両極分解
居酒屋「ホットケ」のつづきです。 マグマは必ず噴火する。 何とか英語をモノにしてのしあがろうとしている連中も、そういうことにうすうす気づきつつある。 だから、黒にとっては、二重の危惧がある。ひとつは、このまま英語を学習する環境が維持できるかどうか。もうひとつは、自分たちがやがて暴徒の餌食になる不安。 そこまで語っても、猿越の言うことはただ現状を分析しているだけで、猿越自身は白とも黒ともとられることはなかった。 ここに至って、英語の苦手な連中が両極分解を始めている。 ひとつは、英語は苦手だけれども賢いやつら。英語は苦手だけれども、仕事のできるやつら。日本人に英語なんかそもそも必要でないことをはっきり認識するに至っている。 インドやエチオピアの例を見るまでもなく、英語を身につけたから潤ったのではなく、裕福な家庭に育ったから英語を身につける機会に恵まれただけのことである。 英語を身につけなければ乗り遅れると必至になって英語を身につけようとする連中に巻き込まれて、苦痛以外の何物でもない勉強、しかもけっして報われることのない勉強をさせられる。 何か特別な能力のある者たちでさえ、英語というたかが外国語にすぎないものの学習に時間をとられたくないと思っている。当たり前だ。研究者にとって本当の勝負はあくまで研究であって英語ではない。 まして、それほど優れた能力を持ち合わせていない者が、この社会で生きていくためにするべきことは何か。少しでもいいから他人にはない技術を身につけることだ。それを、英語英語と騒がれたのでは、時間を奪われ、自信を奪われ、そのあまりの苦痛に肝心のものを身につける意欲さえそがれてしまう。 そうならないためには、いわゆる黒の連中をやっつけるしかない。英会話学校を封鎖し、英語さえできればいいと思っている連中を孤立させるのだ。 もうひとつは、それでもなお、英語を身につけ「勝ち組」に残ろうとする愚かな連中である。その者たちも、自分たちが英語を勉強することがやがて命がけになることを悟り始めている。 いわゆる黒と白との間で、内乱が起きる。←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。