世も末
これまであらゆる危機を乗り越えてきたし、どうにもならないと思ったことでもどうにかなってきた。不登校も、父の死も、難病も、今となってはどうやってその場を凌いだかわからないが、それでも今ここにこうして生きているということは、それらに打ち勝つことができたという証である。さて、42歳、毎日波風立つような出来事もなく、非常に平和だ。凪いでいる。実に凪いでいる。それなのに、心の中は不安の塊であった。沼にはまって抜けられず、ずっぽりと胸まで沈んでいる有り様だ。次第に這い上がろうとも思わなくなってきた。もはやこの沼が心地いいとさえ思う。底なしの闇に吸い込まれ、このまま頭まで埋まっても構わない。そんな願望まで抱くようになってしまった。気持ちの落ち込みは、かつてないほどどん底に達している。世も末である。