いものを借りるようにしているので、破れていたり書き込みがあったり濡れていたりということは日常茶飯事で、まったく以て気にならない。それがまた良い味を出していて、私を小説の世界へと誘ってくれるとむしろ喜んでいる。さて、先日300ページ弱の小説を読んでいた時のこと。最初っからまあ書き込みが熱心で、鉛筆で◯を付けたりやら「」やら、やらふりがなを振ったりやら、ここかしこに跡があった。ところが、30ページほどまで続いたところからその態度は変わってゆく。どんどん印の間隔が空いていき、50ページを過ぎる頃には無になった。ふふ、ここでついに気力が尽きて読むのを止めたのね、と、私はなんだかおもしろくおかしくなってしまった。小説の世界。それを取り巻く現実の世界。その両方を同時に楽しんでいる私であった。これぞまさに御伽話!