医学と芸術展
六本木ヒルズの森美術館で、「医学と芸術展」を観てきた。人体ほど身近で親しく、禍々しくもきわどい物はない。と常々思っているが、そんな意識をさらに刺激してくれる中味のつまった展覧会だった。手術や解剖を密室でではなく、一大イベントとしてすら公開してきた医療の歴史が、皮膚に覆われた内臓の闇を暴き出すように、人間の真実性を「学と芸術」に方向ずける手助けともなったのであろう。過去においては、処刑や拷問も公衆の広場で行われていたのである。陳列されている昔の医療機器をみていると、拷問の器具を連想してしまい、何か表裏一体のものを感じて、緊張してしまう私であった。このドキドキ感は、義足や義肢をみていてもつきまとった。しかし、蜷川実花作のカラフルな義足を見たとき、ふっと気持ちが楽になった。ヴァルター・シェレスの「ライフ・ビフォア・デス」の写真の前では涙ぐんだ。ジル・バルビエの「老人ホーム」では思わず笑ってしまった。ステラークやマーク・クインの作品には、言葉にし難いものがあった。そのほかの作品ひとつひとつにもその批評性以上に、リアルに五感に響くものが多かった。(あたりまえのことなのだが)逃れたくとも避けて通れぬ、わが人体なればこそ。