[ビヨンド・ザ･フェンス]の記事一覧 | ＡｒｔｏｆＬｉｆｅ研究所プレイバックシアター

１２回で１サイクル

昨夜は、今年最後の、ビヨンド・ザ・フェンス。そして、わたしにとって、フェンスとしての最後のステージとなった。ビヨンド・ザ・フェンス、フェンスを越えて～～それぞれ人には、フェンスがある。そのフェンスを越えて、この場を共有する。そういう場を、この１年間、毎月毎回違う味わいを、実感してきた。これからも、この場での実験は続いていくだろうと思っていた。が、以外にも昨夜、「シアター・ザ・フェンス」というカンパニーを越えて、わたしは、フェンスメンバーを去ることになった。この場は続いていくが、パフォーマンスメンバーからは、外れる事になった。終わってみるまで、考えてもいなかった事だったが、そういう時期に来ていたのだろう。終わってから、最後だったと、後でわかるというのも、まんざら悪くないのかもしれない。もっとも、入団するときから、いつの日か、この日がやってくることは、知っていたに違いない。この１２月で退団するメンバーが、他に２人いる。それぞれが、カンパニーの代表として自分の道を歩んでいくのだ。個人が変化し続けるように、カンパニーもグループも、有機体である限り変容し続ける。それぞれの決意表明を眼前にしながら、そうかぁ～、それぞれの道を行くんだねと、送り出すつもりでいた。あら、気がついたら、わたしも同時に、わたしの道を歩き出さねばならない事になった。ＡＬＬプレイバックシアターの代表として。わたしのプレイバックシアターを実験し続け、仲間と共に模索し続けるのだ。感慨深い自分の事なのに、自分がこうしようと強い意志を持って決断したのではなく、気がつくと、そういうことになっていた。迷う選択肢がなかった。人生をコントロールしようという意思は、すでにもうない。どうやら、わたしのことではあるけれど、わたしに決められることなんて、それほどありはしない。人生とは、そういうものなのだろう。すでに決まっていて、そのことを承諾するか否かだけの事。受け容れて、人生を歩いていくのか、拒否って、駄々をこねて立ち止まるのか。残された道は、ただひとつ。ならば、歩いていこう。これからも。旅は道連れ、世は情け。ご縁のある方、袖すりあう人、よろしくです！！

転機・・共時性

九谷焼の窯元を訪れたり、白壁の蔵に足を踏み入れると、真夏の外の日差しとは、全く異空間の静けさが広がっている。一つひとつの作品を手に取りながら、何かが静に、わたしの中に収まっていくのがわかる。ざわついた心、必要以上に他人にチューニングしようとして見失ってしまう自分、重箱の隅をつつくように、自己批判してしまう自分、自信のかけらを見つけようものなら、即座にねじりつぶしてしまいたくなる自分、そんなネガティブないつものパターンに入り込もうとしている時、焼き物のそばで、静に佇んでいる人が目に入る。その凛とした美しい女性の在り様に、すべてのネガティブマインドを、わたしの中に留めておくのは難しい。人がそこに存在するということの、その偉大さを実感する。人の手で造りだされた作品の、味わい深い佇まいを実感する。存在の前では、思考はあたふたと消え去るしかない。忙しく働かせていた思考に、一旦退いてもらう瞬間だ。油断するとすぐに、思考で占領されてしまうわたしが居る。今のわたしは、意識的に、このような場やモノや人との出会いが必要なのかもしれない。帰り道、東尋坊に寄った。ＴＶのサスペンスでおなじみの自殺の名所。冬の東尋坊とは違って、日本海も静かだ。入り組んだ、侵食された崖っぷちをみると、その波の影響の大きさがわかる。目の前に広がっている海は、波も穏やかだが、その痕跡から、冬の荒波が想像できる。常に同じであるはずはない。その変化の中に居て、様々な顔を見せる、自然も人も。旅から直行で、フェンススタジオに。慣れない駅から乗り間違えて、息せき切って部屋にはいると、そこにはすでに、あるムードができていた。このビヨンド･ザ･フェンスは、プレイバックシアターのパフォーマンスという通常のイメージとは違っている。まず、アクターたちは、普段着のままだ。で、今夜のわたしは旅の格好のまま。そのまま、アクター席に着く。この特殊な場には、必要なときに必要な人が集う。参加者の感想には、「今まさに自分が語ろうかと迷っていると、誰かがそのことを語ってくれていた。」というのがあった。それも、一人や二人ではない。ここで繰り広げられるショートフォームやストーリーは、この場に居るすべての人に必要だった。観ることで、なにかが、変容していく。この場の特異性は、プレイバックシアターというリチュアルに、忠実であるからこそ生まれてくる。リチュアルというとき、見かけの形式ではないことが重要だ。その真髄に忠実であるとき、自ずと人のエネルギーは凝縮され、人々が深いところでつながっているさまが明らかになる。そうして、エゴの塊のコントロール下から離れ、必然のエンディングで幕を閉じるのだ。誰も捻じ曲げることのない現実を観ることで、わたしたちは、変容していく。

