冬の旅行 8
12月28日(火) テネシー州リンチバーグ 朝、外に出ると、冷たく澄んだ空気と抜けるような青空が待っていた。深呼吸し、この気持ちの良い天気を全身で感じる。 大好きな一瞬だ。今日は、テネシーウィスキーのジャックダニエル蒸留所へ向かう。蒸留所のあるところは水も空気も綺麗だと聞いていたが、 蒸留所に着くまでの20分ほどの道のりも、うっすらと雪をかぶりこんなに気持ちがいい。 - Jack Daniel Distillery - 到着して車を止めると、そこは、薄く雪化粧した敷地内を小川が流れ、その小川から湯気が立ち上る、木々と静寂に包まれた別世界だった。 見学ツアーを申し込み、待っている間、受付の建物の中の展示物を見て回る。出迎えてくれたのは、ジャック・ダニエルの像。あとで回るツアーで、ガイドのおじさんが教えてくれたのだが、このジャックさん、等身大なのだが、足がかなり小さかったそうで、足を実寸で作るとバランスがとれず倒れてしまうので、足だけは実際より大きく作られているのだそう。そして製造工程の展示説明や、ジャックダニエルのラインナップ、ここを訪れた人たちのサイン帳等がある。サイン帳を見ると、全米各地はもとより、外国からも訪れている人たちがいるのがわかる。酒好きなんやな~とニヤけてしまう。そしてここに並べられているジャックダニエルの中に、海外には出ない‘グリーンラベル’というのがある。アメリカ国内でも限られた州でしか売られていないという。お馴染みのブラックラベルと全く同じ工程で作られているのだが、最後、樽を寝かせるバレルハウスでの寝かせる場所が違うため、味がブラックラベルに比べ軽くなるのだそうだ。これもあとで回るツアーで、実際に見学しながらガイドのおじさんに聞いたのだが、バレルハウスの中は高い吹き抜けになっていて、樽がマンションのように並べられているのだが、下の方に寝かされる樽がグリーンラベルになる、って言ってたような…。(あれからほぼ一年経っているので、もう忘れてしまった。ちなみに今日は2011年11月29日)ツアーガイドをしてくれたおじさんは、もちろんここの従業員だが、彼はこのグリーンラベルが一番好きなのだそうだ。炭の風味が薄くて良い、とかなんとか。 そうこうしているうちに、ツアーの時間が来た。外に出て、バスに乗り込む。バスに乗るのは最初だけで、あとは歩いて敷地内を回る。到着したのはここ、ろ過で使う炭を作るところ。炭一つから「自分たちの手で作る」ことにこだわる、と言っていた。綺麗に積み上げられたシュガーメープルの木をこんな風に焼き、出来上がったのが、下のまだ湯気の上がる炭の山。ここで、ツアーに参加したみんなの写真をガイドのおじさんが撮ってくれるのだが、後日ジャックダニエルのホームページに載せられ、ただでダウンロード出来るようになっている。大勢で写っているのがその写真。 そして次に行ったのがここ、ジャックダニエルの水。この湧き水で作られる。 ↓その前に立つジャックさん。 ここからは、写真撮影禁止ということで、残念ながら写真なし。次に寄ったジャックのオフィスでは、ジャックの生涯について色々な話を聞く。彼は敗血症で亡くなったのだが、その原因となったのがここに置いてあった金庫。短気な彼は、金庫がなかなか開かないことにイラついて、金庫を蹴り、その時の傷が敗血症につながったという。 短気は損気って言うけれど…恐ろしや~。 ジャックダニエル=足が小さくて短気次の何棟かの建物では、とうもろこしやライ麦等で作られるビール(これがウィスキーになる)、イースト菌で発酵してブクブク泡立つ大釜、炭でろ過しているところ、などを見学。もう、部屋中に充満する香だけで酔いそうだ。こうして出来上がった酒の素を 一つ一つ職人が手作りした、ホワイトオークの樽に入れ、バレルハウスで寝かせて熟成させる。