ダーリンと呼ばれた
ダーリンなんて言葉、女性が好きな男性に使うものだと30年近く信じていた。「奥様は魔女」(アメリカの古いバージョン、日本のドラマは見たことない)でもサマンサは夫のことをこう呼んでいたし。映画の中で男性が女性に使っていたのかもしれないけど、字幕を読んじゃっていたので全く気にもしなかった。他の方のブログなんかを拝見させていただいても、パートナーを「ダーリン」と呼ぶのは圧倒的に女性だ。ニュージーランドでは日本食レストランで職を得たが、ウェイトレス経験のない私は1ヶ月ほどでクビになった。人を雇いすぎだったし、そこのレストラン。何もすることのなくなった私は老人ホームでボランティアでもやってみることにした。私はそこに週2回通い、おじいちゃんやおばあちゃんと話したり、散歩したり、いっしょに工作したり、壁に飾る貼り絵なんかを作ったりと特にたいしたことはしていなかったが、毎週そこへ行くのはとても楽しみだった。お年寄りの英語は時々難解で、何を話しているかどうか不明な時もあったけど、ただにっこり笑ってうなずくだけで喜んでくれた。入居者は99%が白人で、アジアの小さな女の子が遊びに来てくれていると思われていたみたいだ。一応、29歳だった。次第に入居者の名前も覚え、仲良くなった人たちもいたが、私の名前だけは覚えるのは難しかったようだ。毎週このホームへ訪問していたトンガ人のシスター・ロザンナなんて、私のことをずっと「シカゴ」と呼んでいた。町じゃないんだから、私は。入居者の中にアリソンというおしゃれで小粋なおばあちゃんがいた。いつもきちんとお化粧をしていて、アクセサリーもつけていた。元はアーティストだったらしい。ある日、私がいつもどおりにホームへ行くと、居間にいたアリソンが言った。「Good afternoon, Darling. How are you?」ダーリン?私に話しかけてるんだよな。でも、私男じゃないし・・・と思いながら挨拶を返した。それからアリソンは私のことをダーリンと呼び続けたのである・・・。この小さな疑問をランゲッジ・エクスチェンジをしていた友だちに聞いてみた。彼は、ダーリンは必ずしも女性が男性に使うわけではないし、男性が女性に使うこともある、また、愛しい人やかわいい人(子どもや友人同士)でも使うことがあると教えてくれた。それを聞くと、私はアリソンにダーリンと呼ばれたことがなんだか嬉しくなった。私のことを好いていてくれるんだと思った。その後オーペア(住み込みのベビーシッター)をやったが、ホスト・マザーも娘のことをいつもダーリンと呼んでいた。イギリス人と結婚した友だちも、息子たちのことをダーリンと呼んでいる。友だちのHaも私のことをよくダーリンと呼んでいる。だから、彼女は私のことがとても好きなんだなと思う。私はまだ誰のことも、直接本人に向かってダーリンと呼んだことがない。日本だからまずそんな習慣もない。それに、使うのはなんだか照れくさい。本当に大事な人ができたら(大事だと思ったら)、その時に使うんだろうな。日本じゃありえないけどね。