ストーリーに敬意

昨夜は、土砂降りの中、少し遅れて駆けつけた。事務所を出てすぐ信号待ちしているだけで、びしょ濡れになってしまった（￣▽￣；）？？？晴れオンナ？？？返上？？？偶然、駅で一緒になったほかの参加者たちと会場に入ると、２回観客として参加してくれていた人が、アクターとして立ち並んでいた。！q(≧∇≦*)│ぁ嬉しい！！アクティングなんてできないと、強い抵抗感を持っていた人だったのに、ワークショップにも参加してくれて、そして今、ほかのアクターたちと違和感なく立ち並んでいる。本人にとっては、チャレンジングなことだったに違いないが、ミュージシャン席から、そのアクティング振りをみることがでるのは、幸せだった。こうして、観客からすぐにアクターとしてプレイバックし、また、客席へと戻る。行ったり来たりできる、柔軟な有機的な営みが気持ちいい。まさに、「Everybody is actor．」プロの役者が演じる商業演劇とは異なる、市民のための演劇スタイル。コミュニティーですぐさま活用できる。われわれのための劇的空間であり、われわれのストーリー、人生のための、プレイバックシアターだ。で、今回はわたしにも、観客席に居るチャンスが与えられた。ブレイクタイムのとき、会場にいたプロのドラマーと参加者のひとりとで、そこにおいてあったジャンベを使って、ちょっとしたセッションをやってもらった。イギリスで「マンマ･ミーア」などの舞台でも活躍していた人だ。贅沢なブレイクタイムになった。南の国のドラムの音色は、わたしにある情景を思い出させた。ストーリーが浮かんでくるのがわかる。先ほどまでの通訳をしながらのプレイバックシアターも、そのストーリーを浮かび上がらせる重要な要素のひとつだった。ブレイクタイムのあと、すぐストーリーの１本目。アクター席には、ダンサーの参加者がいる。ストーリーが、彼女に呼ばれているようでもあった。がしかし、わたしの立場がほかの一般参加者と異なっているのは、承知しているので、テラー席に座りたい旨を言い出すのに、かなりの躊躇が伴った。ストーリーが自然に出ようとする動きに、何度も自分自身で検閲を入れていた。自分の中での逡巡をやめて、意を決して口に出すと、コンダクターは当然のように、テラー席はほかの観客のために用意されていると釘を刺す。ほかの参加者の動きがないことを見て取り、「みぃしゃに対してではなく、ストーリーに敬意を払って、テラー席に招きたい」と、コンダクターからの申し入れがあったときには、もうすでに、わたしという自我が、ストーリーの浮上しようとしている自然な動きを、すっかり抑えこんでいた。わたしの中で思考が忙しく働き、ストーリーを語った後のこの場の展開や、責任など、必要のないことばかり考えるようになってしまっていたのだ。そこでストーリーに再び出てきてもらうには、忍びなかった。ストーリーを叩き潰して、とるにたらないものと卑しめてしまったわたしが、のうのうとテラー席でそのストーリーを語る資格なんてない、と、すぐさま切り替えをして、ストーリーに頭を下げることのできなかったわたしは、コンダクターの再度の招きに対し、断らざるを得なった。そんな自分自身の反応は、決して好ましいものではない。１本目のストーリーを、観客席で観ていた。「ダンス」「自分に酔う」「言語」「コミュニケーション」「輪に入る」などのキーワードが、わたしのストーリーのキーワードと重なっているのに、驚く。ストーリーは、やっぱり、この場だからこそ、出ようとしていたのだと。そして、そのストーリーの中での、キーワードすべての意味が、わたしのストーリーとは、全くの正反対の意味合いで使われていたのが、なんとも面白い。２本目以降は、アクターチェンジの要請に応えて、ステージへ。わたし自身の内側の動きや思考は横において、疲れた身体を、瞬時にアクターモードに切り替える。すべてが終わって、ストーリーの綾を見つめていると、２本のストーリーは、同質だったと、コンダクターは語った。このように普遍的なわれわれのストーリーはつながっていると。その場では口にしなかったが、わたしには驚愕の真実として、わたしの語られなかったストーリーとも、しっかりとつながっていた。わたしのストーリーのエッセンスの、全く正反対のストーリーが２本続いたのだ。ストーリーがストーリのバランスをとるように現れる、その動きが、今回もあったんだということに驚く。語られなかったストーリーを誰も知るはずがないのにである。こうしてみると、語らなくても、プレイバックしなくても、人々は、微細なレベルでお互いをキャッチしあい、バランスを保とうとしているのだとわかる。その営みが、はっきりと見える形に、リチュアル（儀式的様式）として、共有できるようにしているのが、プレイバックシアターと呼ぶべきものなのだろう。それらの営みが、無意識レベルで行われている。誰も意図していない。だからこそのグループダイナミクスであり、コミュニティー集合体の動き。自分自身の自然な動きに、検閲を入れてしまっていたおろかさを、はっきりと、今、自分自身が認識できる。ストーリーに敬意を表したい。信頼すべき自然な動きこそが、その場において唯一無二の「今、ここ」でなすべきことだから。

