北海道ツーリングのクライマックス…(6/17)
最終日に待っていたものは 国道229号線は、高く切り立つ断崖と広大な日本海にはさまれて北に伸びている。巨大な岩の山をトンネルで抜けると、また絶壁が目の前に迫る。そして再びトンネルに入る。その連続である。海辺には高い岩山が立っていて、景観の変化がとても激しい。 初日、天塩から稚内までサロベツ原野の中の直線道路を走った。その変化のない単調で広大な景色にもものすごく感動したが、この229号線はめまぐるしい景観の変化と適度なカーブの連続がライダーに適度な興奮と緊張感を与えてくれる。 途中で「日本一高い灯台」という案内板を見つけた。日本一とあらば行かずばなるまい。案内板の示す方向にハンドルを切り、細くて急傾斜の道を登っていく。道は途中からダートとなる。対向車が来るとどうしようと緊張しながら登っていった。3Kmほど登った所に日本一高い灯台が一人寂しく立っていた。「茂津多岬灯台」(海面から灯台最上部まで290m。誰もいないこの場所で、日本一の灯台を独り占め) 気温は段々上がっていく。休憩と給水のために立ち寄った道の駅で、ふと振り返ると雪を残した狩場岳が目に入ってきた。思わず、通りかかったおばさんに「きれいですね」と声をかけてしまった。「ふと振り返ったら」(民宿を出てから、ずっとずっとこの狩場岳に見送られていたんだ!) 午後1時岩内市に到着する。外にベンチを出したおしゃれなコーヒーショップがあり、メニューに、「アワビカレー1,300円を↓1,000円」とある。北海道に来てまだカレーは食べていなかった。迷わずアワビカレーと有機栽培コーヒーを注文する。カレーに入っている具材はちょっと見たら貝柱に見えたが食感は間違いなくアワビである。ビーフやポークよりヘルシーな感じでおいしかった。 岩内は交通の分岐点である。右に行けば国道5号線につながって小樽・札幌への近道となる。左の229号線を走り続ければ積丹半島を回るルートになる。当然回り道となる229号線を走り続ける。この回り道の先に今日の最大の目的地である神威岬と積丹岬があるのだ。 岩内を出て、泊(とまり)原発がある泊村を通過する。海に面した原子炉建屋は泊村側からは見えず、対岸の岩内側からよく見えた。泊原発は1,2号機が58万KW、3号機は91万KWの出力を有する北海道電力唯一の原発である。1993年に北海道南西沖地震では奥尻島で大きな津波被害が出た。今回の福島原発の事故と合わせて考えれば、当然地震や津波に対する対策は急務であろう。 午後3時、神威岬の駐車場に到着した。まずクルマの多さに驚く。これまで、道の駅ではクルマが2,3台くらいしか停まっていないことが多かった。入るのがためらわれて、すみませんトイレだけですと、小さくなって入っていた。それなのに、この神威岬には4,50台のクルマが停まっていたのだ。それだけ人を引きつける場所なんだなと、気合いが入る。 灯台のある場所までの20分くらいの道がとても険しかった。観光客のために整備してあるが、途中にはアルミ製の階段や橋を渡してある部分もある。橋の下は断崖で、もし落ちたら命も落とすだろう。普段なら人が近づけない場所なのだということがよくわかる。「神威岬」(険しい岩の背を登り下りして、岬の突端まで行く~一番遠い展望所から撮影) 岬の突端に立つと、どこまでも青く広い海と空に包まれた。その瞬間、言葉にならない感動に心が震えた。神威岬はその名のように、人の知恵や力の及ばない何か荘厳な雰囲気に満たされていたように感じた。 このあと積丹岬にも行ったが、見える風景はこれまで北海道で見た景色からすると平凡な断崖で、ちょっと拍子抜けした。「熊出没注意」という看板を見ながら、もうすっかりなじみになった国道229号線に戻る。 午後7時余市市と小樽市の境で日没を迎える。この日没が旅の終わりを告げている。もっと走りたい気持ちがあるが、終わりがないと次の始まりもない。「いったんこの旅にけじめをつけよう」と、自分に言い聞かせつつ走る。「落陽」(旅の終わりを告げるように日本海の彼方に陽が沈んでいく) 午後11時30分、フェリーは京都府の舞鶴港をめざして小樽港を出港した。 本日の走行距離270.7km。