ポータブルトイレの背もたれ作成
施設や病院では寝たきりで便秘気味のお年寄りに対して、排便のない日が数日続いたら下剤や浣腸を使用しています。寝たきりのお年寄りは腹筋が弱くなっているから、「寝たまましなさい」と言われても、なかなか出るものではありません。だからどうしても薬に頼るようになってしまうのですが、薬の使用は腹痛などを伴うこともあり、頻繁の使用で腸を傷め返って便秘を悪化させることがあります。下剤や浣腸は母にはかなり辛いらしく、使用するたびに体調が悪くなっていました。だから便秘になって看護師さんに薬の服用を勧められても、母は「嫌だ」と断っていました。母は寝たきりで自分一人では立ち上がってトイレに座ることができませんが、私が抱えてトイレに座らせれば手すりを持って座っていることはできていました。座らせてすぐに出る時もありますが、しばらく時間がかかることが多いので、母をトイレに座らせてから、夜間使用済みのオムツの尿の計量をしたり、間欠導尿の準備をしたり、お湯で温めたタオルで母の背中やお腹を拭いたりしながら、自然に出始めるのを待ちます。どうしても出ない時には、前夜に便を柔らかくする液体薬を10滴~15滴飲ませて、ポータブルトイレに座らせて腹圧をかけるようにすると1日か2日後には苦しむことなく自然に排便がありました。他には腸内環境を整えるために、無糖のヨーグルトを食べさせたり、脱水症になって便が硬くならないように水分調節をするだけで、下剤や浣腸を使用すること無く世話ができていました。施設で母が使用していたポータブルトイレは高さ調節のできる背もたれ一体型のトイレでした。でも、病院で母に与えられたポータブルトイレは、トイレ自体が小さくて高さも低く、背もたれも一体型ではなく柵が置いてあるだけでした。手足に筋力があり、自分で立つことができる人ならこれで充分なのでしょうが、痩せて座位を保つことができない母には到底無理です。トイレに座らせると柵の中に背中が落ち込んでしまいました。そして跳ね上げたトイレの蓋で背中を擦り剥いてしまいます。これでは私一人では危なくて座らせることができません。しかたなくベッド上のオムツ交換になってしまったのですが、これでは今までトイレに座らせてからしていた下部洗浄もできないし、腹圧がかからなくなったので、便秘になってしまいます。(このままではまた膀胱炎になっちゃうし、腹筋も背筋も無くなってまた座れなくなってしまう・・・)と思いました。母も私の耳元で「トイレに座りたい・・・・」と力無く囁きました。(何とかしなくては・・・・)で・・・柵に持ってきていた分厚く丈夫な布のオムツをピンで留めて、背もたれを作ってみました。これなら背中が柵の中に落ち込むことはないし、背もたれの布の後ろに跳ね上げた蓋がくるようにすれば、背中を傷つけることもありません。でも、今まで施設のトイレだと私一人で抱えて座らせることができましたが、このトイレでは座らせた後に姿勢を整えるために体を動かすと、トイレも一緒に動いてしまうので、父と二人がかりで母を抱えてなんとか座らせることができました。母を座らせてしばらく待つと、大量の排便がありました。安心したような母の顔。母の顔を見て、父も私も喜びました。