遠くて遠いアフリカ…(12/14)
アフリカの国は何カ国? 難関私立校の大学生19名にアフリカの国の数についてアンケートしたら、正確に答えた者は1名、50ヶ国台と答えた者が3名だったという。多くの回答は20~30ヶ国だったという。正解は54ヶ国である。 (「アフリカ学入門」船田クラーセンさやか:明石書店 2010年より) 「アフリカ学入門」(アフリカについて多面的に考察していて、高校生、大学生、教員にすすめたい好著である) 上掲書の著者は、2006年と2009年に3つの大学の学生を対象に、アフリカのイメージについてアンケートしている。回答のなかで多かったのは次のような言葉だったという。 1位「貧困(貧しい)」、2位「紛争」、3位「自然」、4位「黒(人)い」、5位「暑い」、6位「未開発」、7位「砂漠(化)」、8位「動物」、9位「サバンナ」、10位「植民地支配」と続く。これらの言葉のほとんどがネガティブなイメージである。 なぜステレオタイプの負のイメージしか持たないのか。その理由として中学校や高校の授業でアフリカについて学ぶことが少ないからだという。上に掲げた「アフリカ学入門」には中高の教科書を調査した結果が報告されている。アフリカについて書かれている割合は、中学校の地理教科書(2005年度版)は6社平均で8%、高校の世界史教科書(2002年)では3社で1~4%だったという。 日本政府観光局(JINT)の発表によれば、今年は外国からの旅行者が過去最高を記録する勢いだという。ビザの緩和や円高によって特にタイ、マレーシア、インドネシアなど東南アジアからの観光客が増えている。今年11月の外国人旅行者は84万人で、累計で9,499,300人(昨年比+23.9%)に達している。政府が目標としてきた年間1,000万人の大台を初めて突破するのは間違いないようだ。 しかし、地域別に見ると大きな偏りがある。アジアからの旅行者が約8割を占め、続いてヨーロッパと北米がともに1割弱という状況である。アフリカからの旅行者数は月平均2,000人台で、年間でも30,000人に満たない。1,000万人のなかで、アフリカからの旅行者は0.3%しかいないのだ。一方、日本からアフリカへの旅行者も年間10万人ほどにとどまっている。 またメディアによる情報も極端に少ない。最近では、南アメリカの元大統領ネルソン・マンデラ氏の死去によって久しぶりにアフリカからのニュースが流れてきた。報道各社の支局や特派員もアフリカにはあまり配置されていない。NHKの場合、世界28都市に総局や支局をおいているが、アフリカではエジプトのカイロに支局があるのみである。 このように、学校で学ばないこと、人的交流が少ないこと、メディアに取り上げられないことなどが、アフリカについての無理解や無関心につながっているようだ。 アフリカは、国の数では54ヶ国と世界の4分の1を占め、人口では10億人と15%を占める。貧困や政情不安など課題は山積しているが、今後の経済成長が一番期待できる地域でもある。 「遠いけど近いアフリカ」にしていくことが、中学校の社会科教育でも求められている。