VLo6オーマイキィーの彼女
VLo6オーマイキィーの彼女白のBMWが時速80キロでベルリンからアウトバーンに入りポーランドに向かって一台、牧草の生えた、だだっ広い緑一色の中を走っていた。7月だけどそれほど暑くなく車の窓を開けると、心地よい風が腕からつたわり全身を包んだ。ベルリンはポーランドよりにあるので日本でいえば、大阪から名古屋ぐらいの3時間ぐらいで国境を越えることができる。高速自動車専用道路110号から入り途中から100号に切り替わり10、12号と走っているだけで道路の呼び名は変わっていく。つまり、道なみに走っていれば国境を越えて道路の呼び名A2号となりポーランドに着くというわけだ。だからこそ、多くの道路から、このルートを選んだのである。アウトバーンはドイツの高速自動車専用道路で、ヒトラーが第二次大戦に備え、初めて 建設した。隣り合う各国の高速道路と密接に接続されている。一応、速度制限はなく、無料であるが路面が日本の高速道路よりかなり悪いためそれほどスピードは出せない。出せたとしてもせいぜい110キロであろう。それ以上、スピードを出せば古いタイヤでは何時バーストしてもおかしくない。そして、ハンドルをとられ修正もままならず、路面からはみ出して大惨事にもなりかけない。現に、パンクして停まっている車を国境につくまでに2台ばかり観たのであった。この道を走り慣れている者は、平均速度が90から100キロぐらいで走っている。という事は、やはり、速度制限がないのに多くの車は100キロ前後で規則正しく走っていることから不慮の事故を警戒しているのだろうと無意識に感ずることができた。国境に向かう途中、フランスに飛び立つ飛行機の中では提携の危険と困難をはねのけ、必ず有利に契約してやる気に満ち溢れていた自分だったが、フランスに着き2,3日でブランド提携が全て契約できず。重苦しい気分であった。いまではどこに行っても行きつけない虚しさを感じ、フランス社会に自分が埋葬されるのではという不安を抱えた。ある中堅の会社から断られたときなどは、会社からでて歩道を歩いていると自分の足元から徐々に腐ってくる感じがした。やがて全身が腐りカラスの餌食になりそうな気がした。異国だから余計に感じる。しかし、こんな経験は若者であれば誰でも一時期には感ずることだが、自分の力はもて遊ぶことなくフルに発揮し燃焼したという充実感もあった。ここに立ち止ってはいけない、腐ってフランスの土になる。この地に一生いることはできないのだ。ここに立ち止ってはいけないという自分がいた。フランスの下着ブランドを見返してやるんだと自分に言い聞かした。それが、若者の特権である。つづく