『源氏物語千年紀』橋田寿賀子スペシャル
橋田寿賀子さんの『源氏物語』のテレビドラマの再放送が昨日今日の午前中にやっていたのをなにげなく、チャンネルをあわせたらみつけてしまい、そのまま見入ってしまいました。おかげで年末の掃除も片付けもそっちのけの年末でした。ビデオにとればいいんだけど、やはり、みてしまったあ。本放送はいつやっていたのでしょう。ぜーんぜん気づかなかった。 これが以外におもしろくってねぇ。 なんといっても、東山くんの光源氏がいいですね~。細面のしょうゆ顔の日本的美男子。光源氏にピッタリ~。ずいぶん前に、ジュリーがやったことあるけれど、私的にはいまいちだったし。(おにおこぜさんごめんなさい。)映画では、宝塚の元男役の女優天海祐希さんがやっていて。光源氏が女なの苦しかった。 やはりテレビドラマだと、八時間もの時間をかけて作れるところがいいですね。それでも、やはり、はしっょてあるのはやむ終えないけれど。たちばなの君も、朝顔の君も、うつせみの君も出てこなかったしね。 でも、女優さんたちがみんな年配で。上の巻は、東山君だけが若くて、辛いものがありました。源氏の生涯なので、後半の高齢になった源氏にあわせてあったのでしょうが。でも、久しぶりに見る大原麗子がかわいかった。やっぱりかわいい女優さんなのですね。小手川裕子の明石の君もよかった。美しくて、聡明で、謙虚だけど、気位の高いところとかがね。うまく出ていて。 でも、明石の君が、生んだ娘を紫の上に預けるために、別れるシーン。 泣けました。 もう。昔はこのあたりの部分って、漫画で読んでいても、あんまりわかっていなかったけれど。娘を育ててみて、生んだばかりのわが子を他人に預けて、そして、二度と会えないかもしれない時の辛さ。自分の人生経験があるからこそ泣けるんですがね。私だったらもう、辛くてつらくて、つらいだろうなぁ。出来ないかもしれない。 ドラマの演出的には、子役の子があまり演技がうまくなくて、迫真のシーンには、なっていなかったのですけどね。 でも、いままで、ドラマや映画や、漫画も読んできて大体のストーリーは知っているのだけれど、橋田さんの脚本は微妙に橋田風に変えてあり、ある意味わかりやすかったです。登場人物たちの心理というか、気持ちも、みんな、非情にわかりやすくセリフにしてあって、さすがに、橋田寿賀子ですねえ。 源氏物語って単純にプレイボーイの光源氏を主人公にしたラブストーリーだと思っていたけれど、今回見ていてつくづく、人の生きていく上での悩みやつらさ、人生の試練、人の世の理(ことわり)というか、人間社会の全てのことが1000年前に書かれたこの物語の中に全てえがかれていたのだなと、驚きました。出世争いや、後宮での帝の寵愛を競っての争い。息子の夕霧をあえて、官位の低いままに学問をさせる。このあたり、こんな昔でも、紫式部は学問の大切さを語っているのですよね。しかも、末摘花の君も、漢書を読んでいて、勉強熱心な女性だったのですね。 この当時男が何人もの妻を持つのは、当たり前のことだった。でも、あたりまえだからといって、じゃあ、女の人たちが平気だったかといえば、そんなことはなくて、やはり、嫉妬に苦しんでいたことを紫式部はこの物語の中で克明に、何人もの女性たちを通して語っているのですよね。紫の上も明石の君もお互いに嫉妬しているし。朝顔の君もそれが嫌で、源氏からの誘いに最後まで答えなかったのですよね。常陸宮(末摘花)の姫君も、どうせ私のような器量の悪い女は一度でも契りを結べたのだからと言いながらも、心の奥ではやはり辛いのかもしれません。それが一番、はっきり表現されているのが、六条の御息所なのですね。この人生霊にも死霊にもなって出てくるんですよね。源氏物語の一番面白くて人気のあるところなのでしょうか。 嫉妬の辛さもうらみの怖さも。 そして、この物語すごくよく出てくるのが、『身分』という言葉。身分が低いせいで、とうとう源氏の正室になれなかった紫の上。母の身分が低いために皇子でありながら、臣下に下された源氏の君。やはり身分が低いために娘を、紫の上にあずけなければならなかった、明石の君。 身分の低さに辛い思いをしている一方で、皇女という高位でありながら、結局源氏の愛を得ることのなかった女三宮。 身分の低さをいいながら、けれど、身分が高いだけでは、愛されるわけでも、幸せになれるわけでもない。 そして、美しく聡明な紫の上こそが、たぶん、藤壺の女御以上に実は源氏に愛されていたのではないのかなと、思いました。最初は藤壺の宮の影を追いかけていたはずの源氏が、いつか紫の上自身を愛していたことに源氏自身も、気づいていなかったのでは。そして、紫の上が一番すばらしかったのは、けれど、その美しさ、聡明さ以上に、『人の心のわかる人』だったからなのでは。 身分というのは必ずしも「生まれ」だけで、決まるわけでもなく、生まれた後の生き様が大きく影響していくのだと、その部分を橋田さんのシナリオでは、強調していたように思います。皇子でありながら母親の身分の低さゆえに臣下となったはずの源氏が、いろいろな人生経験を通して人間的に成長し、やがては、准太上天皇という最高位にまで上り詰めていくのですよね。コレは必ずしも息子の冷泉帝の意思だけではないと思います。源氏にそれなりのものがなければいくら冷泉帝が望んでも周りの臣下たちが反対しただろうと思うからです。 そして、身分低くあったはずの明石の君もまた、子を産み、数々の辛さに耐えて、いずれは、女御の母となり、国母の母となっていくのですよね。その忍耐強さとつつましさ、聡明さもすばらしく描かれていました。 落ちぶれながらも皇女としてのプライドを捨てない末摘花の君も。 光源氏という当代一の男の愛情を生涯受け続けた紫の上も、彼女自身の持つ力なのだと思いました。 それにしても、光源氏ってすごーいマザコンですよね。生涯母親の面影を追いかけていたんだから。それというのも、まだ彼が幼い頃に死んでしまったから。もしずーっと生きていれば、もう少し母親ってものに幻滅を感じることもできたかもしれないのにね。ひひひ。 さて、本年はみなさま私のつたないブログを読んでいただきありがとうございました。来年もまた、パソコンの壊れないかぎり、引き続き、書き続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。