再生の物語
「発禁小説」のつづきです。 翻訳書の日本語のひどさに美奈子の神経は病み始める。それに輪をかけるように、医薬翻訳で出会う人たちの日本語に対する無神経さが、美奈子を追い詰めていく。 安泊記者はため息をついた。 なるほど、日本国という国はこういうものを発禁処分にしなければ、もはや存続しえないほど追い詰められているのか。 美奈子はついに出版社に持ち込んで自分の思うような本を訳そうとするが、編集者から「日本語の問題なんてどうでもいいじゃないですか」と言われ、落ち込んでしまう。 神経を病み、自閉症の子をかかえながら、地獄を彷徨う。 ところが、この小説ではここから再生の物語が始まる。 自閉症の子が母親の姿を見て、逆に母親を救うべく立ち上がる。 母親を救おうとすることが同時に自らの自閉症を克服することにもつながっていくところが、この小説の真骨頂たるところで、これだけの壮絶な内容ながら、最後にちゃんと救いが用意されている。 安泊記者はため息をついた。 すごい。その一言に尽きる。 この小説を発禁にしなければならなかった国の事情とはいったい何なのか。 ←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。