Vol.2 無縁地蔵のボルテージ
Vol.2 無縁地蔵のボルテージ仏教は比較的新しい宗教である。人類の初期文明は飢餓に苦しんでいたのであるから、寿命は、非常に短かった。もちろん、医師もいない時代である。乳幼児の死亡率は、抵抗力も少なかったため、非常に高かったといえる。死産もあれば、生んですぐに死ぬ場合も多い。餓死、栄養失調、疫病、風土病、伝染病、回虫などの原因で死んでいく。子供や大人でも、栄養失調や免疫も少なく病気に罹(かか)りやすく、多くが死んでいったであろう。たとえ、健康であったとしても、食べ物の取りやいや、他の争い事で、死んでいく場合もある。生存率は低く、平均寿命は40歳ぐらいであろうと思う。このような時代の人々には、悲しみも少なく、憎しみもなく、喜びもなく、ただ、食を求めて、たんたんと生きていたに違いない。固定観念は、あるが、概念をもっていない者の方が多かったといえるのではないだろうか。概念をもち始めるのは、グループ化、集団化してから、概念をもっている者からの影響からといえる。ここから、戦争らしきものが生れ、破壊と再生を繰り返してきたのだ。戦争から呪術や宗教は固定観念をより強く、概念も芽生え、より強く持ち始める。私がインドで経験したことは、病気の子供に注射を拒否する女性である。たしか、ペニシリンであったと思う。どうして拒否するのか聞くと、宗教で直すと答え、明日にでも死ぬかもしれないのに子供には絶対に触らせないのである。詳しく女性に聞くと、バラモン教徒で、明日にでもお払いのようなことをしてもらうと答えた。結局、お払いをしてもらって後に、ぐったりと、子供が弱ったのを見て半狂乱になりどうにでもしてくれ状態になってから、ペニシリンを打ち子供は回復した。注射を打ったことで、バラモン教から非難されたが、元気になった子供を見て、後悔していなかったことに私の心も救われた。バラモン教からは、異教徒として扱われるようなったらしいが、「後悔していない。」と微笑んで私の目を見つめた。現代でも、ユニセフの説明を見ると「マラリアを発症した難民や、頭痛・腹痛などの身体の痛み、空腹による腹痛、感染症などの症状も報告されています。」とか、「上ナイル州マバン郡内のスーダン人難民キャンプでキャンプでは、5歳未満の子どもの25%以上が栄養失調に陥っていました。」とある。飢餓に苦しんでいるひとはいまだにいるのである。食糧が安定化したのは南半球の開発が進んでからである。先進諸国では生産計画をたて、予測もしながら食糧獲得をしているが、開発途上国はどうであろうか。日本で食糧生産計画をたて始めたのは、いつ頃だろうか。そして、高齢者が、自宅で餓死しているのは、なぜだろうか。現代人は、本当に概念をもつているのだろうか。このようなことを考えると、いつのまにか気が付かないうちに無縁地蔵のボルテージも赤くなって、あがるのである。(注)ユニセフとは( United Nations Children's Fund )国連児童基金。開発途上国の児童養護計画などに対する援助を行う、国連経済社会理事会の常設下部機構。