初めて見たタマネギの「とう立ち」。乾燥させ過ぎや、肥料(特に窒素)が足りなくなった場合に、「とう立ち」しやすくなる傾向があるそうです。北海道での自然観察【その5】。
☆約2週間、北海道の旅に出ていましたので、そこで見かけた植物を紹介します。第5回は、タマネギの「とう立ち」です。☆北海道の実家に帰ってみると、タマネギ畑の光景に違和感を持ちました。なお、タマネギは植物分類上ではヒガンバナ科ネギ属の多年草です。かつてはユリ科とされていましたが、ミクロなゲノム解析から実証的に分類体系を構築する「APG植物分類体系第3版」ではヒガンバナ科に分類されました。(2016年9月3日撮影)。☆タマネギ畑には、たくさんの「とう立ち」したタマネギが見えます。「とう」は「薹」で、花を咲かす花茎を示し、この「とう」が伸びることを「とう立ち」と呼びます。☆比率は数パーセントということですが、他家のタマネギ畑でも同じような光景が見られました。西日本のように、秋に苗を植える場合には、植え付け時期が早かったり苗が大きかったりすると、本格的に寒くなる前に大きく育ち、1~2カ月寒さにあたると花芽分化の条件が整い、「とう立ち」するそうです。この場合は、タマネギの球は太りません。☆写真でわかるように、この北海道のタマネギ畑では、タマネギの球が大きくなってから「とう立ち」しており、西日本の例とは条件が違います。調べてみると、次のような原因が考えられるそうです。(1)乾燥させ過ぎや、肥料(特に窒素)が足りなくなった場合に、「とう立ち」しやすくなる傾向がある。乾燥・水切れすると必要な養分を取り込むことができず花芽がつくことがある。窒素切れで花芽ができやすくなってしまう。(2)タマネギが活動を始めて大きくなってから長期間の低温に合うと、「とう立ち」しやすくなる傾向がある。☆これが、通常の大きくなったタマネギの球です。タマネギの球の上部の葉は枯れており、「とう立ち」は見られません。なお、タマネギの球は、茎ではなく葉(鱗葉)です。☆こちらが、「とう立ち」したタマネギです。球の中央から、花を咲かす花茎の「薹(とう)」が伸びています。「とう立ち」してしまったタマネギは芯ができてしまいますが、球の芯の硬い部分を取り除けば十分食べることができるそうです。☆「とう」の先端には、花が終わった実が見えます。種ができているのでしょうか。タマネギは、収穫したタマネギの球を翌年に植え、伸びてきた花茎の花で交配して採種するはずですが。☆「とう立ち」の正確な原因は、農業にもしろうとである「しろうと自然科学者」にはわかりませんが、今年は実家だけでなく他家のタマネギ畑でも同じような光景が見られましたので、施肥や気候条件など、共通した原因があると思われます。幸い、台風の被害に遭わず、「とう立ち」も数パーセントなので収量には大きな影響はないようです。☆参考資料(ウィキペディアフリー百科事典「タマネギ」)。日本でのタマネギの生産量は115万4,000トン、作付面積は2万4,000ヘクタール。そのうち北海道が生産量約66万トン、作付面積12,500ヘクタールと、全国生産量の5割強を占める。北海道に次いで佐賀県、兵庫県(主に淡路島)、愛知県、長崎県、静岡県、大阪府(主に泉州地区)が主な産地。北海道は春まき栽培、他府県では秋まき栽培が行われるため、季節ごとに産地の異なるものが小売されている。