初めての通訳体験
先日、某大手語学出版社から、春の学習キャンペーンの案内が届いた。以前、そこでTOEICの講座を受講したことがあり、それから定期的に案内が来る。見てみると、新講座として通訳トレーニング入門があった。英会話は、ネイティブと話すのになんら支障は無い。しかし、それを日本語にして誰かに伝えるというのは、ちょっと苦手だった。数年前、実務翻訳を勉強していたときも、和訳は英訳以上に苦手で、日本語の難しさを知った。実務翻訳のお話は、また後日。去年の夏、初めて本格的な通訳をする機会があった。ある日、アメリカ人の友だち、ダニエル(女性)からメールがきた。彼女とは空手仲間で、とてもいい友だちだった。日本を去った後は、ロンドン大学の大学院で文化人類学を学び、日本文化の研究をしていた。彼女の興味の対象は着物と芸者。修士論文を仕上げるために、京都でフィールドワークしたいので、通訳を手伝ってほしいとの依頼だった。簡単な通訳なら何回かしたこともあるが、本格的なのは初めてだ、それも論文用。自信はなかったが、彼女が私なら間違いがないと信じてくれていたので、ボランティア同然だったが行くことにした。5日間の滞在中、ほとんど毎日祇園の八坂神社に張り込み、通りすがる人をつかまえてはインタビューした。事前にインタビューシートはメールで受け取っていたので、質問する分には困らなかったが、協力者の日本語を英訳し、ダニエルはカセットに録りながらノートにメモしていく。また、祇園の着物店、和風小物を取り扱っているお店を歩き回り、アポなし突撃取材(気分はマイケル・ムーア?)。でも、京都の人って優しいですね、快くインタビューに協力してくれた。これらの場所では、ダニエルからのアドリブの質問も多く、和訳、英訳の両方をこなしていかなければならなかった。ダニエルは、私の仕事は完璧だったと言ってくれたが、自分ではまだまだだと思った。言い回しは単純だし、ボキャブラリーも貧困だ。翻訳の勉強以来、独学の壁にぶち当たったという感じだった。もっと英語を勉強しようと思ったにもかかわらず、やっぱり私は怠け者、変わらない生活を送っている。それでも数ヵ月後、彼女からの製本された論文を受け取ったときは感激した。'Speical thanks go to my friend and translator, Chikako Kato, for her impeccable traslation and constant encouragement. 'この一文を読んで、ああ、やってよかったなと思った。通訳トレーニング入門に興味を持ったのは、こういう経験があったし、チャンスがあればボランティアでも通訳をしてみたいと思ったからだ。通訳ガイドにも興味があるけど、まずは基本から学んでみたい。問題は受講料。春のキャンペーン中とはいえども、ちょっぴり痛い金額である。もう少し考えよう。