レッスン
レッスンすぐ裏に住んでおられる方が、どういう方か知らないけれど、何年もピアノを練習していらっしゃる。初めは「ちょうちょ」だった。ソーミーミーファーレーレーのあれ。まったく聞くに堪えないというか、散々な出来だった。が、みるみる上達され、最近ではソナチネ以上の腕前である。こんなに弾けるようになるなんて、おそらく才があったのだろう。そしてこれまた熱心。何時間でも練習しようと思うのだから、よほどピアノが好きなのだろう。そして、えー、この日記を書いている現在、ワルツが流れている。何というワルツかはちょっと存じ上げませんがとってもお上手なられましたね。以前は「ちょうちょ」でしたのに感心致しますでございます。ではレッスンでも始めましょうか。まず出だしの部分はですね、小説で言う「序章」のような部分でして、いわゆる前置きでございますので、お好きに弾いてくださってよろしゅございますよ。はいどうぞ、結構でございますです、はい。では次。音楽というものはですね、「間」が大事なんでございます。そんなにかぶりついてはいけません。「間」がすべてを語っているんでございます。はい次。そこはですね、腕を大きく振り上げて思いっきり弾き切った方がメリハリが出てよござんすよ。はい、よろし、次。えー、そこはですね、右手がもたついていらっしゃいますでしょう?それはですね、右手があっち行ったりこっち行ったり忙しいもんだから、右手に気を取られて左手が疎かになるからなんでございます。ワルツって何拍子かご存知?ワルツというものはですね、三拍子の舞曲なんでして、三拍子を刻むのは左手なんでございますよ。あなたのワルツは三拍子がずっこけてございます。よろしゅございますか、肝は左手、左手が三拍子を刻むんでございます。はい、ではもう一度弾いてみましょう、さんはい!