増え続ける「下流老人」とは!? 年収400万円サラリーマンも老後は下流化する!? 2015-5-11 藤田孝典 | NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学客員准教授
増え続ける「下流老人」とは!? 年収400万円サラリーマンも老後は下流化する!? 2015-5-11 藤田孝典 | NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学客員准教授 Yahoo Japan Corporation 日本には下流老人が大量に生まれ続けている。 下流老人とは、わたしが作った造語であり、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義している(藤田孝典『下流老人ー一億総老後崩壊の衝撃ー』朝日新聞出版 2015)。 下流老人とは文字通り、普通に暮らすことができない下流の生活を強いられている老人を意味する。 しかし、そのような老人をバカにしたり、見下すつもりはない。 むしろ、そのような老人の生活から多くの示唆をいただき、日本社会の実情を伝える言葉として、創造したものだ。 その下流老人は、いまや至るところに存在している。 スーパーマーケットでは、見切り品の惣菜や食品を中心にしか買えずに、その商品を数点だけ持って、レジに並ぶ老人。 そのスーパーマーケットで、生活の苦しさから万引きをしてしまい、店員や警察官に叱責されている老人。 あるいは、医療費が払えないため、病気があるにも関わらず、治療できずに自宅で市販薬を飲みながら痛みをごまかして暮らす老人。 夏場に暑い中、電気代を気にして、室内でエアコンもつけずに熱中症を起こしてしまう人。 家族や友人がいないため、日中は何もすることがなく、年中室内でひとりテレビを見ている状態にある人。 収入が少ないため、食事がインスタントラーメンや卵かけご飯などを繰り返すような著しく粗末であり、3食まともに取れない状態にある人。 ボロボロの築年数40年の持ち家に住んでおり、住宅の補修が出来ないため、すきま風や害虫、健康被害に苦しんでいる人。 わたしたちのもとに相談に来られる高齢者はこのように後を絶たない。 内閣府「平成22年版男女共同参画白書」によれば、65歳以上の相対的貧困率は22,0%である。 さらに、単身高齢男性のみの世帯では38,3%、単身高齢女性のみの世帯では、52,3%である。 単身高齢者の相対的貧困は極めて高く、高齢者の単身女性に至っては半分以上が貧困下で暮らしている。 現在すでに約600万人が一人暮らしをしており、うち半数近くはこのように生活保護レベルの暮らしをしている。 公的な相対的貧困率の指標を用いて、少なく見ても、一般世帯よりも高齢者世帯の方が貧困状態にある人々が多い。年金の受給金額が低いことや、働いて得られる賃金が少ないこと、家族からの仕送りも期待できないなど、収入が低い理由は多岐にわたる。 そして、深刻なのは、下流老人の問題は現役で働く世代も将来陥る問題であるということだ。 現在65歳の人で20歳から60歳まで厚生年金に加入していて、40年間(480か月)保険料を払ったとする。年収が400万円を超えていた場合を想定し、平均月給与が38万円とする。 その場合、厚生年金部分は、年間約120万円支給される。国民年金部分は、年間約78万円支給される。だから、合計金額は約198万円で、月に直すと約16万5千円が支給される年金ということになる。 あるいは、そこまでの収入がない場合もある。そもそも実質賃金も下がっているわけだから、平均月収が38万円もないという場合も多い。 40年間の平均給与が月25万円で計算してみる。そうすると、現在65歳の人は、厚生年金部分は約79万となり、国民年金部分は78万となる。 合計しても157万であり、月額 約13万円しか支給されない(日本年金機構の水準により計算)。 国民年金のみの場合では、年間の支給額は約78万円だけであり、月額は約6万5千円だ。 そして、これから年金支給額は下がることが予想されている。この支給水準を保つことも難しい。 要するに、実際に年収400万円程度だと、「老後にもらえる年金額は月20万円を下回る」ということが分かる。 そして、非正規雇用や不安定雇用が拡大し続けているなかで、それ以下の年収であれば、生活保護基準を割り込んだ年金支給額しか受け取ることができない場合も多く想定される。 さらに、忘れてはいけないのは、年金受給者には課税や保険料徴収がある。実質の手取り金額は、ここからさらに数万円減少する。 高齢期は病気や介護など予期せぬ出費が増える時期でもある。 それまでに、個人的にも政策的にも、相当な準備をしておかなければ、下流になってしまう。 「あなたの老後は下流ですか?」と聞けば、残念ながら多くの人が「YES」と答えざるを得ない時代が間もなくやってくるだろう。 高齢者の貧困は、とても自己責任などといって本人を責めていられるような悠長な状況にない。