不景気に飼い殺された日本人…海外メディアが「自民圧勝」を分析 2016.07.13 MAG2 NEWS
不景気に飼い殺された日本人…海外メディアが「自民圧勝」を分析 2016.07.13 MAG2 NEWS先日の参院選で完勝を収めた自公。改憲に前向きな野党の議席数も加えると、改憲勢力はすでに参院3分の2に達しており、安倍総理の悲願である憲法改正がさらに現実味を帯びてきました。今回の結果を受け、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、WSJに掲載された興味深い分析を紹介しつつ、独自の見解を記しています。参院選 なぜ安倍自民は勝ったのか?皆さんご存知のように、参院選で自民党が勝ちました。いまや自公は、衆院、参院で3分の2を占め、いよいよ安倍総理の悲願「憲法改正」が視野に入ってきました(憲法改正には、衆院、参院で3分の2の支持が必要。その後、国民投票が実施され、過半数の賛成で承認される)。これから、「改憲」が日本国最大の争点になっていくことでしょう。しかし今回は、「なぜ安倍自民は勝ったのか?」について、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の面白い分析をご紹介させていただきます。日本は、不安定とは無縁の島WSJ7月11日に掲載された記事の名は、「日本の参院選、有権者は『安全と安定』を選択」。筆者は、ピーター・ランダースWSJ東京支局長。記事は、こんな詩的な一文からはじまります。不安定な政治的情熱によって動揺する世界にあって、日本はそれとは無縁の孤立した島だ。面白いですね。確かにその通りです。アメリカでは、「日本にもっと金を払わせろ! さもなければ、米軍を撤退させる!」「アメリカとメキシコの間に、『万里の長城』を築け!」「イスラム教徒の入国を禁止しろ!」など、過激発言のトランプさんが人気です。欧州では、イギリスがEUを離脱して大さわぎ。中国は、去年までの勢いがまったくない。南シナ海、東シナ海で挑発活動を活発化させることで、共産党一党独裁の「正統性」を維持しようとしています。ロシアは、「経済制裁」「ルーブル安」「原油安」のトリプルアタックで、経済がボロボロ。世界中、どの国も動揺しているのに、日本だけは別の世界にいるよう。なぜ?問題山積みの日本で、国民の怒りが爆発しない理由は?ピーターさんは、「日本にもアメリカと同じような問題が山積みしている」と指摘します。日本の人口は減少し、成長は横ばいで、低賃金の非正規労働者がかつてないほど増えている。 現状維持に対する「反発」の条件は存在している。それは先月、欧州連合(EU)から離脱を決めた英国、あるいはドナルド・トランプやバーニー・サンダースといった非伝統的な政治家に目を向ける米国と似た反発条件だ。(同上)おっしゃる通り。では、なぜ日本国民は、アメリカやイギリスのような過激な行動ではなく、もっとも保守的な自民党、なかでももっとも保守的な安倍総理を支持したのでしょうか? ピーターさんは言います。なぜ日本ではそうした反発が起こらないのだろうか?一つ挙げられるのは、他国で不満をかき立てたスタグネーション(景気停滞)はここ日本では全く目新しいことではないことだ。この国は、四半世紀以上前のような経済的けん引役であることをやめてしまい、金利とインフレは1990年代末以降ゼロ近辺になっている。(同上)なんと、他の国は、「いままで成長していたが、最近成長しなくなったので不満が爆発しているが、日本は、25年間成長していないので、国民がその状態に慣れている」というのです。確かにそうかもしれません。国民は、アベノミクスの「ささやかな」成果を認めた?25年間もまったく成長していないと、いいこと(?)もあります。他の国では、「成果」とされない結果でも、「成果」と認められる。実際、数字を見る限り、アベノミクスは、到底「成功」とはいえません。GDP成長率は、2013年1.36%、14年-0.03%、15年0.47%。しかし、ピーターさんはいいます。安倍氏の包括的経済政策、つまり「アベノミクス」は、抜本的な金融緩和や、企業の社外取締役増加などビジネス慣行変更などを盛り込んでいるが、日本を急速な経済成長に戻すことはなかった。 しかしそれは株式市場と企業利益を押し上げた。最近逆転しているとはいえ円安のおかげだった。その結果、安倍氏はバラ色の数字を、少ないながら吹聴できた。