- 幻楽四獣奏 - 大竹茂夫展
今回は日程が切迫していてとてもいけないとあきらめていた大竹茂夫さんの個展だが、京都までトンボがえりの30分だけであったが、スケジュールの合い間をやりくりして滑り込みセーフで駆けつけてきた。そこには、やはり見逃しがたい世界が展開されており、千載一遇のチャンスを逃すところだったとしみじみ思ったことである。 往生要集を思わせる「音楽地獄」 8P 旺盛な創作意欲を示しつづけてきた大竹さんだが、今回はタイトルにもあるように楽器と音楽のシリーズだ。 また大阪のベルンアートでの作品と対を成す舞妓(Myco)さんをはじめ浦島太郎など和を基調とする作品も散見され新たな展開が感じられる力作揃いの20点だった。 僕の大竹作品に寄せる期待は、古生物やきのこ、冬虫夏草の形象化ではなく、しばしば作品の中心を成す少女の成長ぶりを確認すること。ここ20数年の間に随分と洗練が加えられてきたのは言うまでもない。それだけお互い歳をとったことにもなる。そんな意味では、丸窓式紙様式の「雪の金閣寺」とともに京都観光スポットシリーズとして東京で発表されたという舞妓さんの作品は興味ぶかいものがある。 さらに、彼のこうしたヘテロな素材を扱うテンペラ油彩を基調とする絵画のテーマがその折々の「流行」に沿うものであるとすれば、それらの絵画の背景を成す荒涼たる遠景が彼の作品の「不易」部分を成し、ここに大竹さんの心象風景が変わらず定着されてきており、初めて出会って以来僕たちが馴染んできたものであること。 僕が彼の作風に共感し、期待してきたのはこうしたさまざまなキャラクターを包み込んでいる荒涼そのものの遠景だ。その寂寥感、孤絶感こそが僕と彼をつないでいるあえかな糸なのだ。人と人がつながるとは、昨今のラインやソーシャルネットワーク、フェイスブックなどとは全く無縁のかすかなつながりでしかない。 立入禁止区域 10P その他の作品解題。 1.「バラバライカ」 3P バラライカと解剖台の烏賊。2.「太古の調べ」 9F マリンバと古生魚。3.「バイオリン工房」 6P ヴァイオリンの衣裳あわせ。4.「太古の調べ2」バグパイプの古生魚とアコーディオン。5.6.「夜の音楽隊1,2」 いずれも4M。7.「ウラシマ」 3F 竜宮城の風景・クラゲが印象的。8.「トネリコの木」 4M 猫顔のフクロウ、鳥猫だってさ。9.「聖杯のページ」5M。10.「荒野の呼び声」 3M へび使い。11.「幻楽四獣奏」 4P アンモナイト虫草に作者自身が登場。12.「ぼくらがピアノだった頃」 3P。13.「都立きりん園」 6P 「立入禁止区域」にも登場するジラフは彼のお馴染みの形象。14.「虫めずる妃君たち」4P 蛾、芋虫コレクターの娘たち。15.「貨幣の王」 SM。16.「剣の3」SM。17.「貨幣の10」SM。15~17はお馴染みタロットシリーズ。18.「音楽地獄」8M。19.「.立入禁止区域」10P。20.「雪の金閣寺」45。常設展示に21.「私のお家をどうする気」8M。22.「アマゾン女王の腰帯」3P ピラニアと毒虫とアマゾネス。