史跡頭塔
奈良市高畑町921 大正11年に国の史跡に指定されている「頭塔」奈良時代に、ある僧の頭を埋めた墓という伝承もあるようですが五重塔などのように仏舎利を納める仏塔であると考えられています。東大寺の記録に、「お水取り」を始めたとされる僧・実忠が神護景雲元年に土塔を築いたとあるそうです。その「土塔(どとう)」がなまって「頭塔(ずとう)」になったと思われています。 如来三尊仏(第一段東面)この7層構造(高さ約10m)の遺跡はピラミッドのようでもあり、神秘家たちが喜びそうな遺跡ですが、仏教施設であることは間違いありません。奇数段の4面には石仏が配置されているからです。見つかった石仏の多くは、国の重要文化財の指定を受けています。 奈良時代からこのような形で保存されていたわけではなく、発掘調査の後、復元整備されたもの。北半分は復元整備され、南半分は現状のまま保存される方針だそうです。上の画像は遺跡を南東方向から見たものです。石仏を保護するように屋根が設置されていますが、元々は奇数段全体が屋根で覆われていたようです。 見学デッキ案内板より 見学デッキの広場にある案内板に、復元案のイラストがありましたがこうして見ると、ここが仏塔であることがよくわかります。これは当時、インドの仏塔の様式を取り入れて造ったとも言われています。実忠和尚はインドからの渡来僧と伝えられています。遺跡周辺には見学用のデッキ通路や広場が設置されています。すぐ東にはホテルが隣接しています。そのホテルの上部階からだと頭塔の頂にある五輪塔も見えるかも知れません。常時開放されているわけではなく、見学は現地管理人に申し込む必要があります。現地管理人さんは、遺跡の東25mほどにある「仲村建具店」さま。今回は突然訪問した、私たった一人のために鍵を開けていただきました。 ここは少し小高い場所になっていて、遺跡の西側一部に眺望が展けています。しかし山の斜面にあるのではなく、周辺は住宅街になっています。近鉄奈良駅から徒歩30分くらい、東大寺からは1kmほどの場所。ただし春日大社表参道付近から、少々アップダウンがあります。奈良交通バス市内循環外回り、「破石町(わりいしちょう)」バス停の西スグの所です。ガイドブックなどでも見かけたことがなく、実際にあまり知られていない遺跡のようです。非常に珍しい遺跡ですが、他に例がないわけではありません。ここより大きなものが大阪府堺市にあります。堺市東区の土塔は13段。同じく奈良時代の僧、行基らによって造られたものだそうです。そう言えば、行基も東大寺と深く関わった僧ですね。泉北高速・深井駅の東800m。仕事で何度も前を通っているはずなのですが、ここのことは知りませんでした。もうひとつが岡山県赤磐市にある、この「熊山石積遺跡」です。少々小振りで高さは約3m。ただし標高500mほどの熊山の頂上付近にある遺跡です。いずれの「塔」も国の史跡に指定されています。熊山遺跡も仏塔であることが判明しています。しかし石仏がなく(盗難などで紛失か)、その立地場所の特殊性から一部の人たちの間では「謎の遺跡」として話題になっているようです。500mとは言え、熊山は岡山南部の最高峰。その頂上に造られていますし、その形状もマヤの遺跡を連想しないでもありません。しかしここには室町時代あたりまで霊山寺という寺があったそうです。周辺にも仏教施設と思われる石造物も残っています。数年前、初めてこの遺跡を見た時(上の画像もその時のもの)私もこの遺跡の神秘さに感動しました。しかし、奈良の頭塔との類似性を見てもやはりここも仏塔と言わざるを得ませんね。 超古代のミステリーではなく、奈良時代の仏塔だとは判っていてもこうして頭塔を目の前にすると神秘的な遺跡だと感じました。興福寺に東大寺、そして春日大社。奈良公園の定番とは少々毛色の違う遺跡ではありますが、足を伸して見る価値充分の遺跡だと思います。破石町バス停の東700mには新薬師寺もあります。現地管理人さんがお留守だと見学できないので見学の予約を入れておいた方がいいかも知れません。 ※現地管理人「仲村建具店」さま 0742-26-3171 見学時間:AM9時~PM5時 .