流子の機能を最大限に生かすために(1)
流子の機能を最大限に生かすために(1) 061228の課題から これまで私たちは、文の意味や構造、表面的な文法にばかり捉われて、文の流れなるものにはあまり注目してきませんでした。 それでいて、翻訳者をはじめ文章を書くことを仕事にする人の命運を決めるのは、この目に見えない文の流れであったわけです。 どちらも意味はよくとっているんだけど、こっちの方が「なぜか」読みやすい。 もちろん、評価する人が単に「自分にとってわかりやすい」というだけで判断しているのであれば、翻訳者にとっては災難ですが、判断する人にそれなりの感覚があるかぎりは、この「なぜか」で決まってしまいます。「なぜか」ですから、感覚的にしか把握できません。感覚的にしか把握できないから他人に伝えることができません。 従来、この感覚的にしか捉えることができなかったものを目に見えるようにしたのが、情報量理論の「流子」という概念です。 よく思考の順ということが言われます。どの言語もその言語を母語とする人の思考の順に単語が並んでいると考えられがちですが、この考え方は簡単に論駁することができます。 英語のように文の構造や語順がそれほど自由にならない言語では、だれがどのような順に思考しても、単語を並べる順序はその言語の形式から自由になることはできません。 逆に日本語のように動子(動詞)で終わる言語でも、何かことばを口にした時点で、どの動子で文をしめくくるかはあらかじめ考えています。 基本的には(文法的に)語順が自由にならない言語には冠詞があり、比較的語順が自由になる言語には冠詞がないという傾向があります。理由は簡単です。語順が自由にならないと、語順によって文の流れを作ることができないので、冠詞(基本的には定冠詞であるかそれ以外のものであるか)や指示代名詞によって流れを調節するしかないからです。その意味で英語では定冠詞や指示代名詞が流子に相当するものであると考えることができます。 日本語では、語順によってある程度文の流れを調節することができますが、もうひとつ重要なものがあります。「は」と「が」の存在です。「は」は主語を表すように思っている人がいますが、とんでもない誤解です。試しに、主語のあとの「は」を全部省いてみるとよくわかります。少なくとも意味の理解には何ら差支えがないことを確認してみてください。「は」の用法や、「が」の用法を文法的に説明しょうとすると、非常に細かい分類が必要になり煩雑になりますが、情報という観点、文の流れという観点からみると、「は」が「止まれ」、「が」が「進め」です。 この考え方で、日本語の「は」と「が」の区別はほぼ完全に説明することができます。←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。