不運な指導者が続いた後、日本の多くの有権者は安倍氏のつつましい実績を前向きに評価しようとしたのだ。(同上)思い出すと、確かに2013年は、久しぶりのワクワク感がありました。「あの時消費税を上げずに走りつづけていれば、どんなに好景気になっていたことか…」と思うと残念ですが、仕方ないです。日本国民は、「ささやかな」アベノミクスの成果を、支持したのでしょう…。日本が「幸せな国」である理由1~1.3%私が、「面白い!」と思ったのは、ここからです。ピーターさんは、日本が「異質」である(=不安定な世界で唯一安定している)理由は、二つあるとしています。2つの数字が、日本がなぜ異質であるかを説明するカギになる。1.3%と350万ドル(約3億5,000万円)だ。(同上)まず、1.3%から見てみましょう。最初の1.3%は、日本の総人口に占める非日本人の割合だ。それは深刻な移民問題を醸成するクリティカル・マス(臨界質量)にはほど遠い。つまり、メキシコとの間に壁を構築するというトランプ氏の提案につながった反移民感情、ドイツの州選挙で反移民政党が過去最高の投票率を記録するに至った雰囲気、そしてブレクジット(英国のEU離脱)運動を勝利に導いた状況などとは無縁なのだ。(同上)この部分、読者の皆さま、そして特に政治家の皆さんは、繰り返し繰り返し読んでいただきたいと思います。アメリカのトランプ現象、欧州でふきあれる極右化現象、イギリスのEU離脱、これらはすべて「移民問題」と深く関連している。ピーターさんは、「日本は移民が少ないから安定しているのだ」と認めているのです。日本政府はすでに、事実上「3K移民の大量受け入れ政策」を実行しています。すでに欧米で「失敗」し、深刻な問題を引き起こしている政策をまねる。まったく愚かです。保守の皆さんは、「日本国民の賃金水準を下げる3K移民の大量受け入れ」に反対していただきたいと思います。リベラル系の皆さんは、「『日本人が嫌がる仕事は、外国人にやらせればいい』という、『差別的3K移民』大量受け入れ」に反対していただきたいと思います。保守もリベラルも、「欧米で失敗し、深刻な問題を引き起こしている」「3K移民の大量受け入れ」に反対して欲しいです(ちなみに、私は「差別的でない」移民には賛成です)。日本が「幸せな国」である理由2~350万ドルもう一つの理由、「350万ドル」はなんでしょうか?もう一つの数字、350万ドルについて。これは時価総額で日本最大の企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長の直近の年俸だ。それはトヨタが200億ドルを上回る純利益を計上し、自動車販売台数が世界一になった年の年俸だ。 ちなみに、米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)の2015年の総報酬は2,860万ドルで、前年比77%増だった。(同上)世界一の自動車メーカー・トヨタの社長の年棒は約3億5,000万円。米自動車最大手GM・CEOの年棒は、28億6,000万円(共に、1ドル100円換算)。ここでピーターさんがいいたいのは、「日本は、まだまだ貧富の差が少ないので、安定しているのだ」と。3億5,000万円。これは、どうなのでしょうか? 年収350万円のサラリーマンがこの金額を稼ぐには、「100年」かかります。しかし、同じサラリーマンが、GM・CEOの年収を稼ぐには、「817年」かかるのです。「それでも貧富の格差が少ないこと」が、「日本で暴動が起こらない大きな理由」であることは間違いないでしょう。総理は、「改憲」を語らずもう一つ重要なのは、総理が「憲法改正」について、何も語らなかったことです。野党は、「安倍は、日本を戦争のできる国にするつもりだ!」と熱心に批判していました。しかし、総理は、逃げてしまって、それについて議論しなかった。総理の戦術勝ちですね。安倍氏は、憲法改正について何も言わなかった。安倍氏は、日本の確立された秩序に対する本当の脅威は、野党陣営から来ていると述べた。そして与党に投票することは、60年間続いている日米同盟と、この国の自衛隊の力を堅持する投票を意味すると述べた。また安倍氏は、自衛隊は自然災害後に人々を支援することが主要な任務だと語った。(同上)というわけで、参院選で自公が勝利しました。安倍内閣は、「孤立」ではなく、「自立」を進める政策をすすめていただきたいと思います。