人世のナゾ――文相学はむずかしい
さて、ようやく事始を終えた文相学ですが、これがまたむずかしい。 能登川高校校長の手紙には最後に「あなたの人世に幸多かれと、お祈りします」と書いてあります。 私は最初、真琴さんの入力ミスかと思っていましたが、原資料に当たって確認したところ、やはり人世になっていました。 これは校長の直筆であり(他人に書かせたのでないかぎり)、変換ミスが起こりえないものです。 真琴さんは人権侵犯ということばを使っていました。本来は人権は侵害されるものであって、侵犯とは言いません。ところが、ずっとブログを見ていくうちに、真琴さんにとってはやはり「侵害」よりもむしろ「侵犯」という気持ちが強いのではないかと思うようになりました。 では、校長はどうでしょう。 人世とは「人の世、世の中」のことですから、独裁者でもないかぎり、「あなたの」がつくなんてことはありえないわけです。 ふだんから個人の人生よりも、世の中の世間体の方を大事に思っているから、無意識のうちにそういうことばが出てしまうと考えるのは簡単ですが、それでは文相学とは言えません。 こんな肝心のところで、人世ということばを使ってしまう校長の心の中にあるものはいったい何なのか、トラドキスタンの文相学者は、呆然と立ち尽くすほかありませんでした。←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。