いつものパフォーマンスにとどまらず・・

今年から始まったビヨンド・ザ･フェンス。コンセプトは、__________________________________________________________________________________________きっと、毎月第３木曜日に行われます。おおむね、小さなスペースで行われます。おそらく、シアター・ザ・フェンス（PTの劇団）のメンバーによるパフォーマンスが行われます。必ず、参加された方の「人生」に対して敬意が払われます。多分、このパフォーマンスには「何もしないこと」や「瞑想」などが含まれます。すべからく、いろんな方々にお目にかかれることを楽しみにしておりますが、もし誰もいらっしゃらなくても「パフォーマンス」は行われます。もとより、このパフォーマンスは「存在」に対して捧げられるものだからです。 __________________________________________________________________________________________で、先月までの３回は、ＰＴを全く知らない観客たちもたくさん集まり、フェンスメンバーによるパフォーマンスが行われていた。今夜は様子が違う。毎月来てくれている人たちが、舞台でアクターになった。ミュージシャンになった。初めて来た人も、いつの間にか、観客として引込まれていた。語られるストーリーが、ストーリーを呼び、ＰＴのあるコミュニティって、きっとこんな感じになっていくのだろうと思うと、嬉しくなった。カンパニーと観客という分け方ではなく、客席からアクターに、テラー席からアクターに、アクターから観客に、ミュージシャンに、お互いのストーリーをつむぎながら、それぞれのポジションで、受け取るものを受け取り、放つものを放っていく。その必要性の循環が不思議なほど、スムーズに感じられ、ＰＴという手法をひとつ知っているだけで、こんなにも豊かなコミュニケーションができるのかと思う。言葉だけのコミュニケーションに比べて、共感度の違いを感じる。一瞬にして、場の合意形成が行われる。「４月」「２年前の今頃」「１年前の今頃」「今」攻撃的な相手に対する戸惑い、見え方の変化、バランス・・たくさんのキーワードが呼応する。最初のストーリー「２年前の幼い自分は、素直に謝れなかった」に呼応するかのように、次のストーリーでは「１年前、中学生くらいの子に、結局あやまってもらえなかった」とテラーが語り、最後のストーリーでは、「死の直前の痴呆が進んで社会的生活は送れないが、むしろ人間らしく思える祖母」について、語られた。「その祖母が今の自分を支えている」と。そして、ストーリーを観た後の動く彫刻では、「幼くてもいい」という言葉が、涙と共に出てくる。「あやまってもらえなかった」と語った人の口から出てくるのも、興味深い。テラーとして語った自分のストーリーに呼応する、他のテラーのストーリーで、アクターになる。自分自身に対しては否定的に思えていた過去の同じ質が、他の人のストーリーでは、敬意を持って語られる。ロール(役）をアクティングさせてもらうことは、ギフトだ。自分自身も尊厳に満ちた存在だと気づかずにはおれないだろう。プレイバックのプレイバックたるフィードバックが行われる。それも意図せずに、自分の中心につながることが、いつの間にか誰かにフィードバックしている。「むしろ人間らしい」「死をみつめることは、生きること。毎日が死ぬ準備をしている。」と語るテラーの顔は、輝いていた。表情がいきいきしている。言葉以上に、その真実を存在全体で醸し出していた。肯定と否定という２極論ではなく、死と生という一方向性ではない、すべてを包括したこの世界観。死生観。正解は必要ない。この場がバランスを維持するために必要なコミュニティーであることが、嬉しい。最初から最後までずっとアクターをさせてもらって、アクターポジションから、観客としてのアクティングぶり(リアクション・反応)を観させてもらえるのが、わたしにとっての嬉しいギフトだ。