リヴァトン館
ケイト・モートンという作家の作品は、読んだことがない。この小説は、ベストセラーだったそうだ。確かに、面白く読めた主人公は、98歳の老婆グレース。ある日、映画監督から、リヴァトン館で起こった出来事を映画にするのでセットなどを見にきて欲しいとの依頼がくる。そのことをきっかけに、過去の事件を回想し始める。事件の真実は、いまだ明らかにされておらず、その真相を知るのは、グレースのみ。やがて、グレースは、自分の孫に向けて、事件を語り始める。第一次世界大戦前後のイギリスの様子が、14歳のメイドの目を通して、浮かび上がってくる。時間の流れは穏やかだが、貴族階級の崩壊は始まっている。昔ながらの生活を続けるのも困難になり、長女ハンナは銀行家の息子と結婚。次女のエメリンは、女優を目指し、駆け落ち同然に家出。長男は戦死しており、事業に失敗した父親のフレデリックは、自殺。メイドのグレースは、自分の人生を犠牲にして、ハンナに尽くす。その結果、悲劇の全貌を知ることになる。グレースの出生の秘密と、映画監督とハンナとのつながりなど、因縁とでもいうべき人間関係に支えられた物語とも言える。肝心のグレースの人生は、物語に関係ない部分はあまり語られない。メイドから考古学者になったことになっているが、どうやったらそんな事が可能なのか、知りたいものだ。悲劇ではあるが、読後感のいい1冊だった