鶏
森林太郎という人がいる。いた、と言うべきか。最初「もりばやし・たろう」さんだと思ったら、「もり・りんたろう」さんであった。だいたいオレのセンスはこんなもんである。で、そのりんたろうさんは明治の文豪と言われた森鴎外の本名である。夏目漱石の本はいくつか読んだことがあるが、森鴎外の作品には全く触れたことがなかった。オレは社会人になってからだんだん歴史に興味を持ち始めた。日本史ではやはり動乱の幕末、明治時代は面白い。司馬遼太郎の本は特に好きだ。森鴎外は明治時代の陸軍に所属し、軍医のトップまで登り詰めたという。今の時代でどういう立場なのかわからないが、めちゃくちゃエリートであったことは間違いない。そんな人がなぜ文学を?と思うと作者に対する興味がわいた。「舞姫」という短編小説がある。作者のドイツ留学中の話がモデルだといわれている。ドイツのダンサーをしている少女との悲恋を描いたものだが、かなり短い話、しかし文語体なので読みにくいが、何か迫ってくるものがある。「阿部一族」という話がある。人が次々と切腹していく恐ろしい話だが、この話についてはまた別に書こうかと思う。その本はいわゆる短編集なのだが、その中の一つに「鶏」という話がある。福岡で軍医として独り身で赴任した主人公のその借家での使用人との出来事だが、随所に作者のユーモアが感じられる。いい話というか、人間のずるさというものについて、まあそれは本能なんだろうけど、ニヤリとさせられる、あるいは考えさせる話である。いつの時代も同じなんだなあ。この森鴎外について、関連というか、松本清張が書いた「ある「小倉日記」伝」(この小倉日記とは、森鴎外が小倉時代に書いた日記のことである)という話を含んだ松本清張の、やはり短編集があり、今日買って読んでみた。自分が関心があるせいなのか、あっという間に読んでしまった。この関連、しばらくはまるかもしれない。それもまた、楽しからずや。-------------何の話かと思った。2020-6-11