木鐸たれ
「新聞は社会の木鐸たれ」という言葉があります。木鐸は古代中国で法令を人々に伝える際に振った鈴のことで、『論語』では人々を教え導く人とされています。つまり、新聞は世論を喚起し社会を導く役目を担っているということです。新聞に限らず、マスメディアはこの姿勢を忘れないで欲しいものです。中央日報という新聞社があります。東日本大震災を「日本沈没」と報道し(後日反省文を掲載)、また「原爆は神の懲罰」と報道し(後に執筆者は「遺憾の意」を表明したが、中央日報は撤回・謝罪なし)た新聞社です。2月18日の同社のコラムに「4大古代文明のうちメソポタミア文明が一番最初におこったのもヒッタイトの鉄器製造技術の賜物だった」と云う記述がありました。これは韓国の常識なのでしょうか?高校で世界史を学んだ人は周知のことと思うのですがメソポタミア文明(今のイラクの辺り)の都市遺跡をウルクから数えるなら、紀元前4,000年頃シュメール人によってメソポタミア文明は興されました。青銅器、楔形文字、粘土がメソポタミア文明の特徴です。鉄器ではありません。その後紀元前2,300年頃セム系のアッカド人によるアッカド王国が興り、紀元前2,100年頃シュメール人が巻き返してウル第3王朝を立てる。しかしウル第3王朝はエラム人に滅ぼされその後アラム人が覇権を握りバビロン第1王朝が誕生します。ヒッタイト人は紀元前1,650年頃アナトリア(今のトルコの辺り)に現れ、このバビロン第1王朝を紀元前1,595年に滅ぼします。つまりヒッタイト人がメソポタミアの歴史に登場するのは、メソポタミア文明が興ってから2000年以上後でしかも破壊者としてです。この歴史をどう解釈すれば「メソポタミアはヒッタイトの賜物」となるのでしょう?社会の木鐸たるには正しい情報の提供は必須です。客観的に情報を伝え、そこから導かれる主張を述べる。この二つはきっちり分けないといけない。今回読んだこのコラムは、正しくない知識を主観的に伝え、あたかも執筆者の主張を史実であるかのように述べている印象を受けました。でもひょっとしたら歴史認識に厳しい韓国のことだから、高校程度の知識の私が知らない史実をご存知なのでしょうかねえ。