一つの樽で、ボトル約240本分あるそうだ。そしてここでは、樽を丸ごと買うことも出来る。出荷OKとなった樽は、一つ一つ職人が試飲するのだが、その際特に、色・味・風味の良い樽は、樽ごと買う客のために取って置くのだそうだ。もちろん、その時期に合わせてここに来て、職人と一緒にどの樽にするか、自分で決めることも出来る。お値段一樽$9,000~$12,000、ボトルに計算すると、一本$35~$40。値段に幅があるのは、樽によって出来上がる量が違うことと、住んでる場所の税金が違うから、ということだ。どの樽にするかが決まったら、中のウィスキーは全て750mlのデカンタに手作業で詰められ、デカンタには、樽番号、バレルハウスの棚の番号、ボトリングされた日付が入るそうだ。素敵。そしてもちろん、樽自体も、蓋がカスタマイズされて自分の物になる。なんて素敵。酒が飲めたら絶対買ってる。きっとこんな性格だから、神様が一滴も飲めないようにしたんだろう。合掌。全て見終わり、バーカウンターのある建物に来た。ここで試飲できる!?とちょっとワクワクしたが(下戸なのに)、水のサービスだった。な~んだ。ガイドさんも残念でした~と笑いながら付け加えた。「ここはdry countyなんだよ。」へ?dry countyって、酒を売れない禁酒郡のこと?ここで作ってますけど?キョトンとする私たちに、「そうそう。だから酒屋もないしね。唯一この部屋の角の小さなショップだけが、この辺りで酒を売ってるところなんだよ。」特区かいな、とぼやきながら、そのショップに入ってみた。そこでは、確かにジャックダニエルを売っていたが、国内消費オンリー、しかも国内でも売ってる州と売ってない州があるという、ガイドのおじさんお勧めのグリーンラベルはなかった。これが一番お土産にいいのに…、と酒好きの姉のダンナ様を思い浮かべる。テキサスにだってあるかどうか分からない。これはもう、一番近い酒屋を見つけて買って行くしかない!次の目的地に行く途中、酒屋に寄るぞ!と、と、ここを出て、まずこの小さな町の土産屋の並ぶところへ行き、お酒以外のお土産を物色。 ↓ ウィスキー作りに使われた炭を、BBQ用のパックにして売ってたり、ジャックダニエルの入ったBBQソースやら調味料色々。マグカップ、Tシャツ、樽のテーブル、ロゴの入ったバイクなどなど、それはもう、ありとあらゆる物が売られていた。その中の一つ、樽で作られたチェスで遊ぶ息子たち。(右下)熟成に使う樽は、一度しか使わない。一度きりの出番の樽は、こうして色々なものに形を変え、マニアの元へ行く。そうそう、タバスコ工場にも行くんだった。タバスコ工場では、この使い終わった樽が、タバスコの熟成用に使われる。う~ん、なんだかここで思いがけず今回の旅がつながった。ジャックダニエルの樽で熟成するタバスコ。素敵。 そして、美味しいと聞いたレストランで昼食をとり、酒屋を探しながら、次の目的地メンフィスへ向かう。ここの料理は、‘うちの畑で採れた’野菜を使った料理。私はこの、‘うちの畑で採れた’シリーズにめっぽう弱い。ここの郷土料理も多く、どれも美味しそう。店の人が、多過ぎると思うよ、と止めるほど注文した。確かに多かったが、どれもこれも味見してみたかったし、残ったものは持ち帰れるので、移動中の車の中で食べれば良い、と構わず注文を通した。 「Cattyawmpus Restaurant」メンフィスは、ここから車で4時間半。どう考えても、到着は夜になる。道路が凍結しないことを祈って、早く酒屋を探せ!と携帯を駆使しながら、ようやく小さな酒屋を見つける。そして発見、グリーンラベル!テキサスにないかもしれない、と何本も買ったが、帰って来て酒屋を見に行くと普通にあった。